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ALOISE(アロア)  作者: 十八谷 瑠南
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アロアの故郷④

「違う」

アーサーはそうつぶやいたと同時に金色の瞳から涙がこぼれた。

「違う・・います。きさ・・・おじさんは、何も悪くない。私・・・僕は、ただ僕のしたかったように生きた。アロアを愛していた。だから、どんなにひどい目に合おうが、僕がそうしたかったからそうしただけです。おじさんもそうでしょう?自分のしたいように生きた。ただそれだけじゃないですか。おじさん、僕はあなたを恨んだことなど一度もない。僕は、何も悔いてなどいない。だから、もう自分を責めるのはやめてくれ。お願いだから。もう、前を向いて自分のために生きてくれ」

アーサーは男の手を力強く握った。

「自分のために生きることは何一つ間違ってなどいない。間違っているのは、自分のために生きることのできないこの国だ!」

男の青い瞳から涙がこぼれてアーサーの手にこぼれ落ちていった。

アーサーはもう片方の手でこぼれ落ちた涙を包みこんだ。

アーサーは、剣を引き抜いた時、ガウェインに言った言葉を思い出した。


この国はもう駄目だ。

こうなってしまったらもう手遅れじゃないか?

私が王になったところで国民たちは変われない。

変わることなんてきっとできない。


そうじゃない。そうじゃないんだ!

男のやせ細った手を握り締めアーサーはやっと知ったのだ。

変わらなければいけないのは、この国そのものだ!


アーサー、あなたは逃げている。

かつての私のように。

全て自分やマーリンのせいにして、大事なことから逃げている。自分で決めたことに責任は伴うものよ。


今ならアロアの言葉の意味が分かる。

あの剣を引き抜いたとき、私は王になることを決めていた。

だが、私は逃げた。

無能で王の素質のない自分のせいにして偽物の王をつくりあげたマーリンのせいにして、王になることからずっと逃げていた。

でも、この手は望んでいる。

私に逃げるなと。

自分を責めるなと。

マーリンを責めるなと。

前に進めと。

国を変えろと!

アーサーは、男の手をしっかりと握り締める。

「私は、もう逃げない。絶対に」

胸の痛みはもう消えていたが、アーサーは気がつくことも、そして今後、あの痛みを思い出すことも二度となかった。


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