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第4話:自給自足も中々良い

 しばらくの間はゆっくりと寝れたようだな。ちゃんと生きてるし何より血も無くピンピンしているから奇襲されずに済んだみたいだが……

「若干ショベルの位置が違うような気がする。まさか」   

 奇襲を仕掛けてきたのか?だとすれば助かったと言うべきだよなこれは。はぁ~とりあえず小屋の方では景色が伺えないからお外に出てみますかね。

 グダグダと寝ぼけている俺は両方の頬を軽く痛くない程度につねってからショベルをどけて扉を開けるといつもと変わらない霧がある森だった。翌日になったら雨とか晴れとかバリエーションは無いのかよ?何か薄気味悪いんだよな……ここは。  

「つっても、殺し合いをする世界だし気候なんざ至極どうでも良いんだろうな」 

 軽く背伸びやらストレッチを決め込んでから俺はまだ地形を把握していない森を歩いていく。

 このまま戦略が整うまではあの小屋を使うのも良いがいつまでも居たら狙われる可能性は非常に高いのがネックになる以上、適当にそして安全な場所を各地で転々としながら殺し合いを楽しむ方が良いだろう。       

「ガルゥゥ!」   

 狂犬の声が聞こえた俺は速やかに茂みの所に隠れて、様子見を始める事にした。この周囲には狂犬さんがわんさか居るんだな……退治しない事には先に進めない感じか?    

(とりあえず使えそうな物はあるか見てみるか)      

 両肩に背負っているリュックサックのチャックを開けて所持品を確認すると雀の涙ぐらいの量しか無かった。

 本気で泣きそうなんだが……持ち物は本体が無いマッチに先端が折れたバールに解体してバラバラに置いたと思われる弾倉とスライドそして中華包丁……これだけしか無いとはな。  

(拳銃さえあれば遠距離で仕留めれる可能性はあるが、俺の所持品には時間を稼ぐ物が一つあるぐらいか……狂犬が一匹だけだと心の奥底から願うしかないな) 

 弾倉投げつけて、仕留めてから一匹だけじゃなくて数匹居ましたよ!テヘペロとか要らない展開は本気で止めてくれよ。笑えないから……

「物は試しだな。一回やるだけやってみるか」 

 試しにやる価値はあると思った俺は潔く弾倉と中華包丁を手に持って、弾倉を狂犬の近くに投げつける。

 すると狂犬は弾倉にピクリと反応して弾倉の方へと移動して、辺りの周辺を警戒している。

 その間に俺は急いで、そしてバレないように慎重に低めの態勢で移動してから狂犬の動きが止まった所で中華包丁を使って狂犬のド真ん中の胴体を遠慮無しに突き刺すと狂犬は吠えまくりながら、俺の方に振り向いて噛み付こうとしてきたがリュックサックから事前に飛び出させて置いた先端が折れたバールを使って、殴り込んでいくと狂犬は体力が無くなったのか小さな鳴き声を出してバタリと横向けになって倒れた。

「よし、食料は何とか確保したな。後はコイツを上手く調理するだけだ」    

 俺は狂犬に使った武器をリュックサックに仕舞ってから狂犬を背負ってそそくさと退却する。

 というのも、さっきの鳴き声とかで敵が集まる可能性があると考えたからだ。

 さすがの俺でもあの最初に出会ったクレイジーの女みたいな奴が複数人来られると負けるからな……俺は確実に仕留めたいタイプなんだ。    

「はぁはぁ、どこ歩いても景色が一緒だから走ってても道を進んだ実感が湧かないんだよなぁ」   

 適当に走って、ヘトヘトになった俺は疲れたので狂犬を地面に下ろして火を起こすことにした。火を起こすにはマッチやらライターが一番良いんだが。最悪な事にこの世界では火を温かく燃やしてくれる木も無いから、チョロチョロと落ちている奴を集めるとするからこれは解決として火をおこすのが一番厄介なんだよな……本当に何でマッチの箱の中身が無いんだか。      

「武器集めにも限度があるだろうが、テラーさんよ」    

 この場で文句を言おうが、どうせ誰も助言してくれないし。動くしかないよな……朝に起きて、全力で戦ったおかげでやる気が地味に無い俺は嫌々ながらま立ち上がって、周辺に落ちていると思われる木を集めていく活動をするが地味に腰がキツい。    

