第1話:そして俺は楽しみを見つける
これから行われる残虐行為並びに殺し合いの行為はどんな時も良い子であれ悪い子であれやっては駄目ですよ。これは世界とのお約束です☆では、お待たせしました!殺し合いの世界へ、どうぞお入り下さい!
「殺人罪にて現行犯逮捕する!」
ガチャリと嵌められる手錠……俺、木島修介は周囲の人々に高らかに叫び声を上げてビビらせる。
「木島修介!奇声を上げるな!前に進め!」
「あははははっ!俺は……俺はぁぁぁ!もっと殺さないと気が済まねえんだよぉぉぉ!」
次の瞬間、隣に居た警官が備え付けの警棒を取り出して俺の腹を思いっきり叩いた。俺は強烈な痛みを喰らい、警官を殺すような目つきで見ていた。だが叩いた警官は俺の視線に気にする事無く、パトカーへとぶち込み隣でふんぞり返っていた。
隣に居る警官は運転手に走らせるように指示を出すとパトカーは真っ直ぐと向かう。
場所は恐らく、この近くにある警察署だろうな。あぁ~やってらんね。しかも、コイツ等全然喋り掛けてくれないんだけど……何なの?コミュ障なの?
「木島修介!黙って座っていろ!」
落ち着きが無いと判断された俺は隣にクソ野郎に注意を受ける。野郎……本気でムカつくな。
ここにナイフと言う名の凶器があったら横からグサリと刺してスクラップにしてやるのに。良かったな……ナイフが無くて。
そんな風に俺は隣に座っているクソ野郎を睨めっこしていると渋谷警察署という中々に大きい場所へと連れ去れ、隣のクソ野郎に降ろされながら車を降ると待ちわびていたかのようにどこからか俺の情報を聞きつけた報道陣がフラッシュやら撮影やらお構いなしに俺の許可無しにバンバン撮影してきた。
たくっ、俺は見世物じゃねえんだぞ!無能報道陣が!やるなら俺様に金を支払え!
「おら!邪魔だ!どけどけ!」
隣に座っていたクソ野郎は報道陣を払いのけて、俺を玄関先まで連れ込むと玄関で待機していた複数の警官が報道陣をこれ以上先に進ませないように規制していた。
「やれやれ、大変だな。公務員さんは」
「そうやって軽口叩ける日はもう終わりだ。お前はもう犯人何十人も殺した殺人鬼だからな!もう外には出られないと思っておけよ」
さっきから事あるごとにピーピーとひよこみたいにうるさい野郎だな。心の中で殺意を秘めていた俺は身体中からタバコ臭がするクソ野郎に取締室へと半ば強制的に詰め込まれ、俺に洗いざらい吐けと脅迫とも取れる言葉を浴びせてきたので一応の反抗を示してみる。
「はっ!誰が喋るかよ!てめぇの言葉遣いを変えない限り、俺は黙秘権を執行させて貰うぜ!」
黙秘権……最高の言葉だよな!この為に言葉が存在していると断言しても良いね!
