騎士団長ランスロット②
「いや、絶対にそれはない」
「なぜです?一国の王子ですよ!そう簡単には捕まらないでしょう」
ランスロットは、ふと思い出した。
初めてアーサーに出会った日のこと。
アーサーの偉そうな態度に腹が立ち、少し肩を押しただけで彼が吹っ飛んで行ってしまったこと。
(まだほんの1年前のことなのに。)
ランスロットはそのことを思い出し、少し頬を綻ばせた。
「アーサーは、弱いんだよ。田舎の国王軍でも、簡単に捕まえられるくらいにな」
背筋の良い男は驚いてまた、背筋が縮こまった。
「王子たるもの鍛えられているものだとばかり思っておりました」
「お前、何も知らないのか?」
「え?」
「この城で流れている噂も知らないのか?」
「噂ですか?その・・・恥ずかしながら、私、この城に友人というものがおりませんでして・・・」
ランスロットは吹き出した。
「なんだ、お前配属されたばかりなのか?」
「はい。王様のお眼鏡に叶いまして、1週間前に騎士団の一員にさせて頂きました」
「ほお」
「なので、噂というものは聞いたことがございません」
「そうか」
ランスロットは何か少し考えた後、椅子から立ち上がり、机に向かった。
「あの、ランスロット団長?」
「少し待て」