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5話 前も後ろも障害物(アブスタクル)

 僕たちは今、アメリカに来ている。アーシャには食べ物の買い出しを頼み、僕らはアメリカのマンションで3人ぐらしをしていた。

「リーナ。こっちの荷物をまとめて置いてくれ」

「わかりました」

 僕らは壁を1枚壊し、中に武器を収納できるように細工をしていた。しかし、肝心の武器がない。今持っているものは危険度も殺傷力も低い果物ナイフ、昨日買ったマグネシウムで作った閃光手榴弾、買った花火を大量に集めて作った手榴弾、ワインの瓶に細工した火炎瓶。以上。つまり銃火器系の武器はないと言うわけだ

 最近、アメリカではどうやら銃を廃止したらしい。そのため、銃火器系の武器は購入できない。

「リーナ。今から花火買ってくる」

「わかりました」

 今補充できる武器はナイフなどの近接斬撃機、足止め用の閃光手榴弾、テロ用の爆発系武器などだ。

 


 僕は近くにあるスーパーマーケットに行く。もしも店員が同じ人であれば帰る予定だ。しかし、昨日とは違う店員だった。

 花火セット、300ドル税抜き。

 僕はそれと大量のジュースとお菓子をかごに詰める。ジュース、お菓子はパーティに見せるためにフェイクだ。

「いらっしゃいませ。こちらお預かりします」

 紙袋に詰めてもらい、レシートを受け取る。するとレシートと同時に何か紙を渡された。

『22時にドライブというバーに来てください』

 店員は女性。この子はどうやらSRAの協力者だ。

 


「ああ、えっと。俺の名前はクロノスだ。一応言っておくが、この名前は正直区別でしか無いから、本名だと思わないでくれよ」

 アメリカ軍の第一基地。クロノスは大統領防衛部隊に配属され、教官に任命された。

「よろしくお願いします」

 2人の隊員を率いるクロノス。

「自分はルーフェルト・キャッスル・シラです」

「メリラ・レーシーです」

 その2人を見てクロノスは頭を抱えた。

 何故3人だけで大統領を護衛するのかわからない。それに護衛ならもっと適任がいるはずだ。と思った。

 大統領、シャルラッハート・ワシントン。彼は今日、世界に向けて衛星放送で演説をする。そのためにクロノス、ルースフェルト、メリラは借り出された。

「演説か。そんなのを聞かされる身になって考えてほしいな。所詮演説だろ」

「隊長。そんなこと言わないでくださいよ」

 大統領が演説しているテントの後ろに待機している。クロノスは適当に言葉を呟き、ルースフェルトは真面目に返答する。

「ルースフェルトだったな。お前の専門はなんだ?」

 クロノスは演説を聞きたくなかった為、自分の分かる話に変える。

「専門?つまり?」

「狙撃とか、ナイフ、近接銃撃。などとな」

「自分は特にないです」

「そうか。じゃあすぐに何かしら専門を身に付けろ」

「どうしてですか?」

「いや、聞いておきたくてな」

 ルースフェルトは考えこみ答える。

「そうですね。自分は一応、小銃が得意ですね」

「アサルトライフルか。愛銃はあるか?」

 またルースフェルトは顔を顰める。彼は銃には詳しくない。そのため答えられなかった。クロノスは「まあ良いや」と、話を切り替え、メリラにも問う。

「お前はどうだ?」

「わ、私ですか?私はスナイパーライフルを使います」

「お前たちには愛用の銃がないのか」

「私は支給された武器を使うだけで、特に愛用とかはありません」

 クロノスは銃種に詳しいわけではないが、彼の率いる部隊の連中がどれくらい優れているのか気になったのだ。

「おい。お前ら。仕事だ」

 クロノスはM16アサルトライフルを手に取り、大統領を左手で押す。よろけた大統領を掠め、銃弾が滑空する。

 そしてクロノスは弾丸が飛んできた所に向けてM16を連射する。

「逃げられたか」

 暗殺者が大統領を襲いに来ていた。距離は5キロ先、微弱な殺気と気の迷いがクロノスには手に取るようにわかった。それ以外に、彼は敵は15前後の少女であることも理解していた。

 野生の勘とも言える彼の戦闘本能は常人を超え、独自のプロファイリングと織り混ぜ、離れている敵を詳細を知ることが出来る。

 