「黙秘権なんて、お前に必要ないな。何故なら遺体のアチコチの血のDNAや指紋からお前だと思われる証拠が出てきたからだ……つまり何が言いたいかと言うと、お前がどんな的外れな発言をした所でこれらの証拠と事件を見ていた目撃者の意見がある限り、お前さんは地獄の判決を受けるんだ。死刑と言う名の罰をな!」
死刑か!良い響きだな。けど、どうせ死ぬんだったら後数十人は殺したかったな……もっと刺された時のあの痛々しく、刺した俺を心の底から睨む表情を見たかったもんだな。
「ちっ!話を聞いていないな。まぁ、良い。俺も内心、目の前に居る殺人鬼と話したくないからな。正直言うと俺の部下を殺してのうのうと立て続けに快楽殺人をしているお前を今すぐにでもぶっ殺してやりたいが此処は法律に守れた日本だから、大人しくしてやる。だがお前が死んだ所で殺された被害者の遺族の恨みは消えると思わない事だな。殺人鬼さんよ」
クソ野郎はその言葉を最後に、この俺に向かって聴取という名の強制尋問を立て続けにお構いなしに続ける。
クソ野郎の目障りな声にイライラする俺は適当に返事をして無理やりに終わらせて仮の留置所に寝泊まりが始まったが……如何せん、臭いな。
手入れとか清掃とかまともにやって無いだろ、これ。ドラマに良くある外の鉄格子の窓も無く狭いコンクリートにポツンと汚いトイレと手入れが行き届いていないベッドに眠るこける俺は監視してくる警官に唾を吐いてやりたい気持ちを抑えて眠りに入り、次の日を待つと俺は監視していた警官から温かみも一切無いお言葉を牢屋越しで聞くこととなる。
「木島容疑者!貴様は本日、昼過ぎに警視庁に車で移動する!それまでは黙って待機しているように!以上!」
警視庁まで移動かよ。トコトン面倒だよな……やるならさっさと殺して欲しいもんだな。
日本は法律がバキバキでプロセスがまどろっこしいんだよ。殺すならサクッとあの世に逝かせて欲しいもんだぜ。とか独り言を言っても何にも話しが進まないし、寂しいから鼻歌でも歌うか。
「~~♪~♪」
「木島!黙れ!それ以上喋れば、お前を黙らせる!」
おいおい、ただの鼻歌だろうが……何でそんなにキレられなきゃならねんだよ。
アイツ等カルシウム足りねえのか?朝に牛乳をお勧めするぜ。
「ハイハイ、わかりましたよ!寝ときますよ!」
鼻歌を奪われた俺に出来る事は寝ることだけだ。ちょっとニート生活っぽいが昼過ぎになれば色々と忙しく動き回る事だろう。その時まで俺はたーーーっぷりと寝させて貰うぜ!
両目を閉じてどこぞかの人間の内臓を手に取って俺の持つ最凶の手つきでグチャグチャにしてやるという夢を長らく楽しく傍観者視点で観察していると警官が俺を呼んだので楽しい夢は一瞬で終わりを告げる。
警官はロボットのような手つきで手錠を部屋に投げつけて俺が手錠を両手に付けるのをしっかりと確認してから、牢屋の鍵を使って固くて重苦しい扉を開ける。
ふぅ~、せっかく扉から一歩前進してきたというのにコイツの顔を見ていたら気持ち悪いわ。早く外に出てぇよ。
「黙って後ろから付いて来い。言っておくが変な事はするなよ……すぐに複数の警官に痛めつけられるだけだからな」
脱出不可能か。逃げたくても逃げれない状況はいささか苦しいな。どうせ死刑の判決は免れないし目の前で歩いているこのクソ警官を殺るのもありだが……止めておくか。
両手の手錠で攻撃するのは手に負担が掛かるからするのは得策じゃ無いんだよな……
俺はしばらく黙って警官の後に付いていって護送車の車に乗り込むと警視庁まで走らせたが日曜日のせいか道が大変に混雑していたので峠の方から近道するという事になり車は別の方向へと走り出して曲がりくねった峠を進んでいくと運転席に座っていた中年の男が表情を曇らせ、ポツリと呟く。
「くそっ、霧か。前が全く見えない」
前方に広がる霧……だがしかし、窓も無い匿われた車に俺は景色を見る事は叶わない。
はぁ、景観ぐらい見させてくれよ。
車から見る車窓を楽しみたい人間だって居るだろうが……
「徐行で運転するんだ。この車には何せ殺人鬼が居るんだ。事故になって逃げられたりしたらとんでもない失態になるからな」
運転手の隣に座り込む男性は冷静に対処するように促し、その命令に忠実に従いながら走行していく……が車は突然大きな揺れと共に俺諸共見張っている警官達は宙を舞うように浮いていた。
まさかまさかの横転かよ!ダイナミックだな!と言いたいがこりゃヤバい……どうやら俺は車の峠落下事故で死ぬようだな。南妙法蓮華経~。
「お前等!どこかに掴まれ!」
どこかに掴まれとかキザな台詞を吐こうがこの高さは悪いが死ぬ確率が高いのは紛れもない真実なんだよな。
車はしばらく宙を舞うがある地点で地面到着したのか急降下した車は押し潰される形でジ・エンドになった。
勿論、最強の俺でもこの事故には強力過ぎる程のダメージを貰い受けた。全く……酷い結末だね。
こんなくそったれな終わりなんて、心の底からごめんだからどこかの青狸の力で過去に戻りたい気分だな、うん。だがな……おかしい。
何で俺の視界の情報から森が出てくるんだ?普通なら車の中で血まみれになって倒れている筈だろ?なのに……
「俺はピンピンしているな。事故が無かったかのように。そして視界に広がるのは全くもって良くわからないフォレスト達!うん、さっぱりわからん」
そういや、俺を収容した車も無いのが気になるが……まぁ、いいや。脱出は出来たし、ここがわからないからとりあえず歩いてみることにするか。
鼻歌をしながら悠々自適に適当に歩く俺。
そして鼻歌が終わりかけた所で俺の目の前にある視界は急速に変わった。
それは古めかしい館と遠くにそびえ立つ小屋が建っていたからだ。
「適当に歩いていたら奇妙な屋敷に着いたが……入ったら、ゾンビがいないいないばぁ~!とか有り得――」
「残念ですが、そういう設定にはなっておりませんね」
まぁ、当たり前だよな。そんな事を言ってる暇があったら目の前の状況に冷静に対処しやがれっていう話……ん?
