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第2話:サクッと殺せば愉快な気分に

 森から霧で薄く見える館に入っていくとそこには電気が無くどこかのゲームにでもありがちな薄暗い玄関に赤い絨毯とその先二階へと続く洋式な感じで天井に吊されているシャンデリアが妙に揺れているのが実に怖い。

 しかも階段に上がる時には確実にシャンデリアの上を通るみたいだし、頼むから俺が通過する時に落ちてくれるなよ……

「しかし、館に誰か居るとは思うんだが……誰も居ないみたいだな。絶対に居そうな雰囲気を漂わせているんだが」

 一応、薄暗い周囲を警戒してから歩む俺。というのも今は素手だからだ。武器の一つや二つがあればカモンベイビー状態だが、やはり無いのは色々とマズい。

 まぁ、最悪襲い掛かってきた奴を素手で返り討ちにして武器やらを強奪してしまうのもありだが俺的にはそれは非常にまどろっこしい。だから、まずは武器集めとこの館の情報収集からだ。地形を知れば己の物に出来るからな!

 俺はまだ見ぬ館に興奮しながら二階の方に足を進めるとちょうど真ん中の頭上にあるシャンデリアが落下する音が聞こえたので、素早く階段の方にダイブするとシャンデリアはガラスの砕け散った音と共に豪快に崩れ去った。    

「ありゃあ、落ちやがったか。何処のどいつか知らねえが酷いイタズラだな」  

 ゆっくりと辺りを警戒しながらもシャンデリアを調べて見るとシャンデリアの先が妙な所で切れていたので俺は何処の野郎がちょうど良いタイミングでナイフやら鋭利な物を飛ばしてぶっ殺そうとしたのは軽く推測出来る。

 明かりが無いからよく見えないが恐らくシャンデリアの先を切ったナイフはどこかの天井に突き刺さっているんだろう。

「真正面からは戦わないタイプか。はっ!随分と目障りなタイプな事で!」  

 だが、こんな所でビクビク進みながら先に進むタイプじゃないんだぜ。   

「先に進む前に……おっ!良い奴みっけ!コイツを上手く使えばいつか形勢逆転の武器にはなるだろうな」       

 シャンデリアから落ちた三角のガラスをニヤニヤしながらボロボロの上着の胸ポケットに上手く仕込んだ俺は先を進んで探索していく事にする。先に先に進んでいく内に色々な物を発見していく。 

「甲冑とかどこかの古い土器とか怪しさ満点の壺があるのか……鈍器には使えそうだが」      

 甲冑に備えてある剣とかは人間的には振り回せない重さがあるから論外にして土器とかの鈍器は直撃してぶつければバラバラに砕ける可能性があるのが唯一の欠点。 

 しかも一つ一つが大きいから片手しか使えなくなるのが結構面倒くさいな。 

「よし、パスだ。こんな物は奇襲された時に使う事にしよう」

 合理的で賢い俺はすぐに諦めて、別の武器の探索を始める。歩いていく内に二階には扉の先に待ち伏せの可能性があると踏んだ俺は、一旦冷静になって一階へと戻る。

 何故一階に行くのか?それは厨房に包丁やらの役に立つ武器があると判断したからだ。だが、同時に役に立つ武器がある部屋だけあって見えない所に隠れていて挑戦者が我先に殺そうという可能性が無きにしも非ずだが……    

「明かりが欲しいよな。無いと不便過ぎるんだが」     

 電気は愚か、窓から見える景色はどんよりと雲があるので景色からの明かりは一切期待できない。割と面倒な館だな……もっと使い易いようにしてくれれば非常に助かるんだが。

「とか独り言をグチグチと呟いていたら見事に到着だな。さて武器集めの時間だ」         

 リビングらしき部屋へと侵入した俺は辺りの物を静かに調べていく。というのも雑音出すと辺りに居る挑戦者達に自分は此処に居るぜ!と高らかにアピールしているからだ。

 上手い具合に賢い俺は速やかに可及的迅速に調べていくと台所の下の古びれ棚から肝心の刃がボロボロに廃れたナイフと黒く蠢いた生き物がカサカサと数匹出てきた。

 俺は息を殺して足でグシャリと一匹殺した後に刃こぼれしたナイフを持って、とりあえずまだ無いか探していく。  

「Gが居るとか聞いてないんだが……衛生が行き届いて無さ過ぎだろ」  

 他に無いかな。便利な物は?下の棚はある程度調べたが刃が落ちていて使えない奴が多々あるから、もう調べる必要は皆無として。後は上の沢山材料が入りそうな棚を開けるかね。 

「頼むから、黒くて目障りな奴が落ちてくるなよ」     

 恐る恐る黒い生き物に警戒しながら俺は開ける!    