 僕は花火を買い、アパートに戻る。

「只今」

 アパートに戻るとゾロターンを手入れしているアーシャが居た。

「どうした?」

 まさか銃を持ってくるとは持っていなかった。

「ねえ、どこで銃を買ってきたの?」

 アーシャは僕の声に耳を傾かなかった。彼女は目に涙を浮かべていて、それどころではない様子。

 僕はテレビをつける。すると大統領、シャルラッハート・ワシントンが衛星放送で演説し、その間に狙撃された。それを若い男がその銃弾を回避させた。

「アーシャか、これをやったの?」

「ごめんなさい」

「追手や証拠は無いな?」

 アーシャは頷く。

「よくやったアーシャ。まずは牽制と明確な敵の姿が見えた」

 僕はこの男の姿を脳に刻みつけた。

「敵は、この青年は恐らくアーシャの性格、格好、年齢をすべて把握しただろう。相当だな。感情だけでここまで理解したか」

 アーシャはゾロターンを壁の向こうに仕舞った。

「当分外に出ません」

「いや、あと3日後に殴りこみだ。下手に防戦に回るとこっちがやられる」

 今、リーナが帰ってきた。

「只今帰りました。大変です。大統領が攻撃されました」

「そんなことは知っている。しかし、何が大変なんだ?」

 僕は花火を開き、火薬を取り出し、まとめ爆弾を作ろうとした。

「攻撃されたことが大変じゃないんです!攻撃を防いだ人が大変なんです!」

「さっきニュースで取り上げられていたよ。男が気づいて回避していたね」

 リーナはファックスの紙を僕に見せてくる。先ほどニュースで見た男が写真に乗っていた。

「誰だ?」

『クロノス。彼は金払いさえ良ければ誰にでも雇われる腕の良い殺し屋。ナイフ、散弾銃、小銃、サブマシンガンなど状況に応じた武器を使い、的確に脳天を打ち抜き対象を殺害する。そのクロノスがアメリカ軍に所属し、大統領量防衛部隊になったと言う噂だ』

「腕の良い殺し屋…。納得だな。アーシャが狙撃をする前に気がついた」

 僕は冷蔵庫を開け、瓶ワインを取り出した。

「アーシャ。次は大統領じゃなく、あのクロノスを殺す。君は殺意を向けず、恐怖に負けずにクロノスの眉間、喉、鳩尾を撃ち抜け。奴は僕以上に殺意には敏感だ」

 僕は瓶の底を向けてアーシャに言う。するとアーシャは悲しそうな顔をする。

 そして冷蔵庫の上に置いたスルメとチーズを取り出し、袋を開けて口に咥える。

「そしてアーシャ。ゾロターンはどこで手に入れたんだ?」

「リーナさんが細かい部品を集めてきて、アタシが組み立てました」

「部品。その手が有ったか」

 購入記録であるレシートをリーナは僕に見せてきた。

 合計42枚あり、いろいろな店で買ってきたのだろう。

「アーシャ。ミネベアを組み立てれるか?」

「今部品はすっからかんです。弾薬は持参した30発だけですので、作れたとしても何もできませんよ?」

「そうか。じゃあ銃火器に希望は無いな」

 

 


 僕はスーツに着替え、店員から渡されたメモのバーに行ってみる。

 静かなムードでかなり綺麗な場所だった。

「お待ちしておりました。矢渕カリヒさん」

 昼間に行ったスーパーの店員で有った少女がスーツを着て大人びた格好をしていた。

「はじめまして。私、三上鈴奈です」

「よろしく。さて、本題だ鈴奈。君は協力者か?それとも?」

「厨房へ」

 案内され、裏に入る。

「此処のバーはアメリカ在住のSRAが経営して居ます」

「なるほど。でもどうして僕がSRAだって気づいた?」

 「ファックスで送られてきますから」

 時代遅れであるファックス。どうやらSRAの連絡手段らしい。

「でもスーパーに買い物に行くとは限らないだろ?」

「いえ。花火が売っているのはあそこのスーパーだけですから。それ以外のところに矢渕さんは行かいないと思っていましたから」

 僕は厨房に在る1番易い酒を手に取り、金を出す。

「飲んでいいか?」

「ええ」

「そうだ。僕のことはカリヒでいいよ。矢渕って、僕の飼い主だった人の名前だから、あまりいい思い出はないんだよ」

「わかりました。ではカリヒさん。今から此処においてある程度の銃とトラックを差し上げます。と言っても、大した量ではありませんから」

 僕はボトルを開けず、元の位置に戻した。

「運転するんだったら、飲まないほうがいいね」

「そ、そうですね。すみません」

 もらった武器はサブマシンガン、スコーピオン、2丁。散弾銃、レミトンM870P、1丁。スナイパーライフル、L96A1、1丁。それぞれの弾薬。

「じゃあ、持って行くぞ」

「はい。カリヒさん…この世界から奴隷制度を廃止してください」

 彼女の言葉は切実な願いが込められていた。

 


