アーサーの叫び
◯アロア
私も国王軍が憎い。
だからわかる。
この人達を私は止めことなんてできない。
でも
「国王軍がみんな憎いんだな」
そうつぶうやいたボーマンの顔はすこし悲し気だった。
「この人たちの気持ち痛いほどわかる」
それでもこんなの間違っている。
「止めないと」
アロアが駆け出そうとしたその時、アーサーが舞台に上がってきた。
「アーサー」
アーサーは一瞬視線をアロアに向けたが、何も言わずそのまま舞台の真ん前に立ち叫んだ。
「やめろ!」
アロアはあっけにとられてその様子を眺めていたが、アーサーが街の人や国王軍に向かって叫んでいるのだとわかった。
「やめろ!」
大きな叫び声。でも
「やめろ!」
誰も聞かない。聞こえない。
その声はだんだんと小さくなっていった。
アロアは思い出していた。
反乱軍たちに囲まれた時のことを。
あの時のアーサーはとても恐ろしかった。
恐ろしくて顔も見れなかったほど。
でも、今は違う。
弱々しくて恐ろしさも威厳も何もない。
アロアは力なく座り込んでしまったアーサーの元へ駆け寄った。
「アーサー」
アーサーは何も答えない。
相変わらず舞台の下では、街の人々からの国王軍への復讐が繰り広げられている。
「全て仕組まれていたのだぞ」
アロアは何も言わずアーサーを見つめる。
「私と貴様が出会うように奴は仕向けた。自分の犯した罪の尻拭いのために」
「シスター・・・マーリンの犯した罪?」
「私の父を、間違った王を、王にしてしまったこと」
アロアはシスターの言葉を思い出した。
“昔ね、私ひどい過ちを犯したことがあったの。
その時は本当に自分を責めた。
今のあなたの様に自分が大っ嫌いだった”
アロアはしゃがみこんでアーサーの顔を見ようとしたが、アーサーは顔を俯けて上げようともしない。
アロアは視線を舞台の下に移す。
国王軍と街の人々との戦いは見ていて気分が悪い。
「私、自分で決めたのよ。シスターの元で学ぶこと。あなたに付いて行くこと。あなたを王にすること。全部自分で決めたこと。シスターは私にきっかけをくれたにすぎない。そもそも私の命の恩人だしね」
「お前の命を助けたこと自体仕組まれていたものだとしたら?」
アロアは笑った。
「それはそれでありがたいわよ。命を助けてもらったことに何の変わりもないから」
アーサーは何も答えない。そんなアーサーを見て、アロアは立ち上がった。
「アーサー、あなたは逃げている。かつての私のように。全て自分やマーリンのせいにして、大事なことから逃げている。自分で決めたことに責任は伴うものよ」
「私は、何も決めていない」
「本当にそう?じゃあ、どうしてあなたは責任を感じているの?」
アーサーは何も答えない。
「今は忘れているだけなのよ。そのうちきっと思い出す。思い出したら、教えてよ。アーサー」
アロアはそう言って舞台の下へ飛び降りた。