第24話:最後に残るのは俺だ。
「ふはははっ、どうしたどうした!もっと俺を楽しませてくれよぉぉ!」
最初に突っ込む時にだいぶというか鼻から切り裂いてやるとか言っていたが前言撤回したい気分だ。何でだって言われると回答に困るが、この男は今まで戦った中で一番気が狂っていて隙の無い攻撃を仕掛けてくるからだ。
しかもシャドウの攻撃を避けていくだけで物が破壊されたり爆発したりとか有り得なすぎる事が起きるので直に受けたりしたらとんでもなく天へと舞い上がれそうである。
もっとも今の俺にはリタイアやサレンダーをする勇気は一切無いから、何とかして切り抜けたい所ではあるがな。とりあえず今は距離を取りつつ様子見とさせてもらう。
「何だよ、つまんねえな。お前ならあの男よりも戦いを面白くしてくれると思ったのに……心底失望したぜ」
失望してくれて結構だぜ。出来れば俺を無視して、今すぐにでも桐山の所に行って共倒れをやって頂けたら最高だからその方向性で頼むわ。とか他人になすりつけていたらアイツ何か機械の右腕を変形させてるけど!?
「おいおい、ちょっと待ってくれよ。あんた随分と物騒過ぎる物を出してというより構えているじゃねえか。とりあえず一旦収めてくれないかな?その物騒なガト――」
「蜂の巣にしてやるからありがたく思いやがれ!」
おい!右腕から何か変形したガトリングガンで問答無用に撃って来やがったぞ!俺は蜂の巣なんて死んでもなりたくないから適当に隠れられそうな遮蔽物を探すぜ。
幸いにも倉庫の中で撃ってくれたから穴だらけの大量出血大サービスにならずに済んでかなり良かったがな。それにしても、あのガトリングガンは音もさながら威力が凄いな。
今隠れている遮蔽物もあともう少しで壊れるかもしれないから、さっさと弾切れしてくんないかな?そうじゃないと付け入る隙が無いから難易度が鬼になるんだが……
「そこでメソメソと隠れているのは、わかっているんだ。早く出て来ないと遮蔽物が壊れて蜂の巣になっちまうぜ。まぁ、出て来た所で蜂の巣パーティーになるけどな。あははっ!」
だから、今の俺はシャドウとかいうキチガイさんのガトリングガンの弾が切れるの待つ機会が生まれる所を狙う作戦でいく。だが、この最中に出来る事はあるはずだ。ガトリングガンを嬉しそうな顔でバンバン撃っているシャドウには適当に相手をしてやる。
「そんなにバンバン撃っていたら装填数が無くなると思うから、早く撃つのを止めた方が良いと思うぜ」
「随分と余裕なんだな。それとも時間稼ぎのつもりなのかな!」
後半の部分を悟られたら、すぐに蜂の巣エンドだな。しかしながらこんな事でやられる訳に俺ではない。だから今はお喋りに集中しながら……
「お前は何の為に戦っている?俺は自分の野望を叶える為にやっている」
自由と幸福……アイツには出会った時に言われたが具体的にはまだ決めてはいないんだよな。まぁ、俺だけが生き残ったら約束としてたんまりのお金とありったけの自由を実現したいもんだが……
日本に戻ってしまえば、またしても警察さん達と果てしないバトルが始まるから別の世界かなんかに連れて行ってくれると大変有り難いのだが
「俺の目的は単純な事だ。ただただ強い奴と出会って殺し合いをする。まさにこの世界は俺の為にあるような物だ……った筈だが、どうも俺の姿を見るだけで逃げちゃう奴が多くて相手をしてくれないから思う通りにはいかないもんでね!全く持ってつまらない世界だよ。だからこそ、お前だけは俺を楽しませてくれよぉぉ!」
容赦なきガトリングガンの攻撃は未だに続く。だが、この調子ならいい加減に弾は切れる筈だ。
俺は以前遊びで調べていたヤッホーさんの知識を元にして時間を掛けながらも完成させたあれを手に汗を垂らしながら持つと、やがてシャドウの撃ち放つガトリングガンの弾がカラカラと弾切れの音を起こし始める。
シャドウは弾切れを起こすとすかさず、次の弾を装填して再びガトリングガンを隠れている遮蔽物に向けた瞬間に俺は照準をガトリングガンの方に向けて数発撃ち込んでいく。
「おいおい、どこを狙って撃っているだ?そういうのは俺の目玉とか肉体のあちこちに撃たないと意味が無いぜ!じゃあな、小僧!?」
ガトリングガンの穴を適当に弾丸で埋めておいたから調子が悪くなっちゃったな。残念残念……悪いがこちらの形成は逆転だ!