 カリヒが去ったバーにクロノス達3人は酒を飲みに来ていた。

「アメリカにはこんなにお洒落な店が有ったのか」

 ルースフェルトのお気に入りの店。しかしクロノスにはこの店に違和感があった

「なあ、ここの経営者は日本人か?」

「そうですね。そう言えばクロノス隊長は、アメリカ軍に入る前に、日本に居たんですよね?」

「ああ。そうだ。昔な」

「どんなところでした?」

 ルースフェルトはクロノスに質問攻めをする。

「ルースフェルトさん。そろそろ注文しては如何ですか?」

「そうだな。ウイスキー3つ」

 暫く彼らは飲んでいた。するとクロノスは殺気に気がつく。

「動くな!」

 クロノス達はバーの店主に猟銃の様なショットガンをつきつけられた。

 しかし、彼は気づいた。この銃には弾が入っていない。これは銃をみて理解したわけじゃない。彼の野生の勘が作用し、その男の目やしゃべり方を見て把握したものだった。ルースフェルトやメリラは怯えている。  

「お前、クロノスだろ!?」

 SRA。これの存在をクロノスは知らない。だからどうして狙われているのかわからない。

「ああ。俺はクロノスだ。お前たちはどうして俺に銃口を向ける?」

 店主である男は恐る恐る答える。

「私は。私達はアメリカの大統領、シャルラッハート・ワシントンの暗殺を試みた。だが、お前に阻まれた」

 クロノスは鼻で笑い、立ち上がる。

「なるほど」

「動くなと言っているだろ!」

 ルースフェルトは心のなかで、まさか通い付けの店の店主がSRAだったのだと、半信半疑だった。

「その銃で俺は殺せない。それはなぜだかわかるな?」

 クロノスの言葉は店主の恐怖心を増させる。

「わ、分かった。交渉だ」

 店主は銃を降ろす。

「そうだな。懸命だ」

 クロノスは恐怖心を煽るようにポケットにわざとらしく手を入れる仕草をする。銃でも隠し持っているのではないかと思わせるかのように。

「取り敢えず、ウイスキーをくれるか?」

 クロノスはそうして再び席に座る。

「わかった」

 銃のグリップをクロノスに向ける店主。クロノスはポケットから手を出し、銃を受け取る。

 店主は3つグラスに氷を入れ、ウイスキーを注ぐ。

「店主。店主は…SRAですか?」

 ルースフェルトは問う。

「そうです」

 クロノスはルースフェルトに耳打ちをして、

「SRAってなんだ?」

 と、問う。それを聞いたルースフェルトとメリラは目を見開き、クロノスを見る。

「なんだよ?」

「私達の標的であり、要注意団体です」

「今日の公演で狙撃をしたのもSRAって言われているくらいなんですよ?」

 メリラとルースフェルトは説明を加えるも、クロノスはピンときていない。

「あっそ」

 クロノスはウイスキーに口を付ける。

 


「拙いな」

 僕はテレビを見て言葉を残す。

 そのテレビはニュースで、さっきのバーが警察に捕まり、武器を押収されたと言う事件が取り上げられていた。下手をすれば僕の姿が見られる可能性もある。

 僕は今すぐ銃を壁の中に仕舞う。

「アーシャ。君の銃だ」

 僕はアーシャにL96を見せる。

「ズレはどれくらいですか?」

「撃ってないからわからないな」

 アーシャはそれを掴み、銃の分解を始めた。

「おいおい。確認はいいが、早めに仕舞ってくれよ」

 どうやら聞いていないようだ。僕は僕でビールに手を付けようとした。その瞬間、リーナが扉を開けて帰ってきた。

「只今帰りました。本当にクロノスの存在は危ないですね。カリヒさん」

「全くだよ。クロノスねえ。戦闘力は多分僕と同じくらい強いだろう」

「結構高く評価しましたね。カリヒさんは確かに自信過剰な性格ではありませんが、ここまで過剰に見せるのは凄いですよね。で、アーシャは何をしているの?」

 リーナはアーシャに目を向けるが、アーシャはもうすでに自分の世界に入り、銃を分解していた。

「どうやら、今話しかけても無駄だろうな」

「そうですね。どうします?」

「リーナはお酒飲んだこと在る?」

「ありませんが…飲ませていただけますか?」

「はいよ」

 僕は2つコップを出し、リーナに渡した。

「初めは少ししか注がないよ?」

「はい。お願いします」



 クロノスはSRAの残党が多く暮らしている州に向かった。

『隊長?今何処に居ます?』

 ルースフェルトがクロノスに電話をかけ、通話している。

「どこでもいいだろ。別に俺は出入り禁止されているわけではないし」

『そういう問題ではありませんよ』

「まあ、いいじゃないか」

 そう言ってクロノスは電話を切り、ポケットに仕舞う。それからスーツケースにあるM16を取り出し、廃工場の中に入る。

「もしもし?」

『クロノスか?』

 彼が連絡をしているのはシャルラッハート・ワシントン。この男は臆病で、敵の存在を把握した瞬間、精鋭や防衛部隊を利用し、すぐさま殲滅を試みる。それが彼のやり方で、クロノスに別料金を提示していた。

