騎士団長ランスロット
◯ランスロット
アーサーは俺のことをどう思っているのだろう。
友を殺した裏切り者ってとこか。
「団長!ランスロット団長!」
ランスロットは、鬱陶しそうに声がする方を睨んだ。
部屋の扉の前で、足を揃え、ピンと背筋を伸ばした背の高い男が立っていた。
見たことのない男だ。新しい伝令か?
しかし、彼の見事な背筋はランスロットの鋭い眼光に萎縮し、少し縮こまった。
「すみません。なにか考え事でも、されていたのですか?」
「別に何もない。何の用だ?」
男は失礼しますと言い、部屋に足を踏み入れた。暖炉の前で椅子に腰掛けているランスロットの側に寄り、また足を揃え、ピンと背筋を伸ばした。
「行方をくらましているアーサー王子のことですが、何でも西の果ての街の国王軍が目撃したとの情報が」
「目撃?捕まえられなかったのか?」
「目撃をしただけだという話です」
ランスロットはうーんとうなった。
「変な話だな」
背筋のまっすぐな男は不思議そうな顔をした。
「変な話・・・でしょうか?」
「報酬はでているのだろう?」
「はい。もちろん」
「じゃあ、やっぱり変だ」
「そうでしょうか。国王軍の者が、王子を捕らえるのは恐れ多いと思ったのかもしれません」
「お前、忘れたのか?逃亡者が王子であることは騎士団にしか伝えられていない。ど田舎の国王軍は何も知らないはずだ」
「では、王子が応戦して、国王軍が負けてしまい、見栄を張るために目撃しただけと嘘をついた・・・ということでは?」