ついにお別れ
あれから黒いものが現れることはなくなった。
レイの予知夢にも出ていないことから、もう出現することはないだろうと判断した。だが、また新たな敵が現れるかもしれないので油断は禁物。
そんなこんなで数日が過ぎたある日、クロ男が現れた場所へと研究者が調査を
しに行ったところ、黒き力には世界を行ききすることのできる能力が判明した。
分析をするうえで、なんとか似たようなのを開発することに成功。
だだし実験するにはどうしても人が必要になってくるため、どうすればいいか未だに結論が出せなかったが、とりあえずひなを立会いの元に研究は進められたのだ。
「ひなが元の世界に戻ったらもう会えなくなるね?」
「そうですね。なんかすごく寂しいです」
「だが、いつまでもここにいるわけにもいかないだろ。やはり元の世界での暮らしの方に戻った方がお前にとっても・・「ヒカル、冷たいこと言うなよ。僕は、ひなとこのままでいたいなぁ」
レイは初めの頃よりもひなに好意を抱くようになった。
それはヒカルにしてはバレバレなのだが、彼女本人はふつう通りに接している。嫌がるそぶりもない。
「レイ、ひなを困らせることをいうな」
「大丈夫ですよ。・・慣れてますから」
慣れてるというのはどういう意味だろうか?とヒカルは疑問に思ったが、あえてそれは聞かなかったことにした。
それから一か月ぐらいたったある日、ひなの住んでいる世界とよく似たところへと黒き力で開かれた。
「まちがいありません、ここです!」
「ひな。焦らないで。もっとよく観察してね」
「はい」
女王に言われて冷静になってよく周りを見る。
「ここの公園知ってます!」
「間違いないわね」
「はい」
ここでとどめるように調整をお願い、と研究者に命令する女王。
「偶然現れたから、まだ調整をしないといけないの。もしなにかあっても助けられないから。しばらく待っててちょうだい」
「はい」
それから数時間後に調整が完了し、いよいよひなが戻るときがきた。
「身体に気を付けてね」
「お世話になりました」
「ひな。僕のこと忘れないでね」
「もちろんです。皆さんのこと忘れません」
そういうとレイは泣き出してしまった。隣のヒカルはいつもどおりだが
「ひな。またこけたりするなよ」
最後の言葉がそれですか?と突っ込みたいというほどだったがとどめた。
「はい、大丈夫です!!」
皆にお別れを言ってひなは元の世界へと足を踏み込んだ。
数日後
ひなは夢でも見ていたかのように元の世界での生活を過ごしていた。
でもあれは夢ではない。本当に起きた出来事だ、と自分の頭の中で整理していた。
元の世界に戻った後、ひなは家に戻って日にちを確認したところ
まったく時間が経っていなかった。それに関してはほっとしていた。数年後だったら大騒ぎになっていただろう。
「二人とも、元気にしてるかな・・」
そう思っていた時だった。
ピンポーン
「あっ、はーい!!」
玄関へと走っていくひな。チェーンとロックを外して扉を開けると
「えっ、なんで・・・」
「よっ、ひな」
「レイさん!?ヒカルさんまで・・・・なんでっ!?」
そこにいたのはいるはずのない二人の姿だ。
「話は中でしようよ。お邪魔しまーす」
「えぇええ。ちょっと・・・」
なんだかんだで部屋へとあげた。
「どういうことなんですか、どうしてお二人が」
「悪いなひな。驚かせて・・・実は「僕たち、ひなに会いに来たんだよ」
「えっ、私にですか?」
「こら、レイ。真の目的を忘れたか」
「目的もなにもヒカルだってひなに会いたかったでしょ?」
「そんなことはない」
「でも女王に頼んでたよね?ひなのいる世界にしてくれーって」
「・・・・(いつの間にかきいてやがったな・・・・)」
「あの、目的って?」
「あぁ、うん。あのクロ男の力でひなが元の世界に戻れたから、これを気に他の世界がどんなところか僕たちで調査しようってことになったんだよ。それで最初にひなのいる世界を調査しようって話してたんだよね?」
「知り合いがいた方がなにかといいからな」
「なるほど・・・」
「まぁ、一週間しかいられないけどね」
「短いですね?」
「別の世界だからな。下手したら数年ということも避けて一週間ということにした」
「確かに、あそこにいてもう数か月ぐらいたつのに、ここではまったく時間変わってませんでしたから、気を付けないといけませんね」
「そそ。でね、悪いんだけど一週間ここに泊めてくれない?魔法使えるみたいだから家族の人とかには気づかれないと思うよ」
「・・・・あっ、はい。私の家で良ければ」
「ありがとう!」とレイはひなに抱きついた。
するとヒカルはすぐさまレイをひなから引き離した。
「やめろ、レイ」
「えーやいてんのヒカル」
「やいてない」
そんな会話を聞いているとあちらの世界でのことを思い出しにこっと笑うひな。
「「なにがおかしい(の)?」」
「いえ、なんでもありません」
一週間でもまたこうして三人で一緒にいられることがなによりも嬉しいひなでした。
おしまい。