「いや、お前は何故に後ろから冷静な突っ込みを入れているんだよ!てかっ、お前誰だよ!」
俺の声に驚いたのか背後に居たホワイトを基調とした白ハットを被った白人顔の男性は軽やかに後ろに後退して一回転してから、別に聞いても無いのに勝手な挨拶を始めた。
「私はテラーでございます!このデスワールドの司会者を勤めている者です!以後、運良く出会えましたらお見知りおきを」
「とりあえず胡散臭い野郎だという事は一目で把握した。俺は東京じゃ、指名手配で300万の報酬額を賜った20人殺しの殺人鬼、木島修介だ!銀色のフサフサなお洒落髪が特徴だから以後宜しくな」
とりあえず俺も自己紹介しておくか。日本に飼われているクソ警官と違って話が通用するみたいだし
「えぇ、では早速ですがこの世界の説明とゲームのルールを紹介しましょう」
「なるべく手短に、そしてアホでも分かりやすい説明をしてくれ。長話はイラつくタチなんでな」
俺は目の前に居るテラーにそう言うと、テラーは分かりやすく説明を始めた。
この世界は東京どころか日本とはかけ離れた別世界であるデスワールドという名の場所で制限時間無しの殺し合いをするのがルールとなっており、この世界に散らばる武器を拾って遠慮無しの問答無用の戦闘が出来るらしい。
ありがたい事に……そして見事に挑戦者を殺して戦い抜いた者には最凶という名の称号と共に幸福と自由に満ちた素敵な世界に招待してくれるらしい。
話を聞く限りでは殺し合いが自由に出来るという点では全く持って素晴らしいが、後半の勝ち抜いた者には素敵な世界に招待とかいう部分は明らかに怪しい……が、こんな日本の法律を壊した殺人自由の愉快な世界だ。
約束事は守ってくれるだろうよ。と優越感に浸っていた俺であったが、テラーは空気を読まずに注意点を話し始めた。
「ですが、このデスワールドでは殺し合いが基本となっていますので死んだら終わりという点はご理解下さい。あとはリタイアもしくはサレンダーや離脱などは一切を持って禁止とさせて頂きます。後は基本的に寝るのは外か中で食べ物などは野生の動物殺して火を焚いて食べて貰います。以上で私からの話は以上ですが、何か気になる点はございますか?」
なるほど、衣食住は基本的にサバイバル方式でやるという事か。殺し合いを抜けば自給自足の無人島生活に似ているな。さて、気になる点があるんだし質問するか。
「俺を含めると何人の挑戦者が居るんだ?そこが凄く気になるんだが」
「あなたを含めると10人になりますね」
10人か。良いね……やりがいがある。
「サンキュー、色々わかったから後は自分で何とかするわ」
「では改めまして、ようこそ殺し合いの世界へ!この世界で思う存分にお楽しみ下さい」
白ハットを被ったテラーは速やかに向こうの方へと消え去った。俺はテラーが消えるのを確認してから独白する。
「さて、お待ちかねの殺し合いだ。最初に殺されるのは、果たして誰かな?」
胸の高鳴りと共に俺の足は軽やかに前へと前進して行った。