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最終12話 殺戮を欲する人格破綻者(サイコパシー)

最終話突入です。

やっと終わったと思って見てください

 奥の部屋にたどり着いたメリラ。その部屋には大統領のシャルラッハートとHUWEが居て、クロノスが横たわっていた。

 助けなくては!

 メリラは体が勝手に動いていた。そのまま手に持っているM16を構え乱射する。咄嗟にHUWEは反応して弾丸を防ぐ。

「クロノス隊長!」

 彼女はスタングレードを投げてクロノスの右肩に手を回してその部屋を後にする。



「メリラ?何で来た?」

 クロノスは傷口を抑えてメリラを見る。

「カリヒさんを助けに来たのですが、運良くクロノス隊長を見つけました」

 クロノスの下瞼が青くなっているのをメリラは見えていた。失血が多いに違いない。

「隊長。すみませんでした…」

「もう俺はお前の隊長なんかじゃない」

 クロノスはメリラにきつく当たる。

「メリラ。お前に聞きたいことがある」

「な、何をですか?」

 メリラは突発的に身を引く。

「SRAにとって、リーナはどんな存在だった?」

「リーナさんですか…?彼女はお母さん見たいな人ですね。私にお母さんは居ませんが…」

「確かに、それは俺も感じたよ。…メリラ!走れ!」

 クロノスは立ち上がり、体を大の字に広げてメリラを庇う。

 クロノスの体は穴だらけになる。メリラはクロノスの指示に従い、駆けてクロノスから離れる。

 AIとも呼べる機械は篭手のマシンガンを連射していたのだ。

 それを確認したメリラは角に曲がる。攻撃をするために追っ手を待った。しかし人型の機会とシャルラッハートはメリラを追う気配がない。

 彼女は暫く2人の様子を見ていた。



「おい。どうしてクロノスを殺した?」

 シャルラッハートは喉を震わせて声と呼べるものを出した。

『カリヒがGod Program と接触した』

 HUWEからは電動カミソリのように機械を震わせたような音が、言葉をつなぎあわせながら放たれていた。

「カリヒよりもクロノスのほうが大統領に向いている」

 シャルラッハートは目を細めながら下を見る。彼はすごく心配性だった。God Program を悪用するのではないか。それ以前に、クロノスの人間性を知っていた為、カリヒという“不明確な存在”にいろいろと押し付けていいのかという不安も押し寄せているのだ。

『それについては私も同意権である』

 HUWEは皮肉に言葉を告げる。

「ではどうして!」

『カリヒの感応現象は意志統率。人を惹きつける。しかし、クロノスの感応現象は思考放棄。集中力を意図的に高めるものだ。人間性はともかく、長い目で見ればカリヒのほうが大統領としての力が高いと思える』

「だが、それはそれだ。集中力は大事だろ?」

 シャルラッハートは気が動転していた。

『大統領の仕事ができていたとしよう。しかし、人が寄って来なかったら大統領の質が下がるだろう』

「だが!」

『諄いぞシャルラッハート』

 HUWEはシャルラッハートの言葉を遮る。

『お前は臆病すぎる。いい加減腹をくくったらどうだ?』

「君はわかっていない。カリヒは恐らく大統領になることを拒否する。それは目に見えているだろ!」

『大統領を拒否することをGod Program が許すわけ無いだろう。God Program は人間の痛いところを突いて来て大統領にならざる得ない状態にまで追い込む。だから基本的に拒否なんて出来はしないさ』

「いいや。機械の君にはわからないだろうが、カリヒは今、何を言われても動じない。恋人と死別しても尚、私を殺しに来たんだ。実行力の強い彼は間違いなくGod Program を破壊し、私を殺しに来る。いくら黒幕が私じゃないと気づいてもな!」

『では賭けをしようか。シャルラッハート』

「君達は一々人間臭いな。何故賭けという言葉を選んだのか理解しかねるよ」

『そこはどうでもいいだろう。もし、シャルラッハートの言うとおり、カリヒがGod Program の誘いを拒否し、喉であるあの部屋の機械を壊し、君を殺しにここまでやってきたとしよう。もしそうなったら、私はカリヒを殺す。未だ君には大統領を続けてもらう事になるがね。で、もし私が予想したとおり、カリヒが大統領になったら、私は君を殺し、カリヒの側近になろう。これが賭けの内容だ?どうだ?怖くて声も出ないだろう』

 シャルラッハートは首をふる。

「私に何1つ得のない賭けだな。私はどの道寿命が残っていない。だからクロノスに大統領になってもらいたかったんだ」

『終わったことを一々嘆いてどうする。その性格を直せ』

「人間の真似事はもういい。早く次の大統領を見つけてくれ」

『そうだな。追い詰められた君にしてはいい判断だと思うよ』

 彼女は目を見開き、来た道を戻る為駆ける。



 同時刻にミカエルとアーシャは転がり落ちているHUWEの残骸をたどり、入り組んだ地下を駆け巡る。ここで二手に別れても意味が無いと気づいたミカエルはアーシャと一緒に真っ暗な通路を歩いていた。実はミカエルは暗いところが苦手なのである。だから二手に別れることを拒んだ。

