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第00話 プロローグ

街には新しい息吹を感じ、桜はもうすぐ満開。花見の場所取りシートがやけに目立つ。


加えて新品の制服やら、よそよそしい雰囲気の新入生をよく見かける季節。


っていうか、街にはまた来やがった花粉を感じ、俺の目玉はもうすぐ充血。


花見なんかやってる人の気分が知れず、加えて明らかに制服とマッチしてない自分に腹が立つ季節。


そう。それが四月。



「ハクション。」



俺は新入生と時期を同じくして4月から3年A組に転入する。


年は18歳。まー普通の高校生なら17歳なんだろうが、訳ありで1年無駄に高校生をやる事になったのだ。


ガラゴロガラ


「おーい。みんな席に着けー。」


朝紹介された担任と教室に入るとクラスのみんなは席に着いた。


と同時に一人の男が俺の顔を見ると「転校生だー」と騒ぎ出した。


おまえは小学生かよと言うツッコミは置いておいて。


クラスはざわつき担任が静める。


「みんなに新しい友達を紹介する。自己紹介を・・・。」


担任のありきたりな前ふりにまた高校生をやることになった事を実感しながら自己紹介をする。


「えー。沖村こころです。1年間皆さんと同じクラスで勉強する事になりました。わからない事が沢山あると思いますが、みなさんよろしくお願いします。」


クラスからは拍手が送られた。


「彼カッコイイよねー。」


「いやー。可愛いほうだよー。」


クラスはまたざわめきだした。


俺は可もなく不可もなく実にノーマルな自己紹介で切り抜けた。


しかし俺の中の天使が言うのだ。



「こころ。そんな自己紹介があるかよ。つまんない。面白みが全くない。雑魚。」


もう一人の俺が自分をけなす。俺はこいつをテンと呼んでいる。


「なんだよ。面白みなんかいらないだろ。初対面なんだしこんなもんでいいの。」



俺は実は恥ずかしがり屋なのだが、それを隠そうと冷静を装っていた。


テンは「根性無し。」と言って消えていった。


根性無しと言われても年下に転校そうそうギャグをぶっ放したりできないだろ普通・・・。


ホームルームが終わった後にはクラスの半分が新しいもの見たさに集まって来て、親切にしてくれる人やこの時期の転校で詮索する人、色々な思惑の人に笑顔を振りまいておいた。


そして今度は俺の中の悪魔が言う。


「あー怖い怖い。思ってもない事言って、営業用スマイルで転校早々人気取りですかー。やっぱ違いますねー。こころは心の優しい殿方ですこと。」


さらにもう一人の俺が言う。俺はこいつをアッキーと呼んでいる。


「お前は黙ってろ。」


・・・。


俺のまわりが一気に静かになった。


ヤバイ事に思考だけで会話するはずのアッキーに口に出して会話をしてしまった。


「あ・・・あのー。何か気に障ることでも私言いましたか?」


アッキーとの話でおざなりの会話になってしまった女の子が恐る恐る声をかけて来た。


どうやら彼女は学級委員長らしい。なぜわかるかと言うと胸ポケットに委員長と書かれた

ワッペンが貼ってあるからだ。


今日二度目になる、お前は小学生かーと言う突っ込みを我慢してフレンドリーかつ今日一番のスマイルで「なんてな。びっくりしたー?」とおちゃらけて見せた。


委員長はすかさず「なんでやねん。」と胸に突っ込みを入れてきた。


なんか良く分からないが、みんな笑ってその場は収まった。


だがこの時には俺はみんなから面白いやつとして認識されてしまったのだ。


「お前のせいだからな。」


アッキーは知らぬ顔で「口に出したお前が悪い。」と言い残して消えていった。



俺の中には天使と悪魔が存在する。


それは他の人もそうかもしれないし、そうでは無いのかもしれない。


ただこれからの1年間は時計の針がその中心を起点にして永遠に回り続けるように、俺を中心に周りをも巻き込んだメリーゴーランドが動き出す。

















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