ロッシュの旅④
ロッシュは街を後にした。
ずっと会いたかった親友はもうこの街にはいない。
ロッシュは西へ戻ることにした。
自分の村へ。
「え、親友に会えなかったの!?」
「ああ。もういなくなっててな。手がかりすら掴めなかった」
ロッシュは以前泊まった村の宿屋にまた訪れていた。カウンター越しに宿屋の少女と再会したロッシュは親友に会えなかった愚痴をこぼしていた。
「だから、俺、もう自分の村に帰ることにしたんだよ。まったく最悪だ。せめてあいつ手紙で知らせてくれればよかったのによお」
「それは残念ね。でも、どうして街から出ていったのかしら。西の果ての街なんて、ここ王国の西側で一番大きくて住みやすい街なのにね」
ロッシュは教会で出会った老人の言葉を思い出していた。
“そもそもこの街の国王軍を全員倒したのも、その犯人を守るためだったようじゃ”
なんで犯人なんかかばったんだ?
「きっと」
ロッシュは大きなため息をついた。
「きっと田舎娘だったから都会が合わなかったんだろうな」
宿屋の少女がくすくすと笑っているのを見て、ロッシュは微笑んだ。
「で、部屋は空いているのか?」
「ええ、そうね・・・」
「あ、金はあるぞ。もう節約する必要がねえからな。一番いい部屋空いてねえのか?」
「それがね」
少女がため息をついた。
「一番いい部屋はここ三ヶ月ほどずっと空いてないのよ」
「お、おいそれって」
「そう。例のお客」
「まだいたのか!」
「ええ。だから、申し訳ないけど、一番いい部屋は空いてないわ」
「しゃあねえな。じゃあ今空いてる部屋でいいよ」