トリスタンの頼み
◯トリスタン
「太陽が真上に昇る頃」
そう言ってトリスタンは走りながら空を見上げた。
トリスタンはアロアとボーマンが口論している間にこっそりと別の路地裏へと逃げ込んでいた。
「ちょっと遅刻だ」
トリスタンの目にイグレーヌの姿が映った。
「イグレーヌ!」
駆けてくるトリスタンを見つけるとイグレーヌは笑みを作った。
「トリスタン、もう来ないかと思ったわよ」
トリスタンは膝に手をつき、顔を俯け、肩を上下させた。
「少し遅れたからってそんなに急がなくても」
「イグレーヌ」
トリスタンは顔を上げてイグレーヌの顔を見つめた。
「俺たちを助けてくれ」
イグレーヌの顔から笑みが消えた。
「何かあったの?」
「友達が国王軍や騎士団に追われてるんだ」
「国王軍、騎士団?」
「ボーマンも今そいつと一緒にいる」
「どうして?国王軍はともかく騎士団にまで追われているなんて」
「わけはあとで話す。頼むよ。騎士団の団長と知り合いのあんたなら、なんとかできるんじゃないかと思ってな」
トリスタンが頭を下げた。
「こんなこと頼める立場じゃないってわかってる。でも、俺たちを助けてくれ。あのままじゃみんな殺されちまう」
トリスタンの声は震えていた。
「・・・して」
「え?」
トリスタンが顔を上げるとイグレーヌが微笑んでいた。
「今すぐ案内して。トリスタン」