第13話:しばらくの休暇
分け隔てる暗くて細い道を通っていき、人が横になれば何とか侵入出来そうな通路を通っていく。一体どこまでつづくんだよこの道は……中々出口に辿り着けない事に疑問と痛みを募らせていく俺は次第に光の差す物を発見する。
あれは、もしかしたら出口なのか?だとすれば、ようやく脱出に成功を収めたという訳だ。感慨深いもんだぜ……俺は喜びを噛み締めながら出口の方へと入って、久しぶりの外の景色を味わう。
そこに広がる光景は道なりに木の橋と一つだけポツリと建ってある家と湖らしき物が広がっていた。しかも、天気が珍しく晴れになっていて湖に光が眩く反射していた。
「ここは休息所なのか。かなりゆったりと休憩出来そうだな」
久しぶりにゆっくりと気持ちを落ちつかせる事が出来るな。ここ最近は数々の挑戦者とガチの殺し合いをしていたから、休む暇が存在しなかったんだよな。
俺は肩から落ちてくる血を気にしながらも一つだけポツリと建っている木造物の住宅へと入っていく。どうやら、この住宅は誰でも入れるように設定しているのだろうか。
ドアのノックをひねるだけで簡単に入る事が出来た。この殺し合いの世界では貴重なソファーと釜戸があったので、俺は感嘆を上げながらもソファーへと寝っ転がった。
「はぁ、何にも考えなくて済むから……何か凄く眠たくなるな」
今までの疲労の蓄積が随分と溜まってきたようだな。この場所に敵が来ないという可能性は無いが、一時の休暇を取らせてもらうぜ……眠いし。
俺はボンヤリとする視界とゆっくりと両目を閉じて、眠りに入ってしばらく経つと背後から優しく肩を揺さぶってくるテラーが居たので、若干イライラしながらも目を開くと口を開いた。
「木島修介、おはようございます!現在は午後の六時で御座いますが、これからどうなさるつもりですか?」
「どうするもこうするも今の俺は戦闘不能に近い状態だ。だから、今さ回復すまでこの場所で休暇をしていくつもりだ」
「なるほど。つまりは療養宣言と言う訳ですか?」
「まぁ、そんなもんだ。ところでお前さんは何の為に来たんだよ
?まさか茶化しにきたんじゃ無いよな?」
俺の問いに一瞬焦りを浮かべていたが、すぐに冷静な表情に戻してから落ち着いた口調で話を始める。
「いやはや、三割は当たりですが七割は別の事情で来させて頂きました。実はこの世界では、あと六人の挑戦者が蠢いていています」
六人……と言うことは、あの二人の兄弟は侍に消されたということになるのか。そうなると、あの侍は……かなり恐ろしい実力を持っているんだな。末恐ろしい奴だ。
「あと六人となると、時間が経てば自動的に三人になったりしそうだな。俺の体力が温存されるまで、どれくらいの人が生き残れるか。楽しみだぜ」
「随分と殺し合いに消極的ですね」
この世界は簡単に殺れないからな。どうせなら、勝手に血と血で争いあって少ない人数でバトれる方が効率的だ。ちょっと、策士みたいな視点だが……こういうのも悪くないだろう。
「こんな状態じゃあ、張り切って戦う事は困難を極めるからな。どうせなら待つ方が理想に叶っている」
「あなたの策士的な考え、とても良いと思いますよ。では、状況の説明はこのくらいにしておいて……この場所の説明をしておきましょう」
現在の挑戦者の状況を終えたテラーは、今俺が居る場所の説明を始める。場所の名前は休憩のbreakの最初の頭を取ったbスポットと呼ばれる場所らしい。
この場所では魔物は一切を持って襲ったり、出現したりもしない。つまりは心を休める事が出来る唯一の休憩所という事になる。
勿論、ここで休憩出来るのは一名のみで他の者がこの場所に来た場合は事前に濃霧が立ちはだかるので来られる心配は全く無い。ただしこの場所に滞在出来るのは約二日という微妙に短い期間しか居られない。
それ以上滞在すると景色が濃霧となって、脱出が困難になるらしい。全く、前半の部分は大満足だが……期間が最悪だな。もっと長い事滞在出来ないもんかね。
まぁ、前半の部分があるだけでも助かるな。一応満足しておくか……
「では、以上を持って終わりにします」
「どうも」
さて、これからどうしようかね。とりあえずお腹が減ったから
、食料を調達しておきたいが如何せん身体がボロボロだから無茶は出来ないしなぁ。
身体の方に懸念を持つ俺は適当に家を探索してリビングに入ると、壁の方に立派な形をしたルアーが目に付いたので手に取って、軽く遊んでいると背後からテラーが口を開いて説明を始める。
「そのルアーはご使用後に必ず返して下さいね。持ち帰りは厳禁ですから……では二日後には霧が現れて、脱出が困難になるのでその間に脱出して下さい。それでは、サヨナラ!」
おい、ルアーとか餌はあるが救急箱とかは無いのかって……おーい!
