反撃②
◯ボーマン
後ろから人を撃つ行為は卑怯だろうか?
なんて言ってられない。
少年に剣を突きつける国王軍の男に向かってボーマンは銃口を向けていた。
男の手から剣が落ち、キーンという甲高い音が響いた。
アロアの言った通りになった。
あいつらは本当に卑怯。
自分たちが危ない目に合うと思ったら絶対に子供を人質にする。
そうアロアは断言していたからだ。
俺としてはちょっと複雑なんだがな。
腕を撃たれた国王軍の男は気絶してしまった様でそのまま膝から崩れ落ちた。
ボーマンは子供たちの縄をほどき始めた。
「お前らとにかくこの街から逃げろ」
「で、でも国王軍が」
「きっとまた捕まっちまう」
子供たちは不安気な声を次々と上げていた。
「安心しろ。この街の国王軍は全員この広場に集まっているし、街の住民もほとんどここにいる。しかも、こんなことになってパニック状態だ。この混乱に乗じて逃げろ」
「でも、ここから奴らが追ってきたら?」
「大丈夫だ。あの姉ちゃんがやっつけてくれる。あと俺もな」
子供たちの恐怖でこわばっていた顔に少し笑顔が戻ってきた。
「トリスタンとイズーは?」
子供たちは舞台下を見下ろした。
パニックに陥った人々の中に泣きじゃくった顔でこちらを見上げるトリスタンとその後ろで呆然と立ち尽くすイズーの姿が見えた。
ボーマンは思った。
こいつらは、あいつらのせいでこんな目に合っているのに仲間のことを思っているのか。
「あいつらは俺たちがどうにかする、お前らはいいから早く行け」
子供たちはしばらく舞台の下を見つめていたが、意を決したのか走り出し、舞台から下り、逃げ惑う人々の大群の中に消えていった。
「しっかし、お前、本当に何にも手伝わなかったな!王子!」
そう言ってボーマンは舞台裏を振り返った。
「あれ?」
だが、舞台裏に隠れていたはずのアーサーがいなくなっていた。
ボーマンは辺りをきょろきょろと見渡した。
いつの間にかアーサーが舞台の真ん前に立ち、アーサーは真っ直ぐ逃げ惑う人々を見つめていた。
「おい、王子何してんだ?」