グウィネヴィアとランスロット
◯ランスロット
ランスロットは、たくさんの人々で賑わう大通りをひとり歩いていた。
彼の頭の中でアロアの言葉が何度もこだましている。
“今こそ、動くとき”
アロアはあの暗い鉄格子の中でそう言った。
私は、どうするべきなのだろうか。
“お前が支えればいい。それだけだろ”
ランスロットは懐かしい友の声を聞いた様な気がして立ち止まった。
ガウェイン、お前なら・・・
ランスロットは駆け出した。
懐かしい友に会いに行くことにしたからだ。
会いにいくと言ってもそこに友がいるわけではないが。
その時だった。
大通りを駆け抜けるランスロットの目にここにいるはずのない姿が映り、自然と足が止まった。
「グウィネヴィア」
ランスロットは一年振りに愛する人と再会をした。
◯グウィネヴィア
「ランスロット?」
グウィネヴィアの頬を涙が伝った。
「お前、泣いていたのか?」
しまった。
涙がこぼれないように上を向いていたのに。
「こ、これはなんでもないの」
ランスロットの金色の瞳がじっとグウィネヴィアを見つめる。
そ、そんなにじっと見ないで欲しいんだけど。
グウィネヴィアは吹き出した。
「もう、相変わらずね。ランスロットは人をじっと見つめる癖があるんだから」
ランスロットの顔が少し赤くなった。
「お前がそんな顔してるから気になっただけだ」
「え?」
グウィネヴィアの顔もランスロットと同じように少し赤くなる。
「ラ、ランスロットはここで何してるの?王都の警備?」
「いや、少し考え事をしていて」
ランスロットは俯いた。
「ガウェインの知恵でも借りようかと思ってな」
「そう」
グウィネヴィアはランスロットに優しく微笑んだ。
「で、考え事って?」
ランスロットは無言でグウィネヴィアを見つめる。
そのランスロットの表情を見てグウィネヴィアは察した。
「アーサーの事ね」
ランスロットは頷いた。
「実は、アーサーと一緒に逃亡していたシスターが自首してきたんだ」
「え?あのとんでもなく強いって噂のシスターが?」
「ああ。そのシスターが私に話したいことがあると言い出したんだ」
ランスロットは、鉄格子の中のアロアとの会話をグウィネヴィアに話始めた。