騎士団長ランスロット③
ランスロットは、机の上に無造作に積み上げられた紙やら本やらの中から真っ白な用紙をひっぱり出し、ペンを執った。
数分後、彼は、その用紙を封筒に入れ、男に差し出した。
「お前に仕事をやる」
「仕事ですか?」
「私への伝令ばかりでは面白くなかろう。これを届けて欲しい」
男は封筒を受け取った。
宛先も何も書かれていない。
「これをどこに届ければよろしいのですか?」
「旧王族のグウィネヴィアに届けてくれ。」
「旧王族の方に・・・ですか?」
「ああ。私の古い友人だ。それから、このことは誰にも話すなよ」
「誰にも?」
「友人のいないお前にこそできる仕事だ」
男は少しむっとして、ランスロットを睨んだが、ランスロットに軽く睨み返されてまた背筋が縮こまった。
「ランスロット団長。この仕事をするには、条件があります」
「条件?」
男は背筋を真っ直ぐにし、ランスロットを見つめた。
「私に噂の内容を教えてくださいませんか?」
ランスロットはまた吹き出した。
「そんなことが条件か」
「はい!」
「あー悪かったよ。お前に友人がいないと言ったから落ち込んでいるのだろう?だが、大した噂ではないぞ」
「内容は関係ありません」
男はランスロットを睨んだ。
さっきと違い、彼の目には光が宿っていた。
「皆が知っていて私が知らないというのが問題なのです」
ランスロットは、睨んできた男の顔が誰かに似ているような気がした。
気弱な男かと思ったがそうでもないようだな。
「いいだろう。噂ってのはな」
ランスロットは、じっと男の目を見つめた。
「現王であるウーサー王が偽王ではないかというものだ」