ボーマンの焦り
◯ボーマン
「遅いな。あの貴族の女の子」
ボーマンが店の窓から外を見ながら、つぶやいた。
「やっぱ俺ら騙されてじゃねえの?」
そう言いながら、トリスタンは食べることを止めない。
そんなトリスタンを見ながら、ボーマンはため息をついた。
「俺は、また皿洗いとかするの嫌だからな」
そう言ってボーマンが眺めた窓の向こうに少女が見えた。
やっと戻ってきたのか・・・・ん?)
ボーマンは全身に鳥肌が立つのを感じた。
窓の向こうにいる少女が全身黒い服の背の高い男となにか話をしていた。
あいつは・・・。
ボーマンは自分の心臓がばくばくと音を立てているのがわかった。
「トリスタン」
「ん?」
「あの女の子、ヤバイ奴と一緒にいる」
「え?」
トリスタンは持っていた皿を置き、ボーマンの横に駆け寄った。
「誰だ?」
「俺が、国王軍にいた時、一度だけ騎士団を見たことがあるんだがな、その中にいた団長だよ」
「お、おい、嘘だろ・・・。このままこっちにきたら俺たち」
「とりあえず、逃げる準備を・・・」
その時、ボーマンの目に男と別れる少女が映った。
「た、助かった」
そう言ってトリスタンは力が抜けたようにその場に座り込んだ。
まだ心臓はばくばく音を立てていたがボーマンはほっと胸をなで下ろした。
「あら?何やってるのあなたたち」
席に戻ってきた少女が窓の側でぐったりしているふたりを見て、不思議そうな顔をしていた。
「い、いや、なんでもねえよ」
そう言ったボーマンの顔は引きつっていた。