第21話:木島覚醒。そして……事態は急転
「その表情は何か迷っているみたいだな。俺の話に疑問があるのかな?」
疑問なんてお前の話を聞いていたら何一つそんなもんはねえよ。だが、コイツと協力していくのは凄く嫌だし何より冷静に落ち着いて考えてみると、この世界は殺し合いをする場所としては決定的な事実と言える。だからコイツの言う事に従う義理は無いと俺は感じる。よって!
「悪いが、てめえの協力は出来ない。そもそもの話、ここが何であろうが無かろうが殺し合いが出来る場所という事実は変わらない。お前がなんと言おうとな」
しばらく無言の沈黙が辺りを包ませる。そしてしばらく経ってから桐山は飽きられた表情をして説得を始める。
性懲りもなくまだ言うか……
「君は優秀な獲物として唯一まともな人間だと見込んで、言わせてもらう。この世界で戦い続けるより、司会者のテラーを根掘り葉掘り追い詰めてこの腐りきった場所から脱出する方が得策だ」
「最後の後半は同意見だな。だが、その為にもお前を倒した方が遥かに手っ取り早い。お前を倒したら人数は数名ぐらいしか居ないんだからな」
折りたたみ式のナイフでちらつかせても、戦う気は無いのか。いつから、この野郎はこんなに腑抜けな奴になってしまったんだ?まさか洞窟の時に運悪く手榴弾の爆発の影響で岩を打ってしまって頭の構造が変わってしまったのか?やれやれ、そうならそうと言ってくれよな。
「木島、君はいつまでも辺りに立ちこめている霧が中々消えない理由……分かるか?」
霧だと?確かに言われてみれば、いつまで経っても消えない事に違和感バリバリに感じるが……それが何だって言うんだ。
「そんなもん、頭の馬鹿な俺にわかるわけが無いだろう。まぁ、頑張ってひねり出すとすれば天候が悪い場所だからとか?」
って。俺がてめえの問いに真面目に回答してやってというのに何で腹を抱えながら笑ってんだよ!いい加減にしないとぶっ飛ばすぞ!
「あはははっ!いやいや悪い悪い。君のその余りにも脳天気な考え方に笑ってしまったんだ」
「脳天気だぁ?ならお前は何か理由を知っているんだよな?この世界全体が霧に包まれている理由を」
「何となく察してはいるさ。歩いて探索して考えていく内にね……そろそろ答えを教えてやるとするか。答えはこの殺し合いの世界のあらゆる所に人の目に映らないように監視カメラを設置しているんだ」
監視カメラとかますます馬鹿げた話だと思うぜ。そんな下らなく訳の分からないを事をする意味があるのかよ。
「てめえの解答には意味が分からないな。監視カメラをこの周辺にバラまいて一体全体何でそんな事をするんだ?」
「今俺達がやり合っている殺し合いの世界をどこかの放送局いや日本を含めた全体に放送して、お茶の間の皆に見せつけている可能性が高いんだよ。現に俺達の斜め後方の上空に微かにだが、機械音がしている。それが何よりの紛れもない証拠だ」
放送って……俺のこの現在の状況がだだ漏れしていると言う事か。だとしたらプライベートすらねえな……あの司会者、桐山の事が事実で間違い無いなら俺が思うよりも胡散臭さが膨れ上がったな。今度出会ったら問い詰める必要がありそうだ。だが、その前に目の前に立ちはだかっている桐山は消しておく。今後の為にもな!
「お前の話は十二分に理解出来た。今度テラーにでも会ったらとっちめてやるよ!けど、さっきも言わせてもらったが殺し合いの世界だと言うのは何一つ変わらない事実だ!なので司会者のテラーを問い詰める前に障害物であるお前を消す!俺の目的の為にもな!」
「木島、冷静になれ!今の状況を、奴はどこか安全な所でほくそ笑んでいるんだぞ!俺達は奴の手の中で踊らされているだ!だからこそ」
あぁ、イライラする。まさかこんなにゴチャゴチャと物事を言う奴だったとはな!前の世界で働いていた部長に良く似ていやがるぜ!
