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運命を導くもの

まだミナの仕事が終わるまで5分前にいくとしても30分ある。もう少しおっさんで遊んだほうが正解だったかもしれない。


「さて、どうしたもんかな」


俺はそもそもまだこの街についてよく知らない。聞けばユニが答えてくれるだろうが折角人間になったのだ、ここからはユニは基本的に雑談要員にしてしまおう。


『わ、私の存在意義の大半が失われるのですが。変わりませんねレン様は』


その懐かしむような言葉の意味は残念ながら今の俺にはわからない。だがまあ俺とユニは友達ってことにしよう、スキルが最初の友達ってさみしい奴だな俺。


『流石はマスター。ボッチを拗らせるとこうなるのですか』


俺は神としてボッチだったのだろうか、そうではないと思いたい。これはユニなりの冗談なのだろう。


『ですが私としてもスキルとしてのプライドがあります。レン様から求めても決して情報はあげませんが私が個人的に必要と思ったことは教えます』


なるほど、便利な警告みたいなもんか。まあ人間として楽しみたいのに嫌なイベントなんて体験したくないからな、暗いイベントも人生のうちではあると思うが。……そんな言い方するってことはもしかしてなんかあるのか。


『……はい、恐らくレン様の今後に大きく影響する出会いとなるでしょう』


その言葉に俺はある一つの可能性を思いつく。もしかして冒険者を勧めたのは……。


『ふふふ何のことかわかりませんね』


俺の疑問を奴は笑って誤魔化した。




というわけで俺は現在奴隷商にいる。奴が言うにここで俺の運命を左右するほどの出会いがあるらしいがそれ俺が奴隷を買うってことか。


「お待たせしました冒険者どの。私はこの奴隷商の店主ティーダと申します」


禿デブのおっさんがここまで醜悪だとは思ってもみなかった。正直生理的に受け付けないので早めに謎の出会いを済ませてしまおう。


「ああ、俺は冒険者のレンだ。よろしく」


こいつとの出会いが運命を左右するなんてことはないと信じたい、俺は予算白金貨2枚で買える女性奴隷を見せてほしいと伝える。さっき貰った額全部だ、奴隷の相場なんて知らないので適当に提示する。


「白金貨2枚!?も、申し訳ありませんでした少々お待ちくださいませ。当店の全ての奴隷をお見せします」


あーこれはやりすぎた奴だ、俺でもわかる。ちなみに女性限定なのはわざわざ男を買いたいと思っていないからだ。奴隷というのは生活を共にする存在だろうに同性と一緒になんて嫌だぞ。


「お待たせしました、現在ここで取り扱っている女性奴隷は全部で25になります」


商人の声とともに女性奴隷たちがドアから入ってきた。整った顔の女性からそこまででもないがプロポーションがいい人やステータスが高い人まで様々だ。


「……なるほど」


その少女は隅で縮こまっていた。薄い緑で軽くウェーブがかった髪を伸ばしている。綺麗な翡翠色をした釣り目は既に諦めで暗くなっているがそれでもなお美しいと感じさせる。エルフ族特有の尖った長い耳と透き通るような白い肌に完成され過ぎた顔。

だがそれだけじゃない、彼女のスキルに面白いものがあるからだ。異質といってもいいだろう。



名前 アイシャ・ルウ・アーカディア

種族 エルフ

性別 女

年齢 17

レベル 4

<センス>

生命 D

魔力 S

知力 L

筋力 E

精神 C

器用 L

敏捷 S

幸運 F

<スキル>

【奇跡の巫女】

パーティーの獲得経験値が10倍になる。ステータス偽装。非表示。

【家事の天賦】

家事に対して才能がある。ユニークスキル。

【弓の天賦】

弓に対して才能がある。ユニークスキル。

【精霊神の加護】

不幸になることを防ぐ。ギフトスキル。

<魔法適正>

水,土,風,光,精霊



獲得経験値10倍、文字通り規格外のスキルだが最後に非表示と付いている。つまりこのスキルは本人すらも存在を知らないのだ。だがこれだけ高いステータスを持っているということは白金貨でもギリギリになる可能性が高い、値切れるポイントはないだろうか。


