グウィネヴィアの墓参り
◯グウィネヴィア
ほんの少しだけ。
少しだけ街に行くだけ。
すぐ帰る。
そう思っていたんだけど。
ここどこ?
グウィネヴィアはたくさんの人々が行き交う人ごみの中に突っ立っていた。
「さあさ!安いよ!」
「今買わないと損!」
「王国一うまい店!」
至る所から聞こえてくる人々の声を聞きながら迷子でありながらもグウィネヴィアは微笑んでいた。
王都はやっぱり活気に溢れていて素敵だわ。
ずっとお城にこもりっぱなしだと気持ちが沈むもの。
それに私だって・・・何かしたい。
アーサーのために。
ガウェインのために。
そしてランスロットのために。
グウィネヴィアはため息をついた。
まあ、私にできることなんてこれぐらいよね。
グウィネヴィアはきょろきょろとあたりを見回した。
この辺だと思ったんたけど、どこかしら。
グウィネヴィアの金色の瞳に色とりどりの花が目に入った。
「あ、あった!」
歩いていた数人がグウィネヴィアをちらっと見た。
しまった。
思わず大きな声を出してしまった。
グウィネヴィアは恥ずかしそうに顔を下に向けて、やっと見つけた目的の場所へ向かった。
そこは、小さな花屋だった。
グウィネヴィアはおかれている花をじっと見つめた。
うーん。
どれがいいかしら。
「誰にあげる花を探しているの?」
グウィネヴィアは驚いて顔を上げた。
花に囲まれたカウンターにいた女性に声を掛けられた。
「あら、驚かせてごめんなさい。あまりにも真剣に探しているみたいだから気になっちゃって」
「ええ。大切な友達にあげる花を探しに来たの。だから慎重に選ぼうと思っていて」
「へえ。好きな男の子とか?」
グウィネヴィアは顔を赤くして首を振った。
「ち、違うわ。もちろん大好きだけど、でも、そういうのではなくて」
グウィネヴィアは側にあった赤色の小さな花びらを持った花に触れた。
「一緒にいると元気がもらえて、私もこんな人になりたいって尊敬できる人」
「ふうん。なるほどね。じゃあ、あなたが今触れているその花なんてぴったりよ?」
「え?」
グウィネヴィアは指に触れている花を見つめた。
「その花はね、イグレーヌ。尊敬やあなたがいて幸せって花言葉があるの」
「イグレーヌ?」
イグレーヌってどこかで聞いたことのある名前。
グウィネヴィアは、イグレーヌを優しい眼差しで見つめた。
あなたがいて幸せ・・・か。
グウィネヴィアは顔を上げてカウンターの女性に微笑んだ。
「これで大きな花束を作ってくれる?」