ボーマンの疑問
◯ボーマン
薄暗くて長い下水道から地上へ顔を出したボーマンの目に強い光が飛び込んできた。
「暗いところから出ただけで、こんなに外が明るく感じるんだな」
そう言ってボーマンはトリスタンとイズーを見た。
明るい場所で見る彼らの顔は地下で見たときよりも不安そうに見えた。
それもそうだ。
あいつらは、自分たちのせいで仲間がひどい目にあっているかもしれない、そんな不安を抱えてんだから。それにしても
「やけに静かじゃないか?」
「本当ね。いくら裏通りだからって静かすぎるわ」
その時、トリスタンが突然駆け出した。
「あ、待って!兄貴!」
イズーがその後を追う。
「ふたりともちょっと待って」
アロアもふたりの後を追って駆け出した。
「全く勝手なガキどもだな」
「王子」
ボーマンがじっとアーサーを見つめた。
「お前、あいつらのリーダーと知り合いか?」
アーサーの金色の瞳が光る。
「なぜそう思う?」
ボーマンは懐から財布を出し、アーサーに渡した。
「これ、あいつらのリーダーがお前に返してくれって。それからお前によろしくって」
財布を受け取ったアーサーの目が大きく見開いた。
「あのクソじじい」
ボーマンはアーサーが誰のことを言っているのかわからなかった。
「クソじじい?あいつらのリーダーはガキだったぞ?」
「そうか。お前にはそう見えたのか」
ボーマンはさっきからアーサーが何を言っているのかわからない。
「そう見えた?」
「いいから。行くぞ。鼻男」
アーサーはボーマンに背を向けて駆け出したが、ボーマンはその場に突っ立ってただアーサーの後ろ姿を見つめていた。
アーサーの背にくくりつけている剣が揺れる。
剣に選ばれた王。
とんでもなく強いシスター。 孤児たちのリーダー。何かある。
絶対に。
ボーマンは走り出す。
アーサーの後を追って。
きっと今にわかるそう思ったから。