「はっ!ガトリングが無くとも腕でてめえの身体を叩き潰してやるよ」
ガトリングガンが故障して再び機械の腕に戻したシャドウは俺の方へと殴り込みを掛けてくる。 俺は遠距離から拳銃で何発か身体のあちこちに発砲してから、拳銃をしまってホルスターから抜き取ったSOGという名の軍事用のナイフで切り込んでいく。
「楽しくなってきやがったな!」
シャドウは高らかに笑いながらそして切り刻まれながらも右腕で俺の顔面を掴んで地面に叩き込む。その痛さは言葉では表しにくいが上手く言うと頭が割れそうな位の激しい痛みが伴ったが俺は此処でくたばれないんだよ!
「楽しいお祭りは終わりだ。早々にこの世界から立ち下がれやぁぁ!」
顔面の骨が折れそうな位凄く痛いが、俺はその隙を突いて左手に持っているSOGで半ば力だけで機械の右腕を半分に削ぎ落とすとシャドウはすぐに後退して切り落とされた右腕を左手でさすっていた。
「はぁ、中々やるじゃねえか。お前は俺を楽しませてくれる良い奴だ――」
お前の顔は見飽きた。悪いがこの世界で生き残って野望を叶えたいから顔面ごと撃たれて綺麗に散っていきな。照準を顔面に向けて一瞬でそして呆気なく終わらせる俺に勝利が舞い降りた。
どうも、俺はこの世界に入って世界中に轟かせる怪物をこの手で殺せたらしい……まぁ、拳銃のお陰かもしれないが俺って随分と強くなったんだな。最初の時は色々な奴等に苦戦を強いられていたが……とりあえず、疲れたから休むか。
「ふへぇ、これで残りの挑戦者は俺を含めて三人だけになった。完全勝利はもう目前だな」
ヤバい。ニヤニヤが止まらないぜ!
「ニコニコしているのはとても喜ばしい事ですよ。まさか教会で渡しておいたパーツを戦闘中に話しをしながら完成させて発砲するとは……あなたの実力は相当な物だったらしい」
いつの間にかに来やがったな。しかも俺の行動がバレているのを見ると、テラーはこっそりと見ていたんだな。
「見えない所でヒソヒソと見やがって……お前はやっぱり性格が悪いんだな」
「こう見えても私はフレンドリー精神が旺盛なんですけどね。何かあなたに言われて悲しいですよ……ハンカチハンカチっと」
俺の言葉で急に泣き出してハンカチで目から出てきた涙を拭いている所を見ると、俺が悪いのかってなりそうだが俺は全然悪くないから!コイツが勝手に泣き出した事だからな!何か微妙に大事だから二回ぐらいは言わせてもらう。
「さて、沢山泣いて涙を拭いた所でこれからの説明を始めましょう。休憩中で悪いとは思いますが準備は宜しいでしょうか?」
本当なら、もう少しだらけたい所だが……コイツに見られても全く心と肉体が休まらないから話を聞く事にしますかね。
「良いぜ、話せよ」
「木島修介選手、あなたはこの世界で世界を轟かせたシャドウ・ラビリンスを見事に打ち倒してくれました。」
倒せたには倒せたが結局シャドウという奴の全体的な過去が見えなかったな……一応俺から少し質問をしてみるか。
「悪いな、ちょっと質問があるからお前の話を聞く前に聞いて良いか?」
「全然構いませんよ。寧ろドンドン質問して下さい!」
いつでもウェルカム態勢をしているテラーに俺はシャドウの事について伺うとテラーは躊躇う事無くペラペラとそしてスラスラと喋り出した。
