幸運チートは異世界にて最強
この世界のスライムというのはモンスターに分類され、非常に弱いが劣悪な環境でも繁殖するので定期的に依頼が出るらしい。実際ステータスを見てもしょぼいのでさっきから素手で処理している。最初は武器がないから魔法メインのつもりだったが思ったより余裕があったので余裕がなくなるまで使わないことにしていた。
『ちょっと面白い情報があります』
お、ユニからの情報か。今までの情報から察するに俺に有益なことなのだろう、期待してるぞ。一度俺は完全に戦闘をやめてユニの話に集中する。
『実はこのスライムという魔物は大変可能性を秘めたモンスターなのです。【創造神眼】を本気で使えば進化先などもわかりますが今はしなくてもいいでしょう。最も特異な進化を遂げたスライムは龍にすら匹敵するのです』
ふーん、俺はユニの話が終わったと理解して待機させておいた炎の魔法を発動させて立ち止まった俺を囲んでいたスライムを粗方薙ぎ払った。まだレベルが低いこともあって1匹うち漏らしたが囲まれている状態からは脱したので満足する。
『なっ……もういいです、創造神様なんて知りません』
まさか拗ねてしまうとは完全に予想外だった。ちょっとからかったつもりだったんだが本当に人間以上に人間らしいな。見た目すらわからんのに可愛いと思ってしまったぞ。既に50匹は討伐したことだしもうこの辺で終わりにしてもいい頃だ。俺自身は興味ないがユニがそこまで押すのだし1匹くらい確保しておこう。本来はテイム関連のスキルが必要なのだが【神能全祖】はそれも内包しているので出来てしまうわけだ。
『あ、もしかしてレン様ツンデレって奴ですか?男だと需要ないですよ』
こいつは本当に俺を主人として扱う気があるのだろうか。確かに今のは少しツンデレっぽいなと自分でも思ってしまったから言われてもしょうがないがせめてもう少し扱いをよくして欲しいところだ。
『そんなことは置いておきましょう。ところで人生を楽しむと言ってましたが具体的な案はあるんですか?』
そうだな、とりあえず冒険者として大成することかな。モンスター倒すの思ってた以上に楽しかったから興奮しているし向いているかもしれない。
『堅実な目標ですね、元々レン様はそこまで自重する気がないんでしょうからいいと思いますよ。ついでにハーレムとかどうですか、男の夢だからいいとは思います。レン様は元神だけあって顔も整ってますし能力も異常に高いですから性格以外は文句の付けどころがないです。女の子もきっところりと惚れてくれます』
俺の性格に対しての直接的なディスりありがとよ。けどハーレムか……、俺も男なわけで憧れがないわけではないしちょっと興味がわいた。流石にそんなにコロッと落ちる女の子なんているとは思わないが意識してみるのも悪くない、ああこういうとこが性格悪いのな。俺は自分に対する評価を理解して少しテンションが下がってしまった。
『ふふ、応援しています』
そこでユニとの会話は終わった、相変わらずよくわからんが1日も付き合いがないのだから当然と言えば当然だろう。少しずつユニのことも理解していきたいもんだ。
とりあえず周りに落ちている大量のドロップアイテムをどうしようか。幸運だけはレベルが上がっても才能に関係ないので能力が上がらない。つまり最初から最高値だからかおかしなアイテムまで散らばっている。そこで時空魔法の存在を思い出したのでそれを使ってアイテムを全部収納した。これは市販にアイテムボックスというアイテムがあるがそれの容量制限がないバージョンだ。
無事アイテム回収も終わったので冒険者ギルドに戻ると受付にいたミナがニコニコしながら声をかけてくれた。
「あ、おかえりなさい。初めてのクエストはいかがでしたか」
「とりあえず20匹きっちり倒してきた。スライムって素手でもどうにかなるもんなんだな」
「スライムを素手……。確かに討伐できていますね!お疲れさまでした」
