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ALOISE(アロア)  作者: 十八谷 瑠南
116/213

アーサーの叫び

◯アロア

私も国王軍が憎い。

だからわかる。

この人達を私は止めことなんてできない。

でも

「国王軍がみんな憎いんだな」

そうつぶうやいたボーマンの顔はすこし悲し気だった。

「この人たちの気持ち痛いほどわかる」

それでもこんなの間違っている。

「止めないと」

アロアが駆け出そうとしたその時、アーサーが舞台に上がってきた。

「アーサー」

アーサーは一瞬視線をアロアに向けたが、何も言わずそのまま舞台の真ん前に立ち叫んだ。

「やめろ!」

アロアはあっけにとられてその様子を眺めていたが、アーサーが街の人や国王軍に向かって叫んでいるのだとわかった。

「やめろ!」

大きな叫び声。でも

「やめろ!」

誰も聞かない。聞こえない。

その声はだんだんと小さくなっていった。

アロアは思い出していた。

反乱軍たちに囲まれた時のことを。

あの時のアーサーはとても恐ろしかった。

恐ろしくて顔も見れなかったほど。

でも、今は違う。

弱々しくて恐ろしさも威厳も何もない。

アロアは力なく座り込んでしまったアーサーの元へ駆け寄った。

「アーサー」

アーサーは何も答えない。

相変わらず舞台の下では、街の人々からの国王軍への復讐が繰り広げられている。

「全て仕組まれていたのだぞ」

アロアは何も言わずアーサーを見つめる。

「私と貴様が出会うように奴は仕向けた。自分の犯した罪の尻拭いのために」

「シスター・・・マーリンの犯した罪?」

「私の父を、間違った王を、王にしてしまったこと」

アロアはシスターの言葉を思い出した。


“昔ね、私ひどい過ちを犯したことがあったの。

その時は本当に自分を責めた。

今のあなたの様に自分が大っ嫌いだった”


アロアはしゃがみこんでアーサーの顔を見ようとしたが、アーサーは顔を俯けて上げようともしない。

アロアは視線を舞台の下に移す。

国王軍と街の人々との戦いは見ていて気分が悪い。

「私、自分で決めたのよ。シスターの元で学ぶこと。あなたに付いて行くこと。あなたを王にすること。全部自分で決めたこと。シスターは私にきっかけをくれたにすぎない。そもそも私の命の恩人だしね」

「お前の命を助けたこと自体仕組まれていたものだとしたら?」

アロアは笑った。

「それはそれでありがたいわよ。命を助けてもらったことに何の変わりもないから」

アーサーは何も答えない。そんなアーサーを見て、アロアは立ち上がった。

「アーサー、あなたは逃げている。かつての私のように。全て自分やマーリンのせいにして、大事なことから逃げている。自分で決めたことに責任は伴うものよ」

「私は、何も決めていない」

「本当にそう?じゃあ、どうしてあなたは責任を感じているの?」

アーサーは何も答えない。

「今は忘れているだけなのよ。そのうちきっと思い出す。思い出したら、教えてよ。アーサー」

アロアはそう言って舞台の下へ飛び降りた。


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