折れた剣
◯アロア
シスターが何をつぶやいたのかアロアにはわかった。アロアは小さく頷いた。
シスターはそのままパニックになっている群衆の中に消えていった。
アロアは舞台の上で座り込んでいた。
そうか、シスターこれがあなたの
「おい、アロア」
ボーマンがいつの間にアロアの横にいた。
アロアはボーマンに笑顔を作ろうとしたが、うまく作れなかった。
涙が溢れてきたからだ。
「大丈夫か?」
「うん。大丈夫。私は大丈夫」
それはボーマンに答えた訳ではない。
自分に言い聞かせたのだ。
偶然のはずがない。全てはシスターの…
アロアの中にかつてのシスターの声が蘇る。
“自分で決めたことって自分でどうにかできると思わない?”
責任だったんだ。
アロアはシスターが消えていった群衆を見つめる。
これが私の責任。
シスターは確かにそうつぶやいた。
◯アーサー
ガウェイン…
“本当にお前が王だったんだな”
貴様なら…
“いや、わかっていたよ。俺は。
でもさ、こうやって剣を引き抜く姿を見てると、ああ、本当にお前は選ばれた王なんだなって”
どうする?王の証、折れてしまったよ。
まただ。また胸が痛い。
アーサーは俯いて落とした剣の柄を見つめた。
柄から伸びる刃はその先にもっと長い刃がついていたことなど初めからなかったように光っていた。
私は王などではない。
私は選ばれてなどいない。
いや、選ばれていたのかもしれないが間違いだった。アーサーは剣を拾い上げ、半分になった刃に自分の顔を映した。
自分の泣き顔をアーサーは初めて見た。
なぜ私は泣いている?
私は王になりたかったのか?
この胸の痛みは何だ?
「兄さん?」
声のした方を見るとイズーがじっとこちらを見つめていた。
そのきょとんとした顔を見ていると今自分がどこにいるのかアーサーは思い出した。
アーサーの耳に群衆の叫び声や怒鳴り声が入ってくる。
彼らは国王軍がアーサーたちと戦い初めてからパニックになって逃げ出したかと思ったが、いざ国王軍が戦って負けているところを見ると今までたまっていたうっぷんを晴らそうと国王軍に殴りかかっていた。
集団で囲み、ひとりの国王軍を袋叩きにしている連中までいた。
「この国はもう駄目だ」
アーサーがそうつぶやいた時、彼の中にガウェインとの会話が蘇った。