最終話:ようこそ殺し合いの世界へ
長き旅をした俺に終わりが来た。色々な出来事が思い出のように振り返っていき、その殆どが大変な道のりではあったが今になって思えば最高に気分の良い経験であった。
正直にいうとそこら辺を散策している通行人により何倍もの実力者が居たので歯応えはかなりあった。
桐山に打ち勝った俺はそんな物思いにふけっていると遥か真下の暗闇から再度白ハットを深く被ったテラーが今までに見た事が無いほどの上機嫌な表情を見せつけてくる。その表情は正直にいってウザイ位に眩しい程である。
「ようやくゲームが終わりました!数々の試練を乗り越えた木島選手に栄光を!」
パチパチと豪快に手を両手でリズム良く叩いていくテラーに周辺からまたしてもあの言葉の弾幕が次々と放たれていく所を見る以上、この戦いは生放送で中継されたと言って良いだろう。
俺は一部流れている言葉に照れながらも、こんな嬉しくなる状況で何故だか少しだけ疑問を持った。
それは今放送している番組を見たかどうか記憶が一切無い事だ。もし、こんなに注目が集まっている裏番組ならどんな時であれ見ている筈だ。
もしかしたら逃亡生活の最中に放送されていた可能性があるかもしれないから何とも言い難い所だがな。
「どうしました?せっかく、10人の挑戦者を打ち倒してナンバーワンの頂点に上り詰めたというのに……そんな表情では幸せが逃げてしまいますよ」
幸せが逃げるか。確かにこんな調子だと逃げてしまいそうだな……テラーに言われた通り、せっかく頂点に上り詰めたんだから気分爽快になってやるか!あはははっ!
高らかにそしてテラーが居る中で上機嫌に笑う俺。テラーは笑っている俺をしばらく眺めてから、続けざまに言葉を告げる。
「高らかに笑う木島選手!では、ここで今までの歴史を振り返ってみましょう!」
あっ?振り返るだと?俺は頭の中で疑問符を浮かべていくとテラーは真っ暗闇の中でどういう技術……いや多分創造力で明るいモニターに出力すると俺がこれまでやってきた歴史という物が流れ出す。
「まず、最初に流れているのは挑戦者番号005と争いです!この時の木島選手は、一般人との違い に少しだけ戸惑いを抱きましたが……何とかそれらを打破して打ち倒す事が出来ました!」
あのイカレた女に出会った時は余りの強さにちょっとだけ戸惑ってしまったが、何とかして倒せたから良かったな。あの女のおかげで中華包丁を手に取る事が出来たし。
とはいってもしばらく経って1度目に出会った桐山のおかげで中華包丁は泣く泣くバイナラになってしまったんだが……
「まだまだ振り返っていきましょう!」
テラーは次々と俺がこのゲームで築き上げた歴史を映像にして流し出す。映像は思いの外長いのでダイジェスト風に話していくと館でイカレた女と出会ってぶち殺してから誰かに手榴弾を投げられた俺は館を何とかギリギリの所で脱出して、野生の魔物からひっそりと逃げて小屋に入る際に道具を手に入れる。
そしてゲーム2日目に当たる日には古びれた館へと潜入して桐山と対峙……それから上手いこと逃げ延びて、謎解きで一部の拳銃パーツを手に入れてからはメリケンDQNに腹を抉られて血だらけ状態の時に、金銀兄弟との戦闘になりそうだったが佐々木という侍が来てくれたおかげで何とか助かった。
その後は2日間ぐらい小屋で身体を休めて闇を望み者(笑)と戦闘最中に奈落の底へとダイブして、ハサミを持つ工藤に偶然出会った桐山と一緒にぶち殺す。
それからは再び佐々木に出会って命を落とされそうになるがギリギリの所でSOGと刻まれた軍用ナイフを拾い上げて軽快な動きで翻弄していき攻勢に突入すると、司会者のテラーに教会のような場所へと連れ込まれ……機械の腕がガトリングガンに変形するヤバい奴を倒して、終点で桐山を倒して映像が終わるが
「continue ?」
確か意味は続くで間違いないよな?挑戦者を全員倒した俺に続きなんて無い筈だが……テラーの奴、一体何を目論んでいやがる。
「視聴者の皆様!残念ながらこれ以上はお見せできないのでお別れです!機会があれば再びお会いしましょう、さようなら!」
司会者であるテラーはこれ以上に無い程の大声を張り上げて両手を全力で交互良く繰り返した後に両手を降ろした。どうやら、俺や挑戦者をこっそりと生中継していた番組は終わりを告げたようだ。
「では、あなたには挑戦者を全員倒した願いとして自由と幸福の世界に招待しましょう!」
一時期は不穏な気持ちに包まれたが、どうやらその心配は無用だったみたいだな。テラーが出現させた光の門をくぐり抜ける事で願いが享受される事だし、喜んで足を進めるとするか……だが、この世界に別れをする前に言っておくか。
「テラー、このゲームに誘ってくれた事に感謝するぜ。お前のおかげで俺が望む願いを叶えられたんだからな」
「いえいえ、感謝するのは私の方ですよ。あなたのおかげでゲームが盛り上がって、見ている私もワクワクしましたから気にならさないで下さい……それよりもお早くどうぞ。間もなく願いが叶えられるので」
テラーが言うならそうさせてもらうか。この光り輝く門をかいくぐった世界には、俺が望んだ誰一人邪魔者が居ない世界と永久に暮らせるほどの豊かな食料と娯楽が手に入るんだ!