俺は折りたたみ式のナイフをちらつかせるのを中断して桐山の懐に飛びつこうとしたが、突然の地震のような激しい揺れに耐える事が出来なかったので掴まれそうな所に急遽捕まる事にした。一体何が!?
「ぐっ!この揺れは激しすぎる!」
桐山も身体をグラグラに揺らして、身近な所に掴まっているようだ。ちくしょう、今の状況で自由自在に動けるなら切り刻んでやったというのに!
「テラーの仕業だな。これ以上、俺と三島を関わらせないように地割れを起こさせるつもりか!」
っ!どうやら桐山の言う通りにジグザグと地割れを起こしたようだな。ヤバい、そんな悠長に喋っている状況でもねえ!急いで離れないとこの場所が崩れ落ちる!
「桐山、また会ったらお前だけは必ず倒す!それまでには精々生きとけよ!」
「ぐっ……木島。どこまでもお前は馬鹿な男だ」
俺は地割れが起きている場所から全速力で吐息をしながら逃げていく。はぁはぁ……ここまで必死に逃げたから何とか死ぬ事にはならなかったな。
だが、やっぱりあいつのおかげでテラーの怪しさが倍以上になっちまったじゃねえか。どうしてくれんだよ……これじゃあ会うまでゆっくりと寝れないぞ。
「どうした?そんな顔をしていたら懐に付け込まれてしまうぞ。木島殿」
やれやれ、ようやく地割れの所から急いで逃げ延びてポカリとかスポーツ飲料を飲みたいって時に侍さんが来るとはな。とことん俺は運が悪いようだ。
「よぉ、佐々木居三郎……結構会ってなかったし久し振りなんじゃねえの?」
「主に会うのはこれで二回目になるが、久しく会っていないような気がするな。いつかの傷も癒えているよう……これで正々堂々の果たし合いが所望出来るな」
果たし合いと来たか。コイツも挑戦者である以上、この手で倒しておかなければ後々の障害となる可能性がある。なら俺としてはコイツを殺らない理由は無いよな!
「お前の果たし合いとやらはしっかりと受けてやるぜ!今日ここで決着をつけてやるよ!」
俺は先ほど桐山に飛びつこうとした際に持っていた折りたたみ式のナイフを逆手で構えると対する佐々木は刀を綺麗に抜いて、両手に構える。
「その気合い良し!これで互いに遠慮する事無く正々堂々とやれる。いざ、参る!」
どうやら、先攻はあちらさんが仕掛けてくるみたいだな。やってやりゃあ!俺は逆手持ちにしたナイフに刀を当ててせめぎ合いをしていく。だが、佐々木は侍として刀の扱いに秀でているせいおかげか動き方が鼻からおかしかった。やばい、早過ぎる!捉えられねぇ!
「その程度の実力とは笑止!」
「悪いが俺にも野望がある。こんな所で死ねないんだよ」
「ならば、拙者を驚愕させる力を見せつけろ!今のままではボロ臭い修行もろくにしておらん浪人武士と同一の存在だ」
野郎、言ってくれるじゃねえか!余り俺を舐めんじゃねえぞ!おらぁぁぁ!
「ふむ、駄目だな。その陳腐な動きでは拙者の動きを掴む事は永久に叶わんだろう。真にガッカリだが今宵はこの場で綺麗に散って頂くとしよう」
ぐぁぁ!俺のナイフの動きを見切って斬り裂いてきやがった!次の斬撃には上手くバックで避けれたから無駄な追撃を受けずに済んだが、血がここまでドポドポに落ちる以上次に奴から攻撃をまとも喰らったら軽く逝けそうだな。はははっ……ヤバい。乾いた笑いしか出てこねえや。今は本気で手が震えそうだ。佐々木にびびってんのか?いや、びびってんな。間違い無く……
「どうした?この場で立たない場合は負けを認めると言う事で拙者が綺麗に捌いてやっても良いぞ」
ふざけんなよ!そんなのはごめん被るぜ。そんな事をされる位なら必死にしがみついて殺される方が遙かにマシだ!だが、俺はこんな場所で終わらせるつまりは毛頭無い!俺は必ずこの世界で野望を叶えるまでは全力で戦い抜いてやる!
