ボーマンに確信はない②
「な、なんだよボーマン」
「くだらないこと聞いてないで行くぞ」
「くだらないことって何だよ。重要なことだろ?アーサーがいなきゃ反乱も何も」
「誰もわかんねえよ。王子が戻ってくるなんて」
「でも、アロアは」
「アロアはそう確信してる。俺はわかんねえ。お前もわかんねえ。それだけ」
「はあ?」
「とにかくまずは今できることをするだけだ。先のことなんて考えても無駄だ。これからもしかしたら全く思ってもなかったことが起きるかもしれねえんだからな」
俺が、王子に絡んで、アロアに殴られて、王国の秘密を知って、ガキどもを助けて、反乱を起こそうとして・・・なんて想像すらしなかったことがほんの2,3ヶ月の間に起きたんだからな。
「俺たちはさ、流されときゃいいんだよ。何も考えずに」
トリスタンはきょとんとした顔でボーマンを見つめていた。
流されて流されて今、俺はここにいる。
ボーマンの脳裏に胸座をつかまれたアーサーの顔と声がよぎった。
あいつが言っていただろう?
自分で決めたことは責任を持つと。
たとえ、それが自分の望んでいなかった結果になっても。
ああ、その通りだよ。
「だからこそ、ちゃんと責任を持って生きろよ。トリスタン」
トリスタンはまたもや訳が分からないという顔をして口をぽかんと開けていた。
「よし、じゃあ行く」
その時、トリスタンの後ろに見える王都の大通りを風のように走り抜けた影がボーマンの目に入った。
ボーマンは、その姿を捉えた瞬間、大通りに向かって走り出していた。