「くそ、もう逃げやがったな。はぁ、こうなったら一人でやるしかないな」
立派なルアーと中に餌らしき物が入った外見の汚いバケツを持った俺は湖まで歩いて、座れる所に座って魚が居そうな所にルアーを投げつける。さぁ……出て来いよ。
「とか言った所で出ないのがお約束なんだよな」
魚釣りは地味な遊びだ。水面に写る魚がこのルアーの所に垂れ下がっている餌に食いつかなければ、永遠に待たなければならないという苦痛を起こす。それまでに食い付いてくれれば、最高に楽しい訳だが
「……魚釣りは意外とつまらないな。だが、釣りを中断は出来ない。全く、早く食い付いてくれよ」
ルアー片手に握るのが精一杯なんだよ。なるべくさっさと釣り上げて、焼いて療養に集中したい。とか思考をゴチャゴチャと混ぜていると、水面のルアーが一瞬だけ引っ掛かった。やった!これで食料ゲットだ!
「おりゃあ!釣れろやぁ!」
段々と食い付いてくれる魚に対して、リールを全力で巻いてこちらの方に引き寄せていくが水面に写る魚は必死に抗っていた。やれやれ、大人しく釣り上げさせてくれよ。
バタバタと騒いで中々釣り上げさせてくれない魚vs釣れろと心の底から懇願する俺の熱き戦いが幕を開ける……みたいな。
とにかく必死に必死にリールを巻くり上げると魚はこちらに来そうだったので俺はリールに両手の力を込めて、空中に引き上げると何とも生きの良い魚を釣り上げる事が出来た。
やったぜ!身長はそれなりにはあるが、大物では無いようだな。まぁ、食料に変わりは無いからこれで終わりにするか。
はぁ……疲れたし腹が減った。早くこの魚を焼いて、寝たい。やっとの思いで釣り上げた魚を木造住宅まで連れ込み、リビングの目立つ場所に暖炉や新聞などが置いてあったので俺はありがたくそして遠慮無く使う。
メラメラと燃える暖炉に燃えないよう手を当てて、外で冷え切った身体を暖めていく。
「暖かいなぁ。今日は全く戦いをしなかったが……こういうのも悪くないな」
そして、その時に魚が完成!熱々に香ばしく焼き上がった魚を満遍なく平らげる。うーん、何か塩が無いから味気という物が一切無いが食べれない事は無いな。
何か微妙な思いをした俺は魚を食べ上げて、もう一度部屋の全体を物色していくと使えそうな緊急箱があったので俺流に傷を受けた身体に液体を塗っていく。塗る瞬間に酷い激痛が走るが、我慢だ我慢。
「あぁ、めちゃくちゃ痛いな。メリケン野郎に腹をやられるし金銀兄弟に腕を切られしで最高に気分が悪いんだが」
ヒリヒリと刺す痛みに堪えながらも、俺は何とか耐え抜いてもう一度包帯をグルグルに巻いていく。
ふぅ、助かった……身体の痛みが収まった俺は適当な寝床で寝っ転がる。それにしても、よくこんな状態で魚釣りとか出来た物だな。俺の身体は人間離れしてんのか?
まぁ、いいや。今日から二日間……このまま容態が安定するまで安静に暮らしていく事になる。それまではしばらくの休暇だ。
「お休み」
誰も居ないやや広々と室内で呟いてから目を閉じた。




