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ボーマンに確信はない
◯ボーマン
「おい、トリスタン!何やってんだ?」
ボーマンのはるか後ろでトリスタンがぶらぶらと歩いていた。
「なあ、ボーマン、昼飯食べてからイグレーヌのとこ行かねえ?」
ボーマンは大きなため息をついた。
「あのなあ、トリスタン。上見てみろ」
トリスタンは上を見上げた。
「太陽が真上にくる頃にイグレーヌと会う約束だろ?」
「まだいけるよ」
「駄目だ。行くぞ」
ボーマンは迷路のような王都の路地裏を進んだ。
ボーマンの後ろにはぶつぶつと文句を言いながらも、トリスタンが付いてきていた。
「だってよ、今日で王都とおさらばだぜ」
「いいじゃねえか。王子が王になればいつだって来れる」
ボーマンの後ろで足音が止まった。
ボーマンが振り返ると、トリスタンが真面目な顔で見つめていた。
「本当にアーサーは戻ってくるのか?」
王子は必ず戻ってくる・・・なんてアロアみたいに俺は即答できない。
あの王子は、逃げた。
逃げ出すことは俺にもわかった。
だからこそ、あいつが戻ってくるとは俺は到底思えない。
ボーマンは、にっと笑ってトリスタンを見つめた。