「さて、やるか」

 此処の廃工場は昔、コルト・ファイヤームズと言われる銃の会社の1つの工場だった。しかし、アメリカにも銃刀法違反に似た法律が40年前に創られたそうだ。そのため、この工場は潰れ、工場の建物は残り、SRAがアメリカ拠点として利用した。

 クロノスの依頼は最重要極秘任務。

 彼はまず、廃工場の中に入る。そして、薬莢を撒き散らし、銃の悲鳴を響かせる。

 銃声を聞き、3人の男が火炎瓶を持って隠れながら近づく。

「貴様らはSRAか!?」

 クロノスは銃声で反響する中を的確に足音だけで敵の位置、人数を把握した。

 クロノスの言葉に、男たちは答えない。銃を持っているクロノスに対し、3人のうちの1人が、クロノスに向かって火炎瓶を投げた。クロノスは火炎瓶が落ちる寸前に打ち込み、自分に触れないように遠くへ飛ばし、投げてきた男に早撃ちをする。1人の眉間を貫き、脳を抉る。

 クロノスは走りだす。すると男たちは走って逃げていった。追いかけるように彼は銃を打つ。逃げている男の火炎瓶に当たり、体を炎上させた。男はわめき声を上げ、倒れる。この工場はコンクリートができている為、燃え移ることはない。

 最後の敵は全力で逃げに回る。クロノスからしてみれば、逃げる敵は初めてだった。いつもは逃げる前に殺す。それ以前に、クロノスは若い。そのため、逃げると言う選択肢に至る前に、プライドが邪魔をする。今回の敵は所詮、元奴隷だった。

「あーあ。逃げられた」

 本気で追えばクロノスは殺せた。しかし、彼は必要以上の殺しはしない。今回の標的はシャルラッハートに敵意を示した者。

 


 明け方、未明。僕達3人のアパートにインターホンが鳴る。

 僕はスコーピオンを取り、鞄の中に入れ、手を突っ込み、ドアの向こうを覗く。

「誰?」

 チェーンを付けて扉を開くと、男が焦ったように、

「え、SRAです…」

 と、小声で伝えてきた。

 僕は一旦ドアを閉め、チェーンを外し、扉を開けた。

「誰だ?」

「わ、私は…」

「まあいい。入れ」

 僕は中に彼を入れる。勿論、スコーピオンから手を離さずに…

「何が有った?」

「自分は第五部隊のダンタリオンです。自分達が住んでいた廃工場に、クロノスがやって来ました」

 僕はスコーピオンを壁の中に仕舞う。

「クロノス。どんな男だった?」

「えっと…暗くてよく見えませんでした」

「外見じゃなくて性格を聞いているんだけど」

 僕はコーンフレークと牛乳を出し、皿に注ぐ。

「まあ、いいや。食え」

 暫く食に手をありつけていないように見えたので、僕は手軽に食べられるものを上げて、スプーンも渡す。

「あ、ありがとうございます」

 彼はゆっくりフレークを食べる。

 僕はマガジンに弾を込める作業を淡々と行った。彼が来たため、目が冴えてしまったので。

 マガジンを4つ終わらせると、彼は空になった皿を俺に渡してきた。

「ありがとうございました」

 僕はそれを水に浸し、洗剤をつけたスポンジで流す。

 水の音で、アーシャは目を覚ました。

「えっと。おはようございます。カリヒさん…そちらはどちらさまですか?」

 僕は水で濯ぎ、ステンレスの笊に置いた。

「どうやら第五部隊の生き残りらしい」

 生き残りと言う言葉は彼の目の前で言うのは間違いだっただろうか?

