アーサーは許せない②
アーサーの目に金色に輝く王冠を乗せた姿が浮かび上がった。
ずっと恐くて、
でも愛されたくて、
自分を見て欲しかった。
気に入られたかった。
そして、本当はわかっていた。
それは父の恐怖から逃げるための欲望だということを。
わかっていたんだ。
私は単なる理由が欲しかった。
単に愛されたいと思いたかった。
だからガウェインやランスロット、グウィネヴィアと出会い、友人になりたいと感じたことは、私にとって人生で初めて何の汚れもない単なる理由を手に入れた時だったのだ。
だが、そんな友人ももういない。
その友人を私から奪ったのは?
こんな国に変えてしまったのは?
父を狂わせたのは?
誰だ?
「全て貴様のせいだ。マーリン」
アーサーは泣いていた。
だが笑っていた。
アーサーの中が今までにないほどの怒りで満ち溢れていく。
剣をもつ手に力が入る。
今なら斬れる。
アーサーはそう確信した。
アーサーは老人に向かって剣を振り下ろす。
先程と違って剣が軽い。
まるで自分の体のような。
このまま斬れる。
老人に向かって刃が伸びるように落ちる。
剣はキーンという音をたてて何かかたいものを斬り落とした。
アーサーは人を斬ったことなどなかったが、人を斬った音ではないことぐらいわかっていた。
透き通るような刃が真っ二つになって地面に落ちた。老人も何も手を出していない。
アーサーは斬ったつもりだった。
あまりにも剣が自分になじんでいたものだから、斬れるという自信があったから。
アーサーは何も斬っていない。
ただ、彼の手には半分に折れた刃がついた剣があった。
老人が落ちていた刃の半分を拾い上げ、アーサーをまっすぐ見つめた。
「剣は見ている。見ているのだぞ。アーサー」
アーサーは手から剣を離した。
剣といっても折れた刃の半分が残っただけの剣だが。
老人は折れた刃のもう半分を持ち、すっと舞台の上に視線を移し、つぶやいた。