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はじまり
私は一生忘れない。
あなたと出会った日のこと。
あなたが初めて笑顔を見せてくれた日のこと。
あなたが私の絵を書いてくれた日のこと。
あなたが初めて泣いた日のこと。
あなたが死んでしまった日のこと。
私は一生忘れない。
◯アロア
教会の大理石の上で冷たくなっている親友を見つけた時、アロアは生まれて初めて後悔という感情を知った。
なぜあの時声をかけなかったのだろう。
なぜ無理矢理にでも一緒にいなかったのだろう
なぜ彼に冷たくあたる父を止めなかったのだろう。
ああ・・・違う。
「私のせいだわ」
親友の亡骸の横でアロアは小さくそうつぶやいていた。
その日からアロアは泣き続けた。
泣いても何も変わらないとわかっていたのに、涙を止めることができなかった。
幾日か経った頃、後悔の気持ちを抱いたまま家族や村の人に一言も告げずにアロアは生まれ故郷を出て行った。
あてもなくふらふらと。