あの時の気持ち②
◯ランスロット
ランスロットは、体が冷えていくのを感じた。
何を言っている?
グウィネヴィア。
「かつて私は、こにいるランスロットと今は亡きガウェインと共にアーサー王子の逃亡を手助けしました。そこで捕らえられた時に二度と陛下には逆らわないと約束を致しました。ですが、一度お慈悲を掛けて頂いたにも関わらず、私は、陛下を裏切りました。一度までならず、二度までも」
グウィネヴィアは、ひざまずいた。
「今、ここで私を殺してください。その代わり、後ろの罪人はお許し下さい」
ウーサー王はしばらく何も言葉を発さなかったが、突然、大きな笑い声を上げた。
ランスロットの右腕は、王の笑い声を聞けば聞くほど、震えた。
「いいだろう。グウィネヴィア、貴様の願い通りにしてやろう」
あの時と同じだ。
選定の剣を見つけたアーサーとガウェインを追い、剣を引き抜いた後の台座にひとり残ったガウェインをウーサー王が殺せと命じたあの時、同じように大きな笑い声を発していた。
「あの時と同じだ。ランスロット」
ランスロットは、はっと我に返りウーサー王を見つめた。
ウーサー王の顔は満面の笑みだった。
「また、友を殺させてやろう」
友を殺させてやる?
「旧王族のましてや前王の娘は尊重しなければいけず、例え、私に逆らい、罪を犯したとしても殺すことはできなかったのだ。しかし殺して欲しいと懇願しているというならば話は別だ」
ウーサー王はまた笑いだした。
「これで何かと王政に文句を言う旧王族も少しはおとなしくなるだろう。貴様も、このような出来損ないの友人を殺せる機会をずっと待っていたのだろう?あの馬鹿で愚かな友を殺した時から」
ランスロットは、その言葉に疑問を感じた。
私がずっと待っていた?
「ウーサー王」
ランスロットは剣を持つ手に力を込めた。
「あなたは勘違いをしている」
ウーサー王の顔から笑みが消えた。
「貴様、誰に口を」
「私は」
ランスロットがウーサー王の言葉を遮った。
「私は望んで友を殺したことなど一度もない。そんなことを望んだこともない」
ランスロットは、ひざまずくグウィネヴィアの前に立ち、持っていた剣をウーサー王に突きつけた。
「私は、あなたを王だと思ったことも一度もない」
ランスロットの中に、ガウェインとの最期の会話が蘇った。