恩人の正体
「これが?」
「これは、訳あって国王軍に狙われている。これを守るために私は用心棒を雇いたかった。だが、どの店でも私に用心棒を雇わせてはくれなかった。金ならあるというのに」
「まあ、素性のわからない子供に用心棒を雇わせたくはないわよね」
「大金をはたくと申し出たのに?」
「大金をはたく子供なんて尚更怪しいわよ」
アロアは少年の荷物を見つめた。
縦に細長いその荷物はまるで槍か剣でも中に入っているようだった。
「ねえ、これ中身は何が入っているの?」
アロアが少年の荷物に手を伸ばそうとした。
「触るな!」
少年が叫んだ。
「これのために用心棒を雇いたいのに中身も見せてくれないの?」
「中身は誰にも教えない」
「そりゃますます怪しくて誰も雇えないわけね」
少年はむすっとしながらも話を続けた。
「だから、貴様に呼んで欲しいのだ」
「呼ぶって何を?」
「あの時・・・数人の国王軍に囲まれた時、私を助けてくれた奴を用心棒に雇いたい。そいつを、ここに呼べ」
アロアはきょとんとした顔で少年を見つめた。
「なんだ?貴様の知り合いなのだろう?」
「えっと、あの時あなたを助けた人を呼べと言っているのよね?」
少年は少しいらついたようにちっと舌打ちをした。
「さっきからそう言っている」
「あーそうよね。じゃあここにいるわ」
少年は、きょとんとした顔で目を瞬いた。
「だから、私なのよ。あなたを助けたのは」