それが、今の俺に出来る……役目だからな!俺はポタポタと落ちる身体を気にする事無く立ち上がって、いつから落ちていたのかは全く分からないがあるナイフとそれをしまうホルスターを拾い上げる。
ナイフをよく見てみるとSOGという文字が掘られてあった。何だか知らねえが有名な奴なのか?まぁ、いいや。それよりも手に持ってみると案外悪くない。むしろ、佐々木との斬り合いの時に使用していた折りたたみ式のナイフよりもかなり手になじむな。
それにさっきまでやられっぱなしで混濁していた意識が綺麗サッパリに無くなってクリアになっていく。何だろうな……上手く言葉に表せないが、今の状態なら誰にも負ける事が無さそうだ!ふふふっ、あはははっ!
「何だ?今まで気合いだけは良かった木島殿から圧倒的な気迫を感じる。これは想像以上に危険だと拙者の脳内に語り掛けている」
「行くぜ、佐々木!ここからは俺様の本気の実力を見せ付けてやる!」
SOGのナイフをしまう専用のホルスターをズボンに引っ掛けておいて、一気に懐に飛び込んで自由自在に切り込んでいく。今までは何か縛られているようにぎこちない動きだったような気がするが、このSOGという名を刻んでいるナイフを持つだけで何だか身体が非常に軽い気がする。
いや……このナイフだけじゃ無いな。俺が心残りがあった部分を吹っ切ったから、こんなに自由に動けているように錯覚しているんだろうな。もっと簡単に言えば肩の荷が降りたという所か。何せよ……今は大変良い気分だ!
「ほらほら!どしたよ、侍さん!俺の動きに魅了されすぎて固まってんぞ!」
「ぬっ!あの武器を持っただけであそこまで実力が変わるとは!何とも末恐ろしい奴だ!」
呑気に感心している場合じゃないと思うぜ。若干動きうろたえていて尚且つ後ろにジリジリと後退していく佐々木に対して俺は隙あらば各所の部分に軽やかに切っていく。
まるでナイフが俺の言うことを理解しているのか次々に鋭い刃を佐々木の身体に染み込ませていく。そしてあらゆる部分を切っていく内に佐々木は後ろに後退して声を荒げる。どうやら、我慢の限界を向かえたようだな。
「うぐっ!これ以上は身体が保たぬ!悪いがこの場で失敬する!」
残念だが、ここでお前を帰らすほど俺の心は山よりも広く優しくも無いんだよ!今この場で一つ残らず終わりにしてやる!
後退して去っていく佐々木に俺は瞬間的に移動して、急所を狙う形で飛び付くと突如さっきまで自由に動いていた身体がテレビで良く放映されているような無重力の状態になった。
これは一体何だ!?よく分からない状況に戸惑っている俺はどこからか響き渡るアイツの声が聞こえてきた。
「挑戦者の皆様、どうやら残りの人数がごくわずかとなってしまいました。ですので、誠に勝手ながらでは御座いますが今から私テラーがある場所に招待しようと思います。準備が出来次第、その場所にお連れ致しますので少々気長にお待ち下さい」
テラーの野郎、何をするつもりなんだ?俺は底知れぬ事態に戸惑いながらもテラーの指示があるまで待つ羽目になってしまった。
たくっ!俺はただ純粋に殺し合いを楽しむ為にこのゲームに参加したというのに……
一体この世界で何が起きるんだよ。不安でたまらねえぜ。