「ミカエルさん。押さないでください。ていうかひっつくと歩きづらいです」

「ごめんなさい。暗いところが怖くて」

 アーシャはいたずら笑みを浮かべミカエルに言葉を浴びせる。

「意外と可愛いところありますねミカエルさん」

「いきなり何をいいますか!私はこれでも真剣なんですよ!」

 ミカエルは声をこもらせながらも張って発した。

「そ、そんなことより、大統領を見つけ出しましょう!」

 切り替えながらアーシャにしがみつく。

「だから、歩きづらいですって」

 アーシャは無理に笑顔を作ってミカエルに答えた。こうでもしていないと、リーナのことについて思い出してしまいそうだったから。

「アーシャさん。ごめんなさい。私も少し負い目を感じているの。リーナさんにはいつも負担をかけてばっかりだったから」

 ミカエルはリーナのことを口に出す。するとアーシャの目からは大粒の涙が大量に出てきた。

「ご、ごめんなさい!」

 ミカエルは混乱していた。だから何をしていいのかわからずにアーシャの頭を撫でた。

 すると突然。何かがぶつかり合う音と共に空気が流れているのを感じたアーシャはその方向にかけ出した。

 ミカエルは暗闇な為、辛うじてついていく。

「待って下さい!」

 つい大きな声を出してしまったミカエル。慌てて彼女は口を塞ぎ、そのまま疾走した。

 物音がした当たりには大きな扉があった。

 ドアノブと思われる部分は触ってやっと気づくが、ただ金具が半円形に突き出ているだけの簡単なしくみ。

 アーシャはドアノブに手をかけるが、固く閉ざされていて開くことはなかった。

「あ、アーシャ!」

 メリラが息を切らし、走りながらアーシャを呼びかける。暗いため、声で判断したのだろう。

「メリラさん!?」

「はぁ。聞いて!これからいうことを。落ち着いて…はぁ。聞いて!」

「もったいぶらないで教えて下さい」

 ミカエルは強い口調でメリラに返答する。

「カリヒさんが大統領になるように誘導されている」

「どうしてですか?」

 アーシャは扉に指を引っ掛けたまま聞く。

「知らないわよ。どうやら、カリヒと、クロノスたいちょ…と、今の大統領シャルラッハート・ワシントンには感応現象って呼ばれる超能力みたいな物があるらしいの」

「どうしてメリラさんが知っているんですか?」

 ミカエルは敵意とも捉えられるくらいの言葉で問た。

「さっきシャルラッハート・ワシントンと2足歩行の機械が会話してたのを盗み聞きしてきた。クロノスさんは…私を庇って死んだと思う」

「今更かも知れませんが、メリラさん。あなた、アメリカ軍の精鋭部隊のクロノス隊に所属していますよね?どうして私達に味方するんですか?」

 メリラが米軍に所属していることを初めから知っていたような口ぶりで聞くミカエル。彼女はいつ、メリラがボロを出すのかと伺っていた。

 しかし、最後まで味方する姿を見て、気味が悪くなったようで、カマかけという回りくどい手段は使わずに直接問いただしにきたのだ。

「リーナさんのためよ。仲間を殺されて、絶望と恐怖を味わっている時に、あの人は温かい翼で私を包んでくれた。リーナさんが死んだ時、私はカリヒさんを恨みました。最後まであの人はリーナさんの足を引っ張る。でもリーナさんはカリヒさんに頼られているだけで生きがいを覚えるような器の大きい女神のような人で…だから私は、リーナさんの代わりになれないかもしれないけど、あの人になれるように努力したいと思っている。リーナさんの敵は私の敵だから。リーナさんの味方であるあなた達は私の味方よ」