「この娘にしたい」

「ふむ、彼女ですか。今日とら……来たばかりでセンスもスキルもいまいちですが鑑定によると生娘らしく、見た目がいいので貴族にでも売りつけようと思っていたのですよ。いくら出せますかな」

「さっきの予算全額でいい」


どういうことかステータスは偽装されているらしい、非表示と書かれているスキルの能力が使えているとはどういうことだろうか。とりあえず俺は今の出せる金貨上限を宣言する、ここで釣り上げて来ようとしたら苛立っているアピールでもしよう。


「……白金貨2枚全額ですか!喜んでお売りしますよ」


ふう、どうやら高く出し過ぎたようで商人はポーカーフェイスも忘れてニコニコと手続きを始めた。心の中でぼろ儲けだと思い込んでいるのだろうが俺からすると安く済んでよかったというものだ。


「ああ、全額だ。ただこの後ちょっと用があるからさっさと売ってくれ」


白金貨を渡しながら答えた俺の言葉にアイシャが震える。まあこんなぞんざいな扱われ方嫌だろうな、流石の俺も少し申し訳のない気持ちになる。そのままアイシャの隷属の首輪にさっさと俺を認証させて取引を終えた。


「まあ自己紹介しながら行くか。俺はレン、今日から冒険者始めた根無し草だ」


本当は彼女の名前など知っているがわざわざ言うことでもないだろう。奴隷は俺を裏切ることができないらしいから秘密を話してステータス変更の実験をしてもいいかもしれない。


「私はアイシャといいます。これからよろしくお願いしますご主人様」


目が完全に死んでいる上に外見に似合わず暗い、外見だけ見ると活発そうなのだがやはり奴隷という立場が嫌なのだろう。流石にいつまでもその顔でいられると色々誤解を受けそうなので何とかしたいところだ……まずい。このままだと女の子をデートに誘っておきながら女奴隷を待ち時間に買った色狂いに見えなくもない。なんでユニはあのタイミングで俺に教えたのだろうか。


『ふふ、どうしてでしょうね』


また笑って誤魔化された。考えてもしょうがないのでユニの企みは置いておいてアイシャを励まそう。


「まあ売られた時点でこうなるのはわかってたんだし諦めてくれ」

「私は……いえ、なんでもありません」


ああ、これは訳アリなパターンだな。なんでわざわざユニが俺が動くように誘導したかもわかった気がする。


「それでもお前は奴隷なんだから諦めろって。命令もするし普通に手も出すが基本は自由で生活水準自体は俺と同じにするからそれで妥協してくれ」


旗から見るとなんて慰めるのが下手なやるだろうか。生娘だという話のこの子に対してこの発言はなかったな。嫌われたかなーとアイシャの方を見てみるとなんだか珍獣を見るような表情を浮かべていた。


「……ご主人様。まさかとは思いますが慰めておられるのですか?」

「おお!今のあほみたいな言い方で通じるとは完全に予想外だ」


思わず感動を覚える。こんなにいい子だからもしかしたら騙されて奴隷になったのかもしれない、あとさっきから気になっていたことも指摘しておこう。


「あー話し方は普通でいいぞ、無理だとは思うが可能な限り気持ちを明るくしてくれ。この後の待ち合わせのために」

「……本当によろしいのですか」

「ああ、真名に誓おう」


この真名に誓うという宣言は例え身分が違おうと絶対の発言となるらしい。さっきからぎこちない敬語が気になって仕方がない。


「なら改めて。これからよろしくね、ご主人様」


先ほどのよろしくとは異なり明るい口調で告げられた言葉とともに彼女が浮かべた笑顔は思わず一瞬見惚れて立ち止まってしまうほどに美しかった。


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