「そ、そうですか…」

 僕は取り敢えずスーツに着替えた。ベルトにホルダーをつけ、マガジンを4つ入れる。それから左手に包丁サイズのナイフを仕舞い、別のベルトに小型のホルダーに取り付け、1ダースの折りたたみナイフを抜刀してワイシャツの上に纏う。その上からスーツの上着を羽織る。

「ちょっと、マックに行ってくる」

 2人に嘘をついて、僕は外に出た。



「ご苦労だったクロノス」

「ああ」

 シャルラッハートはクロノスを呼んだ。

「で、廃工場の死体は本当にSRAだったのか?」

「ああ。SRAだった。で、ワシントン。お前、何を隠している?」

 クロノスの感は鋭い。シャルラッハート・ワシントンが何かを企んでいる。それを知っていた。

「何も企んでは居ないさ。それは君も知っての通りだよ」

「知っての通りって言われてもなぁ。俺は政治や学問に対しての知力は皆無だからな」

「はははは。面白いことを言うものだな」

 クロノスは話を逸らす。

「ワシントン。早く金をよこせ。俺は現金にしか興味はない」

「ああ。その前にあの場所を燃やして来てくれ、私は死体を見ないと安心ができなくてな」

 ワシントンは臆病なことを包み隠さずクロノスに説明した。

「全く。料金は倍だぞ」

「ああ。その程度ならば払ってやっても構わない」

「アメリカの大統領はどれくらい金があるんだよ!?」

 クロノスはその部屋を出て、オートバイにまたがる。


 僕はオートバイにまたがると、ダンタリオンが後ろからやってきた。

「すみません。カリヒさん。自分も、あの場所に行かせて下さい!」

「わかった。で、ダンタリオン。君は銃を持っているか?」

「持っていません」

「部屋の壁の中に、これと同じスコーピオンって言うサブマシンガンが在る。それを持って来い。多分、まだクロノスはあそこに居る。だからあの2人を巻き込まずに、クロノスを殺す。クロノスが死ぬときは僕も死ぬ。でも君がいれば、その死亡率が半分になる」

「はい!」

 僕は彼を囮にするつもりだ。あいつの戦闘力は計り知れない。僕は死にたくはない。

 僕はこれから死を運ぶバイクに乗る。

「準備ができました」

 彼は鞄に仕舞って持ってきた。最適だ。

「君は、死ぬ覚悟が在るか?」

「在ります。自分は、死んだ仲間のために自分も死ぬます」

「ああ。いい心意気だ」

 

 

 僕とダンタリオンは廃工場に付いた。するとそこに、クロノスが居た。テレビで見るより若々しく見える。年で言えば僕と同い年だろう。

 クロノスは僕を見た。僕を見て、一瞬で気づいた。

「お前。名前はなんていう?」

 

 僕が快楽殺人者だということを。

 

「矢渕カリヒだ。カリヒと呼んでくれても構わない」

「よろしくなカリヒ。俺はクロノスだ」

 クロノスは頬を引きつらせた。彼は殺人をしかたなく行っている。僕は殺人を楽しんで行っている。

 これだけの違いが在る人間が互いに互いが同類だと気づいていた。

「ダンタリオン。君は仇討ちをするつもりは在るか?」

「はい!」

 ダンタリオンは鞄に手を突っ込む。突っ込んだ瞬間に気づいた。ダンタリオンはスコーピオンを持ってきていない。

「こいつは…ああ。俺が此処を襲撃しに来た時に逃げた唯一の人間だな」

 ダンタリオンは死ぬ気だ。僕はこれを止めるべきか?それとも、僕はこいつを殺すべきか…。放っとくべきか?

「ダンタリオン。済まない」

 僕はダンタリオンの後頭部を撃ちぬく。同時にクロノスもM16でダンタリオンの眉間を撃ちぬく。

「なんで撃った?」

 クロノスは僕に問う。僕はクロノスに答える。

「ダンタリオンは武器を持ってきていなかった」

 クロノスは高笑いをして続ける。

「狂ってる!狂ってるぜ!カリヒ!」

 僕はさっきの殺しでスイッチを入れた。どうせ死ぬんだったら僕が殺してもいいだろう。

 僕は彼に銃口を向けた。

 クロノスは僕に銃口を向けた。

「カリヒ。お前は何を思って大統領暗殺を試みた?」

「クロノス。君はどうして大統領を守る?」

 同時に問う僕ら。

「僕は奴隷制度に恨みがある。だが、殺人は好きだ」

「俺は金を渡されたから大統領を守る」

 同時に答えた。僕達は似た者同士だ。僕たちは同族だ。

 僕は同族嫌悪が酷い。

 クロノスは同族嫌悪が高い。

 僕を殺せるのは僕だけだ。

 クロノスを殺せるのはクロノスだけだ。

 違った。僕を殺せるのは僕とクロノスだけだ。

 違った。クロノスを殺せるのはクロノスと僕だけだ。

「君を殺す」

「お前を殺す」

 

                ……続く

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