黒いかたまり
◯アロア
ものすごい人の大群を大通りの先にアロアは見た。
トリスタンもイズーもその光景を見て足を止めている。
まるで黒いかたまりが大通りの先にある広場を見つめている、そんな光景だったのだ。
そして、そのかたまりの先には大きな舞台があり、その上に人が数人いるのがここからでも見えた。
あれはなんだろう?
「あいつらだ」
そう言ったのはトリスタンだった。
アロアはトリスタンのあいつらが国王軍を指すのか仲間を指すのかわからなかったが、目を凝らして見てわかった。
両方だ。
広場にある舞台の上に数人の子供達と国王軍がいたのだ。
トリスタンとイズーは居ても立っても居られなくなったのか大群に向かって走り出した。
あいつらが大群の前で何をしようとしているのかわかったからだろう。
まるで処刑台。
アロアはそう思った。
「待って!トリスタン、イズー!」
「アロア!」
名前を呼ばれてアロアは振り向いた。
アーサーとボーマンが息を切らしてこちらに駆け寄ってきた。
ふたりも黒い大群のかたまりを見て足を止めた。
「あれは一体」
アロアはふたりの呆然とした顔を見つめた。
このままただ向かってもきっと何もできない。
「ねえ、ふたりとも私の話をちょっと聞いてくれない?」