英雄と魔王
―星が煌めく美しい夜。
その美しさはまるで心の中の不安な気持ちを消してくれる様なものだ。
ビルの屋上ということで風が気持ちいい。
「僕は導く者だ。お前たち人間が犯した罪は決して償えるものではない。
この悲劇を忘れるな。」
そう呟く僕は15歳の高校1年生だ。僕はいじめを受けている。
物を隠される、暴力、と色々な仕打ちを受けてきた。
だけど一番辛い事は味方がいないこと。親は子を理解してくれない。
それを理解したのはつい最近だ。
「そんな事で学校を休みたいなんて言うな。」
そう言ってくる。
―そんなこと?いいや、違う...とても重要なことだ。なのに...なんでわからないのか...?
僕は夜空を見上げ、その後に静かに体を乗り出した。
―落ちる。物凄い速さで落ちる。先程まで気持ちいいと感じた風が今では凄く痛いと感じる。
そこで一人の声が聞こえた。
「君、今から死ぬの?」
少し声は高めのものの、男らしく爽やかな話し方。
走馬灯?違う。だけど、どうせ死ぬのだからどうでもいいや。
聞こえないはずの声の主に答える。
「ああ。死ぬんだ。楽しくないし、痛い目に合うし、もううんざりなんだ。」
「そっか♪なら楽しい世界へ招待するよ。痛い目に合わないかはわからないけどね?(笑)」
「あと護身用にナイフを渡しておくよ♪じゃあ、楽しい異世界ライフを」
と、そこで声は消えた。