責任と逃走
◯ボーマン
ボーマンはアロアが飛び降りた姿をじっと見つめていた。
あいつは国王軍が嫌いだと言っていた。
でも、きっと国王軍を助けるために今飛び降りたんだ。
あいつはそういうやつだ。
短い付き合いだがわかる。
そして
ボーマンは顔を俯けて座り込んでいるアーサーに近づいた。
「俺は自分が助かりたいがためにお前らに付いて来た。それだけだ。仕組まれたこととか何も関係ないしな。だからお前には王になってほしい」
ボーマンはアーサーを見下ろしたが、相変わらず俯いたままだった。
ボーマンは構わず話を続ける。
「でも。お前は王になる気なんてないんだろ?そして俺たちからも逃げる。そうだろ?」アーサーは何も答えない
「お前はそう言う奴だ。短い付き合いだがわかる。今の俺はトリスタンやイズーのおかげでこの国を変えたいって気持ちが強くなってんだ。でも、また心変わりするかもしれねえ。元の俺に戻っちまうかも。そうなったらアロアを裏切るかもな。だから、そうなる前に戻ってこい。王子」
そう言ってボーマンも舞台の下へ飛び降りた。
思っていた通り国王軍のために戦うアロアの元へ走るために。
◯アーサー
ここはどこだ?
いやどこでもいい。
とにかくひとりになりたい。
“アーサーあなたは逃げている”
ひとりになりたい?
私は元々ひとりじゃないか。
人に守ってもらおうなど思ったことが間違いだった。
“かつての私のように”
それに今はもう守るものなんてない。
行けるところまで行こう。
“全てマーリンのせいにして大事なことから逃げている”
行こう。
ひとりで。
ひとりで行くんだ。
“自分で決めたことに責任は伴うものよ”
「うるさい!」
アーサーの怒鳴り声だけが響いた。
周りには誰もいない。
痛い。
アーサーは胸を押さえた。
痛みが消えない。
この痛みは何なんだ。
私は一体どうしたいのだ。
アーサーは再び歩き出した。
彼の遥か後ろには街が見えた。