アロアの確信
「私に話とは?」
アロアの青い瞳がじっとランスロットを捉える。
「アーサーを王にするために王都で反乱を起こして欲しい」
ランスロットは表情を変えることなく、アロアを見つめていた。
「やっぱり。もともとそのつもりだったのね?だったら」
「アーサーはどこだ?」
ランスロットがアロアの言葉を遮った。
「アーサーは逃げたのだろう?私が言った通りになった。あいつは、王になる気など毛頭ない。王になる決意なんてしていない。今回の逃走だってただの仇討ちだ。筋違いのな」
アロアがきょとんとした顔でこちらを見ていることにランスロットは気が付いた。
「な、なんだその顔は」
「いや、アーサーのことすごく理解しているなあと思って。だからこそ、あなたもわかっているんじゃないの?アーサーは変わってきているって」
「シスター アロア、お前は何が言いたい?」
「アーサーは王の素質を取り戻しつつあるってこと」
ランスロットは驚いて目を見開いた。
「なぜ、アーサーに王の素質が失われていることを知っている?」
アロアは吹き出した。
「だって、あんなに性格がひん曲がった人が王の素質をもっている訳がないじゃない」
ランスロットがアロアを睨んだ。
「本当のことを言え」
アロアの顔から笑みが消えた。
「本当は、アーサーが選定の剣を使った日からずっと考えていたの。なんで、選ばれた王なのに剣が使えないのか。でも、ずっとアーサーを見ていて気づいた。アーサーは、本当は傲慢で我儘な人じゃない、優しい人だって。あの言葉使いも彼には合わない。まるで誰かに言わされているような・・・彼に元々あった人格や素質が奪われているんじゃないかって思っただけ」
ランスロットは黙ってアロアの話を聞いていた。
「とにかく、アーサーは、今はいないけど必ず戻ってくる」
「いつだ?いつ戻ってくる?」
「もうすぐ」
アロアがまっすぐランスロットを見つめる。
「なぜそう思う?」
「私にはわかる」
「なぜ?」
「アーサーが死んだ親友に似ているから」
ランスロットは目を瞬いて、吹き出した。
「なんだその理由は?死んだ親友に似ている?それだけで、アーサーをわかりきっているとでもいうのか?」
「そうよ」
「今まで、アーサーのために戦ってきたのも、まさか友に似ているという理由だけでか
?」
「私にとっては十分すぎるくらいの理由よ」
アロアの真剣な眼差しを受けて、ランスロットは笑うのを止めた。
「死んだ親友は、ずっと小さい頃から知っている幼馴染だったの。だから、なんでもわかった。彼が何を考えているのか。何を望んでいるのか。だから」
「だから、アーサーもわかるというのか?馬鹿馬鹿しい。お前の死んだ友とアーサーは似ているかもしれないがまったくの別人だぞ?」
「ええ。わかってる。生まれも育ちも全くちがう。でも、似ているの。顔だけじゃない。仕草も。癖も。全て。だからわかる。アーサーと別れた時、アーサーは必ず戻ってくるって」
アロアの青い瞳にランスロットは少し気後れした。
彼女の瞳は有無を言わさない光を放っていた。
「アーサーは王の素質を取り戻して、ここに来る。だから、今こそ動くとき」