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結界の国〜兵師たちの都志見〜  作者: スターライズ
運命のはじまり編
6/19

〜迫る死神〜

  数分後、星雪たちは塔の近くへと無事につくことに成功していた。


「見えた!巻物が置いてある塔の入り口だ! 警戒を厳にしよう。敵がいるかもしれない。探知できるか?」


  義孝が緊迫した表情で尋ねる。


「いや、何も探知できない」


「そうか、だったらすぐに巻物を取って……」


  その言葉が終わらぬうちに目の前を黒い物が通り過ぎる。


  時を置かずして探知系能力者の男が突然赤い血しぶきをあげて枯れ木のように倒れる。


  その場の誰もがその状況を理解できなかった。


「おい、おどれらに聞きたいことがあるんじゃけど」


  その張り詰めた空気を破るように声がする。


  声のする方を振り向くと黒いマントに般若の仮面をつけた男が立っていた。


(探知では引っかからなかったのに、なぜ……)全員の脳裏にその疑問が浮かぶと同時に男が醸し出す雰囲気から直感的に死を感じ取る。


  しかし、星雪だけはその圧倒的威圧感を感じるのも忘れるほど男の服装に目を奪われていた。


「鬼の面に黒いマント……あの時と同じ……」


  星雪は後退りしながら呟く。


「お前らの中に”ニギハヤヒ“呪術の神の末裔がおるじゃろ。われ、わしと一緒にきてくれんかのぉ?」


  誰もこの状況を把握できず困惑する。


「てめえ、仲間を殺しといて何様だ!死ね!風呪!暴風陣!」


  皆が臆する中で大神政次だけは違った。


  彼は自分でもなぜ感じたかわからない恐怖という感情を抱きながらも鬼のような形相で男の方向へ両手を突き出し、支配力を発揮する。


  すると無数の風の斬撃が男を襲う。その規模は先ほどのものとは比べものにならない。


「政次落ち着け! みんな! 陣形を立て直せ!」


  義孝が必死の声で叫ぶ。


  風の斬撃が辺りの木々を豆腐のように切り倒し、開けたところができる。


  そこに男の姿を見ることはできなかった。


「神の末裔? 笑わせるな。神の末裔は、大神一族本家跡取りの俺だけだ!」


  政次は勝利を確信し高笑いをするが次の瞬間、後方に何かの気配を感じ取る。


「なるほど、確かに神の末裔じゃ、ぶちすごい支配力じゃのぉ、じゃけど、おどれに用はない。」


  そこには消し飛んだはずの男がいた。男が手を素早く横に振るとまるで獣のような炎が発生し、チーム全体に襲い掛かる。


「ほっしー、こっち! 氷華! 氷結壁。」


  涼花は、呆然とする星雪の手を引っ張り引き寄せ、腰のポーチから札を取り出し掲げる。


  札から大量の水が出現すると同時に一気に凍結し氷のドームが生成され、二人を包みこむ。


  男の繰り出した炎と熱風は瞬時に全てを喰らい尽くし、チームの大半の者が姿を消す。


「さあ!わしの攻撃から何人生き残ったかのぉ」


  男が指を鳴らすと炎は瞬時に消え去る。その焼け焦げた大地には球形の氷と数個のシールドが見えるだけだ。


「今のは、ヒノガグツチの力じゃないのか?いや、まさか……」


  星雪は自らの頭に浮かんだ考えに身震いをする。


「5人か、けっこう生き残ったのぉ。やるじゃないか。そして、この中に神の末裔がおるじゃろ。早く出てきんさい。せっかく生き残った仲間が死ぬぞ。」


「俺をムシるな!」


  政次が突如として男の上空から現れ、男に風の刃を叩き込む。だが男はまるで木の葉のようにひらりとかわし政次の後ろに突如として現れる。


「われ、もう逝ねや。」


  政次の背中に強烈な炎の打撃を叩き込む。


「がぁっ」


  すさまじい衝撃を浴びせられ撃墜された戦闘機のように炎に包まれながら地面に激突する。


「政次!」


  義孝が悲痛な声で叫ぶ。生き残ったその場の全員がその光景に目を疑う。


「嘘だろ……政次がやられた⁉︎」


「そんなバカな⁉︎ 五大名家だぞ!」


  皆がすがっていた最後の希望が消え、死というその絶対的響きが支配域を広げていく。


「強化術式を使ったとはいえこの速さか、速すぎる……やはりこの男、神の直系だな……そうなると勝ち目はない、もう俺が……」


  その中で星雪は、独り言のようにつぶやき、男の前に出ようとすると


「うちが相手だ!」


  涼花が星雪を手で制し、男の前に出る。


「ほう。お嬢さん、わしとやるというのか?」


  男は星雪のほうをチラッと見てから涼花にこたえる。


「ほっしー、うちがこいつを食い止めている間にみんなを連れて逃げて。」


「でも、それだと神谷が……」


「うち、ばあやと約束したから。若を守るって」


  涼花はいたずらっぽく笑う。その眩しい笑顔に星雪は黙るしかなかった。


「大丈夫だってば!ほんと、ほっしーは心配性だね。」


  黙り込む星雪の様子を見た涼花は言葉を続け、星雪の胸を叩く。


「お別れは済んだか?」


  仮面のせいで顔は見えないが声で馬鹿にしているのがよくわかる。


「お別れするのはお前だ!その趣味の悪いお面、絶対叩き割ってやるわ!」


  涼花が腰に下げていた剣のように細長いクナイを取り出し男に向ける。


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