表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ALOISE(アロア)  作者: 十八谷 瑠南
132/213

思い出の景色

◯グウィネヴィア

「好きなもの食べていいわよ?」

「ほ、本当にいいのか?」

「ええ」

グウィネヴィアの前に座るボーマンとトリスタンは、グウィネヴィアから視線を外し手元にあったメニューを見つめたかと思うと手をまっすぐ上げ、店員を呼んだ。

「お、王都特製デミグラスソースのハンバーグ」

「王都特製ことこと煮込んだシチュー」

「王都特製さくさくほくほくコロッケ」

「王都特製とろとろオムライス」

「王都特製」

グウィネヴィアが吹き出した。

「あなたたちさっきから王都特製ばっかり」

「だってよ、俺初めてなんだ。王都で飯を食うなんて、次元の違う人間のすることだと思ってたから」

「俺もこいつと同じだ。王都は金持ちの街だって思ってたからな。年甲斐にもなく興奮しちまった」

グウィネヴィアはふたりをみて微笑んだ。

「そうね。でも、今日は好きなだけ食べてよ。ぜーんぶ私のおごりよ」

「ほ、本当にいいのか?飯までおごってもらって」

「いいのよ。ひとりで今日は夕食を食べる気分にはならないわ」

「よっしゃ!俺、遠慮なく食いまくるからな」

トリスタンはそう言うと、店員に注文の続きを言い始めた。

グウィネヴィアは嬉しそうに微笑んでいた。

「お前、家に帰ってもひとりなのか?」

ボーマンがじっとグウィネヴィアを見つめる。

「え?ええ」

「親はいないのか?」

グウィネヴィアは視線をボーマンからそらした。

「親はいないわ。母は私を産んですぐ亡くなったの。父は・・・えっと、戦争で戦って亡くなったわ」

「父親は兵士だったのか?あんた貴族なのに?」

しまった。

「えっと、し、司令官だったのよ」

「そうか・・・。立派な父親だったんだな」

「え、ええ」

なんとかごまかせれたわね。

「お待たせいたしました」

「おお!きたきた!」

トリスタンは待ちきれなかったのか両手にはすでにナイフとフォークが握られていた。

「うわ!うまそう!」

ボーマンも料理を見ると目を輝かせた。

ふたりは夢中になって目の前にある料理を食べ始めた。

グウィネヴィアはそんなふたりがかつての親友たちの姿と重なった。

1年前の旅でアーサーやガウェイン、ランスロットもこんなふうに食べていたわね。

アーサーは文句を言いながら、ガウェインはどんな食べ物もおいしいって言いながら、ランスロットはそんなふたりにうるさいって怒りながら・・・。

「お、おい、どうしたんだ?」

「え?」

ボーマンとトリスタンがきょとんとした顔でこちらを見ていた。

グウィネヴィアは頬に手を触れた。彼女の手に涙がこぼれる。

「あ、私・・・。ちょ、ちょっとごめんなさい」

そう言ってグウィネヴィアは席を立った。

もう思い出してもどうしようもないのに。

グウィネヴィアは店の外に出て、夕日の消えかけた空を見上げた。

涙はぽろぽろと彼女の頬をつたっていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