一瞬ミナが固まったがもしかするとまたやらかしてしまったのだろうか、すぐ動き出したからそんなことはないと思いたい。これは一般的な冒険者に関する常識調査をしたほうがよさそうだ。俺はミナから報酬を受け取りながら時間の空きがあるかを尋ねてみる。
「ミナ、この後時間あるか?」
別にユニに聞いてもいいんだがあいつの視点では一般人目線とはとても言えないし適当なことを言うかもしれない。ここは話しやすく冒険者について理解しているであろうミナに一般的な常識について聞いておこう。
「……あっあります!あと1時間したら私は今日上がりなのでそれ以降ならいくらでも」
やたら顔を赤く……なるほど。これは確かに食事の誘いにも聞こえる。そしてこの返しは満更でもないということだろう。今日あったばかりの相手にちょろすぎるだろうと言いたいが俺もいいなと思っているので人のことを言えない。将来的にはハニートラップに注意したほうがいいレベルだ。
確かにこの世界の常識を身に着けるのも大事だが今回はデートを優先しよう。まだ1日経ってないがイベント発生だ。この1時間の間に可能な限り準備をしてしまおう。俺はミナにまたなと伝えてギルドを後にした。
というわけでまずは初仕事で手に入れた銀貨5枚のうち1枚で安いアイテムボックスを購入した。これは初心者用なので容量は多くないのだがどうせこれの中にはお金くらいしか入れないので問題ない。
「すまない、ここって買い取りもやってるのか」
「やってるぞ、兄ちゃんなんかいいもんでもドロップしたのか」
俺がアイテムを目の前に置くとおっさんは顎が外れそうなほど口を開いた間抜け面をしていた。実に愉快だ。
名称 エリクサー
等級 S
売値 1000000
買値 1300000
<詳細>
伝説の秘薬と呼ばれる。死んですぐならば死者すらも蘇生させる力を持ち、どんな傷や病でも一瞬で完治する。ただし副作用で使用後1日はレベルが1扱いとなる。
この売値と買値は銅貨の枚数でカウントしてある。要はこれ1つで1白金貨だ。俺はどうやら目立つのが好きらしい。俺なら絶対俺みたいな神の下には付きたくないものだ。なんて1人で頭の中で考えていたのだがおっさんが真剣な顔をして言葉を出したので打ち切る。
「ほ、本当にこれ売ってくれるのか」
ん、どうやらこれは自分で使う気なのか、誰か家族が難病にかかっているのかもしれない。少し元神としてサービスしてやろう。
「……金貨50枚だ」
おっさんの顔が疑惑へと変わる。そりゃ相場の半額で売ると言われると疑いたくなる気持ちもわかるが今回は完全に良心だ。今回だけだぞこんなにサービスするの。ただで恵んでやれ?そんなのは神にでも頼んでくれ。
「3本持ってないか、どうしても必要なんだ」
3本半額か、流石に勿体ないな。よし1本ただでくれてやるから残り2本を通常料金で売ろう。
「7本あるから2本売ってやるよ、そしたら1本おまけでやるよ」
『ただでゲットしたものでこんなに偉そうな態度を取れるのはレン様だけだと思います』
いいんだよ、こっちは相場より安く売ってるんだからむしろ感謝されてしかるべきだ。
「【鑑定】の価格的には間違いないがこの男は胡散臭い……。どうしたものか」
おいおっさん聞こえてるぞ。せめて頭の中で言えよ。俺がおっさんの態度に心で文句を言っていると信じることに決めたのか店の奥に行き白金貨2枚を持ってきた。
「うちのほぼ全財産だ、もっていけ」
なるほど、もしここで詐欺られると後がなかったわけか。それでも俺みたいないかにも平民な恰好をしている奴を信じる気になるとは余程大事なことなのかもしれない。
「毎度あり」
俺はおっさんに頑張れよの意味を込めて微笑みかけたがそれが詐欺られたの意味かと思ったのか顔に絶望的な表情を浮かべた。弁解してもいいが面倒なのでそのまま放置しようと決めて俺は店から出て行った。