親友に似た少年
「いやあ、すまなかったな。俺の親友にお前がそっくりでさ」
ロッシュの目の前に金色の髪と瞳を持った少年が座っていた。
少年はむすっとした顔のままロッシュを見つめていた。
「ま、これはおわびだ。好きなもの注文してくれ」
ふたりがいるのは泊まっている宿屋の目の前にある小さな食べ物屋だった。
親友に再会できたと抱きつき喜んだロッシュであったが、それは親友ではなく、ただ似ているだけの赤の他人だった。
だが、ロッシュは本当はわかっていた。
その人が、親友でないことぐらい。
なぜなら彼の親友は5年も前に亡くなっているのだから。
だが、そんな彼も思わず生きていたのかと問いただしたくなるほど少年は親友にそっくりだったのだ。
「あ、そういえば俺ァまだ名前言ってなかったよな」
ロッシュは持っていたナイフとフォークを置き、ゴホンと咳をした。
「俺の名前はロッシュ。ここよりもっと西の村から来たんだ。本当はこの村の先に友達がいてよ。そいつに会いに行ったんだが、なんでもすごいことやらかしちまったみたいでさ」
少年はロッシュの話など興味がないのか、目の前にある食事を手際よく口に運んでいた。
「そんで俺の村に帰る前にこの村に寄ったんだが」
ロッシュはじっと少年を見つめた。
「お前、本当にそっくりなんだよなあ。あいつに。その、目の色以外」
少年は相変わらずロッシュの話など聞かず黙々と食事を続けていた。
そんな少年を見ながらロッシュはにっと笑った。
「ああ、アロアがここにいればなあ」