アロアの逃走
「これがって言い方はひどいわ」
「罪人が、黙れ!」
「まあ、よいではないか」
国王軍の男たちはびくっとして背筋を伸ばした。
アロアは玉座を見つめた。
「この者はここで死ぬ定めなのだから、吠えられるうちに吠えさせておけばいい」
あ、そうなの?
「私、ここで殺されるの?」
玉座から大きな笑い声が響いた。
「はははははは!そうだ!貴様はここで死ぬのだ。選定の剣を盗んだ盗人を手助けしたのだからな」
「ふうん、そんなに悪いことかしら?アーサーを手助けしたことって」
周りに立っていた貴族たちがざわついた。
アロアを囲んでいた国王軍の男たちも驚いてアロアを見つめていた。
「あれ?知らなかったの?」
よく見ると、驚きを見せていない貴族もいた。
一部の貴族は知っているってところかしら。
「知らない人が多いようね。選定の剣の秘密も」
「貴様、黙れ!」
玉座から大きく低い声が響いた。
「ランスロット」
「はっ!」
ランスロットが一歩前に出た。
「殺せ。今すぐに殺せ」
ランスロットはただ真っ直ぐに玉座を見つめていた。
ランスロットの手が震えたのをアロアは見逃さなかった。
「全然違う」
アロアがぼそっとつぶやいた。
「黙れ!」
アロアを囲む4人の国王軍にアロアは剣を向けられた。
「ウーサー王、アーサーが怒ったときはもっとすごかったわよ?まるで、一国の王様みたいで、恐ろしかったわ」
「貴様!ランスロット何をしている?早く、早く殺せ!」
ランスロットの金色の瞳がアロアを見つめた。
アロアはランスロットに微笑んだ。
「ごめん。ランスロット。私は、ガウェインとは違う」
アロアはそう言うと、高く飛び上がった。
アロアの蹴りが一瞬で周りを囲んでいた国王軍の男たちに入った。
男たちはうめき声を上げる暇すらなく倒れていった。
それを見て、貴族の大群は叫び声を上げ、騒ぎ始めた。
そんなパニックに陥った中で、金色の瞳を真っ直ぐアロアに向けるランスロットの横をアロアは風のように通り過ぎた。
「何をしている!?ランスロット、早く捕まえろ!」
アロアの背からそんな叫び声が聞こえたが、アロアは玉座の間を飛び出した。