わがまま王子は信じない
「お前が私を看病したことはわかっている。そうではなく国王軍に囲まれた時、助けてくれた」
「だからそれが私なんだって」
アロアは少年の言葉を遮った。
「は?」
「私が、あなたを国王軍の連中から助けて、ここまで運んで看病した。以上」
少年はまた目を瞬いた。
「いや・・・不可能だ・・・!女のお前が数人の国王軍を倒すなんて。そして1人でここまで運んでくるなんて、絶対不可能だ!お前のような奴ができるのは看病くらいだろ!」
「と言われてもね。本当のことだから仕方ないわ」
「う、嘘をつくな!私を騙しているのだな。すべて自分の手柄にしようとしているのか!なんて卑劣な。これだから田舎者は嫌なのだ。いやらしい!」
「まあ、落ち着きなよ。今お茶入れるしさ、ちょっとゆっくり話しましょう?」
アロアは少年の暴言に全く動じることもなく部屋の奥に行き、ポットに水を入れ始めた。
「それよりさ、あなたいい加減名前・・・」
ふと少年の方を見ると、少年が何かぶつぶつ言いながら荷物を抱えて部屋を出て行こうとしていた。
「あ、ちょっと!」
追いかけようとしたが、アロアの肘が洗いたての食器に当たり彼女の行く先を粉々になった食器が塞いだ。
アロアが足元を見つめている間に扉が大きな音で閉まる音がした。