色々とゴチャゴチャしていて脳内処理が追いつかない状態だったが上手く簡潔にして言葉を現してみると、シャドウ・ラビリンスという年齢38の男は全世界の脅威となる程の犯罪者で物心のつく頃から多くの窃盗罪や暴力罪を平気でやっていたらしく、この世界のゲームに参加するまでは目つきの気に入らない通行人や自分を逮捕してくるポリスなど木っ端微塵に完膚無きまでに叩きのめしていたらしい。
最終的には道中で司会者のテラーに誘われて、フラフラとこの世界に舞い降りたらしい。
今話を聞くだけで恐ろしく関わりたく無い男だが、よく勝てたなと思うけどアイツは結構隙のある奴だったから俺が思うにそこまでの強さ無かった感じだが……まぁ、あの世界のポリスは何か弱かったんだろう。拳銃くらいは所持していたと思うけどな。
「という事でこれににてシャドウ・ラビリンスの説明を終えたいと思います。では、そろそろ私の方から次の説明をしましょうかね」
あっ、そういやコイツは話をする為に来たんだったな。
「とにもかくにもヤバ過ぎる奴だったから上手く始末出来て良かったわ……うん。それで、話って何だよ?気になるから教えろよ」
「今回あなたは終点という場に相応しき挑戦者に選ばれました。よって今からあなたには!」
テラーが後ろに振り向きざまに右手を開けていざなったら、何かクリスタルのような透明に透き通った階段が出てきやがった!?
これは……どうやら雲まで続いているみたいだが歩けるようになっているのか?途中で落ちたらと思うとヒヤリハットどころでは無くなるぜ。
「不安そうな顔をしていますね~でも、大丈夫ですよ!その階段は最後まで足を外さずに歩くと最終決戦に相応しい場所へと繋がります!」
いよいよ、この長すぎる階段を足を歩るいていけば最終戦に辿り着く事が出来るのか。何か寂しいような嬉しいような複雑な気分だぜ。
「ふぅ、やっと次で終われるのか。テラー、俺があの雲まで果てしない場所で最後まで生き残った相手と戦って勝てれば望みを叶えてくれるんだろうな?」
怪訝そうな表情で聞いたら、ニコニコした表情でイエスと答えくれやがるな。まぁ、答えてくれるから変に疑わなくても良さそうだが
「あなたが無事に最終戦で勝利すれば、自由と幸福の世界は私が保証しましょう……では、階段を踏み外さずに歩きながら無事にあの向こう側の方へと目指して下さい。それでは!」
テラーの野郎、喋り終わったらさっさと帰って行ったな。
「まぁ、いいや。それよりも俺はこの階段を上って、自分の望みを叶えに行く」
一歩一歩踏みしめて歩き出す。何か歩く度にこれまでの思い出が走馬灯のように振り返ってくるな。
結局この世界でさまよい歩いている期間は余り無いとは思うが、強烈な出来事は多々あったな。
最初に出会った男を殺す女や赤髪ヤンキーのメリケンDQN、そして金銀兄弟や最初に俺の事を獲物と言ったりしたと思えば手のひらをクルリと変えて協力してくれと仰ぐ傭兵や最終的に俺を覚醒させてくれた侍に右腕をガトリングガンに変形させて、心の底から楽しんでいるシャドウ。
思い出が蘇るだけで随分と濃厚な出来事を体験してきた訳だ。
「だからこそ、俺はあの向こう側にある終点で勝利を掴むぜ」
侍か傭兵のどちらかが終点に辿り着くと思われるが、最後に残るのは……。俺はクリスタルのように輝いている階段に一歩一歩踏みしめながら走馬灯のような思い出を振り返りながら、遥か上空にある方へと目指していった。