今からたっぷりと楽しませてもらうぜ!光の門へと入って高鳴る気持ちを頑張って抑えつつも嬉しさが勝るおかげか、俺は今まで無い程の奇妙な顔になっているかもしれない。
まぁ、誰にも見られて居ないんだからそこの部分はどうでも良いんだが……なっ!
「これ以上前に進めない!?」
おかしい。今の俺は無事に五体満足の筈だ!それにさっきまでは普通に歩けていたはずだぞ!
一体、俺の身に何が起きたというんだ!?とりあえずジタバタと乱暴に身体全体を揺らすが、全く効果が出ない。
よく分からない状況になってから感覚的には10分間が経つと、俺しか居ない場所で凄く聞き覚えのある人物の声がしっかりと聞こえてきた。
「挑戦者番号010の木島選手、今までいや最後までゲームに参加していただいて誠にありがとう御座います」
くそ、何を悠長にアナウンスを流しているんだよ!早くこの両手両足を拘束している鎖を解放しやがれ!
「ですが、あなたはこのゲームに置いて人を殺めました。よって挑戦者番号010に該当し優勝したあなたには最高のスペシャルなステージを与える事にしました」
ぐっ!せっかく人が気分ワクワクで進んできたというのに、逆戻りさせるつもりか!腕や足を鎖で拘束された俺はズルズルと遠慮無しに後ろの方へと引きずられて、落ち着いた頃には先ほどまで光に輝いていた空間が嘘のように暗黒と包まれていた。
しかし、暗闇は見た目の問題で一番の違いが出ていた……それは今まで俺が一度も出会った事が無い奴が銅像か何かで土台の上で飾られている事だ。頭の悪い俺でもいい加減に察しがついた。
だが、気付いた頃には既に遅かった……何故なら今の俺は両手両足をしっかりと拘束されて動けないからだ。はははっ、乾いた笑いしか出ないや。
まさかこのゲームがここまで真っ黒に満ちていたとはな。せめて優勝した者には自由と幸福を与えてくれるもんかと思ったぜ。
「では、これよりあなたには極上の銅像として飾られる為に私直伝の素晴らしい儀式を差し上げましょう!」
どこからか奥の方に無数のやたらと視線にチラつく光が見えてきた。恐らくあれは――だろうな。
はぁ、俺って奴は最後の最後まで馬鹿な奴だ。
こんな事なら先に光の門に入る前に不安の糧であるテラーの命を摘んでいけば良かった……な。その後、俺は無数の――にありったけの串刺しをされて俺の意識は途絶えた。
※※※※
ようやく全員の処刑が完了しましたね!これで、また1から挑戦者を集める旅に出なければなりませんが……一部は私が招いた事なので致し方無いですね。
ともあれ、視聴者にはお見せできませんでしたが、あの映像を流すことでゲームの存在が危うくなるので大変良かったと思っています!では、気持ちを切り替えて即興CMをネット上に配信するとしましょう!
「皆さん、こんにちは!時差によってはおはよう&こんばんは!これから流れるCMを見て、俺は他の誰よりも強いぞとか俺は壮絶なる戦いをしたい!という方には必見!そんな強く折れない意志があるなら、即日で連れて行ってあげすよ!えっ?どんな世界に招待してくれるのかって?それは……」
ようこそ殺し合いの世界へ!ですよ
今作品は出来る限り現実的な作風に仕上げていましたが、ややファンタジーな部分もありました。やはり、自分が魔法などの非現実な部分が好きなので少なからずの影響が出ています(笑)それと今回は若干消化不良感が出ていると思いますが、あれはわざとそういう風に仕上げてます。
結局、テラーって何だよ?となったと思いますが、彼は謎に満ち溢れています(という自己解決でお願い致します)
そして最終局面で彼はあの結末を迎える事になってしまいますが、端から観ても彼の行いは決してやってはならない過ちだと感じたのであのような形に落ち着きました。
という事で今回は実験的な作品になりましたが……次回は自分自身キチンと片付けて置きたい作品の続きを書いていきたいと思いますのでそちらに専念します。
これで最後になりますが、お時間良ければ感想や評価等お手数おかけしますが宜しくお願い致します。それではこれにて締めさせてもらいます。
明日のリアル




