ガウェインの言葉
「本当にお前が王だったんだな。いや、わかっていたよ。俺は。でもさ、こうやって剣を引き抜く姿を見てると、ああ、本当にお前は選ばれた王なんだなって」
アーサーを見上げるガウェインの顔は誇らしげだった。
そんなガウェインの顔を見るのがアーサーは辛かった。
「この国はもう駄目だ。こうなってしまったらもう手遅れじゃないか?私が王になったところで国民たちは変われない。変わることなんてきっとできない」
引き抜いた剣を持つ手に力を込めた。
「貴様なら・・・?もし国を任されたとすれば、貴様ならどうする?ガウェイン」
剣を引き抜いた石の上でアーサーはガウェインに尋ねた。
石の下からアーサーを眺めるガウェインはにっと笑った。
「そうなったらお前に託すよ」
アーサーの金色の瞳がじっとガウェインを捉える。
「そりゃさ、お前は傲慢で我儘で自分勝手で?性格は最低だけどさ」
アーサーはむっとした顔をしてガウェインを睨んだ。
ガウェインは微笑んだ。
「でも、剣を引き抜いたお前は王に見えたよ。ああ、こいつが選ばれた王なんだってわかったような気がした。それで十分なんじゃねえの?見かけだけでもいい。そう思わせられたんだぜ?この俺が。お前の性格の悪さを知り尽くしているこの俺が。完璧な王なんていねえよ。それにまだ始まってもいねえじゃねえか」
この時の自分はどんな顔をしていたのだろう。
本当は自分が王であることが不安でたまらなかった。
ガウェインはそんな私に言い放ったんだ。
「大丈夫。お前は絶対立派な王になるよ」
アーサーは刃に映った自分の泣き顔を地面に捨て、走り出した。