「シ ネ!」    

 ナイフを俺の頭に目掛けて刺してくる女の声に咄嗟の判断で横にスラリと避けると女は棚から飛び下りて小柄な体型を見せつけてきた。全くあんな所に隠れていたのかよ!

 普通に探索モードの視点でやっていたら死んでた所だぜ。

「おいおい、最近の女は棚から目掛けて殺ってくるのが主流なのかよ。兄さん、一度も聞いた事が無いぜ」      

 随分とフラフラしている女だがあれは中国とかで良く使われる極太包丁か……全く何であんな物があるんだか。   

「サッサトシネ!」 

 顔が良く見えない女は俺に向かって容赦なく中華包丁を使って斬りつけてきた。俺はタイミング良く避けながら周りにある小道具を投げて牽制を取っていくが女はあっさりと避けて、近づいてくる。

 このまま戦闘に持ち込むスタイルは負けると判断した俺は速やかにダッシュで玄関の方へと戻って再び二階へと目指して、隠れられそうな場所に見つからないように息を殺す。

 女はどうやら辺りをキョロキョロとゾンビのようにフラフラと歩きながら人間を超えた動きで別の方角へと向かって行った。どうやら撒けたらしい……が、さてはてどうしようかね? 

「さっきの挑戦者、明らかに頭が狂っていたな。俺はもう少しマシな脳をしていたから良かったぜ」 

 てかあの女は意識があるのかすら怪しいな。何らかの薬で自我が崩壊しているんじゃねえか?  

「ふぅ、だが悠長に隠れていても仕方ねぇ。幸福と自由の為にも俺はやらなきゃいけないんだよ」  

 その為ならば、俺は何だってするぜ。この手に持った包丁でザクリとお前の心臓を急襲して血まみれのシャワーにさせたりとか顔面に刺してあへあへと意味不明な叫び声をあげさせたりとか……  

「あの女は恐らく突進タイプだ」       

 となると、作戦を上手い事練ればサクッと殺害出来るはずだ!見事に興奮している俺は気持ちを抑えながら入念にイメージトレーニングにしてから刃こぼれした包丁を持って前進していく。

「さて、俺の為にサクッと死んでもらうぜ!クソ女!」 

と叫ぶと背後から一気に斬りつけきたので俺はバックステップで勢い良く避けてから刃こぼれ包丁を持って中華包丁に立ち向かうがさすがに刃こぼれした包丁では実力に差がありすぎたのか俺の包丁はこちらに押されていく形になっていた。      

「シネ!シネ!シネ!」        

 全く、初戦からこんなシネシネ女と戦う事になるなんて運が無さ過ぎだろ、俺は。せめて、もうちょっと装備を整えて準備体操をした後に殺りたかったぜ。 

「奇声ばかりあげてたら疲れると思うぜ!」

                

「ダマレ!」    

 刃こぼれ包丁が押されて斬られそうになった俺は右足を使って女の腹を蹴り飛ばすと女は恨み辛みにグチグチと独り言を呟き始める。  

「オトコハコロス!オトコハコロス!ワタシガイキテイクタメニモ……オトココロス!オトココロス!ウォォォ!」   

 何だ?この女は随分と男を毛嫌いしているみたいだが……悪いが俺は殺されたくは無いぜ。

 お前みたいなヤバい妄想をする女は日本の為にもサクッと死んでくれ!って殺人鬼の俺が言う事じゃ無いけど。    

「おらおら!どうしたんだ女!目の前にお前が嫌いな男が居るんだぜ?さっさと殺害しないのかよ!」        

 高らかに怯える事無く挑発する俺に女はブチキレたのか異常な程の奇声を館全体に拡散させた。 

「ハァァ!オマエコロス……カラダガミエナクナルマデ!」

 女は中華包丁を力強く握って急速に振り下ろして、立て続けに猛攻撃を仕掛ける。刃こぼれ包丁の体調を目で確認しながら、俺は一階の方の手すりに滑るようにして降りていってからリビングの方の部屋と入って庭の窓を開けて待機するとすぐに女がこちらに来た。

「サア、カンネンシテココデイサギヨクコロサレロ」    

 ははっ、馬鹿が潔く綺麗に血飛沫を飛び散らせて死ぬのはお前なんだよ。この殺し合いの世界で唯一勝つのは……この俺だ。

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