「小さい木に大きな木に小さい木に小さい木♪」      

 脳内で妄想した歌を鼻歌形式で適当に歌っていくとあら不思議と木は段々と着実に進んでいったのでそれ程の苦痛を感じる事も無く完了した。       

「よし、木の採集はこれくらいにするとして……最後は火だな」

 この時点で既に割りきった俺は急いで火を起こす準備を始めようするが……如何せんやり方がわからないので手の施しようが無い事に気付いた。   

「まいったなー、俺は基本的に快楽を楽しんでいたからこういう昔ながらの火の起こし方が一切わからない。誰か助けてくれないもんかね?」         

 こういう事態になる前にサバイバル生活を一回だけでも良いから体験しておくべきだったなと心の中で少々反省していると背後から見知った人物が声を掛けてくれた。     

「どうも、行き詰まっているみたいですから救援に来ましたよ。今のあなたはとても見ていられないですからね」    

 そのへにゃへにゃ顔に強烈なパンチを殴りたいが今は我慢だ。何故なら司会者のコイツが来たからには何とかしてくれると俺は判断したからだ!      

「ちょっと所の話では無いな。俺は正直に言うとかなーり困っている。火を起こすやり方が一切わからないから力を貸してくれ」

              

「おやおや、あの凶器の塊である女を殺しておいてこの体たらくは少々残念ですね。ですが、お困りならば少しだけ力を貸しましょう。こんな所で死なれては私の顔も吹き飛びますからね」

 若干というよりかなり腹立つ事を言ってくるテラーは両手でズボンのポケットをまさぐってからある物を俺に見せつけると丁寧に説明を始める。      

「これは古来の火起こしのやり方でしてあなたには火打石というやり方で火を起こして貰います。私の両手に姿を現しているのはこの世で堅いと判断されている石と鋼鉄にございます。これらを互いに摩擦するように擦って下さい。さすればそちらの地面に放り投げられている犬を食べる事は叶うでしょう」       

 ライターを貸せよ、白帽子!とか言いたい気持ちを必死にこらえて俺は両手に持っている堅い石と鋼鉄を受け取った。

「本当にこれで火が付く保証はあるのか?もし点火しなかったらお前の首を跳ねてやるから覚悟しておけよ」


「怖いな~じゃあ私はこの辺で撤収しますね♪」  

 テラーは後ろにバックステップを軽やかに決め手から霧に包まれると同時に消え去った。アイツは人間なのか……何か人間辞めてるような雰囲気を出しているからちょっと怖いんだよな。

「さて、コイツ等で火を起こすとしますかね」       

 右手に堅い石そして反対の左手に鋼鉄を持ってスタンバイした俺は息を整えてからテラーの言う通りに実行してみるがやはり中々上手くいかずに失敗する。    

「本気で着火すんのか?不安で不安で仕方無いんだが」   

 とにかく擦って擦ってやるだけだ。俺は無心になってひたすら実行していくとコツを掴んだのか石の方から火花が飛び散って来たので急いで木の枝を近付けると火は瞬く間に着火して燃えていく。 

「どわわっ!あっち!」        

 火が着いた木を予め一点に集中させて置いた木に投げつけと火は力強く燃え始めた。どうやら、俺はサバイバル人間としての入門に向いているらしい。   

「はははっ!どうだ!俺様でも出来たぞ!テラー!」

            

「おや、まさか本当にやってのけるとは……ちょっと甘く見ていましたね」   

 再び突然、隣から現れたテラーは一本の細い鉄の棒を用意してと俺に渡すと鮮やかに撤退していった。この棒はこの狂犬を燃やす為に使えという事か。   

「よし、調理開始だ!」        

 リュックサックから中華包丁を取り出して狂犬を食べ易いように解体してから金属の棒で一つのお肉らしき物を貫いてダイレクトに焼いていくと生肉は良い感じに香ばしい臭いを漂わせていた。

 俺は焼けた肉をちょっとだけ観察してから口に運ぶと少々生臭さが残ったレバーのような食感に気持ち悪くなりそうだったが、この先食べられる時間が無い可能性もあったので我慢して食べる事となった。そして無理矢理でも口の中に入れて食べ終えてから速やかに火を消した俺は物思いに浸る。      

「せっかく着火させたのに、何だかもったいないな」    

 火は案外起こすのが大変なんだと知った俺は現代のライター並びマッチを作った者に心の中で賞賛して、自給自足の大変さを実感した俺は急ぎ足で別の方角へと進んだ。    

※※※※     

「獣の臭いがする」 

 男は怪しいと感じた場所に足を止めて、ゆっくりと観察してから

「あの方角から火の粉の臭いがするな……獲物が居る可能性があるし行ってみるか」        

 独り言を淡々と呟くと、木島が向かった方角へと足を進めた。

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