 メリラも昔は奴隷だった。しかし、リーナとは全く立場が違う。

 元々は孤児で、施設の金銭的問題で奴隷になり、軍人に成った。

 でも、彼女は愛情を受けることはなかった。リーナのような、母親に似た情を受けた時、メリラはそれを恋心と勘違いした。

 だから今も、リーナに囚われている。

「すみません。はじめからメリラさんを疑っていました」

「いえ。疑うことは大事です」

 メリラはまるでリーナの口調を真似するかのように答えた。それを不自然に思うミカエル。

「で。ここにカリヒさんがいるのですが、なかなかあかなくて困っているんです」

「鍵閉まっているんですよね?」

「ええ」

「それじゃあ、いくら力で粘っても無理に決まってるじゃない。銃とか使ってこじ開けなさいよ」

 メリラはアーシャに優しく伝えた。アーシャはそれを見て、リーナの面影を感じてしまい、又涙が溢れてしまった。

「え?そんなに強く言ってないよね?私。なんでそんなに涙を流して泣くの?」

 暗闇の中でも、アーシャが泣いている姿を捉えることが出来るくらい、メリラの目は冴えていた。

「どうして見えるんですか?」

 鼻をすすりながらアーシャは答えた。

「いや。待って。まずはアーシャが泣いている原因から探ろうか。私当たっちゃった?」

「いいえ。メリラさんの姿がまるでリーナさんに似ていて…」

 アーシャは手の施しようがないほどに泣き崩れていた。ミカエルは持っているM16の銃口をドアノブと思われる場所に押し当て、引き鉄を弾く。

「ひゃ!」

 アーシャは銃声と銃が作り出す火花に声を立てて驚いた。

「落ち着け。あなたそんなんでカリヒさんによく叱られなかったわよね?」

 メリラはアーシャの頭を撫でながら言う。

「開きました!」

 ミカエルは銃弾で壊した扉を蹴り飛ばしながら言うため、その声は荒々しく聞こえた。

「では!ひゃ!」

 扉の向こう側の空間に足をつけようとした瞬間、ミカエルの足は取られ、転がっていった。

 そう。そこは階段だったのだ。

「ミカエル?」

 メリラはすぐにミカエルの体をつかみとり、落下を防いだ。

「大丈夫?ってここ階段なのか…駄目よ。迂闊に前方を確認しないで暗いところを歩いたら」

 メリラの大人びた言葉に、ミカエルは呆気にとられた。

「突然どうしました?話し方も変わって…」

「ん?」

 彼女に自覚はなかった。自分の喋り方、声の出し方全てが変わっている事に。

「なんだろう?」

 


「ねえ。どうして僕に言うの?」

 敵は機械だ。しかし彼はまるで人間の口ぶりで僕に大統領にならないかと聞いてきた。まあ、まともに答えるつもりはない。

『君には感応現象と呼べる普通の人間とは別の力が備わっている。わかるかい?』

「知っているよ。僕には人を惹きつける能力がある。でもそれは僕だけだと発動しない能力なんだ」

『具体的に言ってくれ』

「能力を具体的に説明なんて無理だよ。元々能力は抽象的なものだからね」

『まあ、能力についてはどうでもいい。君は私に選ばれたのだ』

「いや。でも大統領は僕には荷が重すぎる」

『リーナはどうして死んだと思う?』

 機械はまるで僕の弱みを握るような声で問う。その言葉も笑っているように聞こえる。

「君は機械のくせに学習しないな。口ぶりは良く言えば自信過剰で、悪く言えば自己中心的だ。だから僕は君のことが好きになれないよ。それで、もし君が僕を本当に大統領にする気が在るならもう少しいい口説き方ってものが在るだろ?」

 まるでサジみたいな性格だな。

 僕はその部屋の重要機密が詰まっていそうなパソコンの上に堂々と座る。僕くらいの体重であれば壊れることはないが、明らかに物持ちは悪くなるだろう。僕はスピーカーを笑むように睨む。

『君の人を惹きつける力は面白いね。3人の女の子が此処に足を運んでいるよ』

「君は彼女らを止めるつもりはないの?」

『うまく行けば君の人質になるかもしれないからね』

「だから交渉が下手くそだな。もしシャルラッハートが君の言葉で大統領に堕ちたんだったら、彼は相当病んでいたか、相当な馬鹿だったんだろうね。これ、もしかして、クロノスにもやろうとしてた?」

『何が言いたい?』

「同じ感じでクロノスを口説きにかかったら確実に乗っただろうなって思ってさ。彼も心は子供のままだからね。君みたいな救いの手を差し伸べてくれるものに頼りたいって言う宗教的感覚でね」

 僕は今ある知識を目の前に居る人間のような機械に呟く。

『君は機械のような人間だな。カリヒ』



 サジ、ミレーナ、フランカはガトリングを使って空港の警察を脅し、車を手に入れ、ホワイトハウスまで突っ込んだ。

 空港からホワイトハウスまで約1時間で到着した彼らは急いで車を降りた。

「さって。サジ。情報によると、ホワイトハウスに、アメリカの大統領のシャルなんとかさんが居るんだったよね?」

 ミレーナはぶっきらぼうな態度でガトリングを引きずり、サジを見ながら聞いた。サジは頷き、ああ。と答えた。

「なあ。ここに転がっている機械は、サイボーグってことでいいのか?」

 またもやミレーナは質問を幼稚に投げかける。

「見ればわかるだろ」

 サジは呆れたように、息を吐きながら喉を振動させて言葉を作る。

「普通は散開して捜索するのが妥当だが、装備の関係上、それは無理そうだ。だから固まって行くぞ」

 サジは統率する。

「この場合、明らかに、敵の大将が居なさそうな場所に出向いたほうがいいと俺は思う」

「わかりました。敵がいそうな場所はカリヒさん達がもう陣取っているかも知れませんからね」

 フランカはサジに笑顔で対応する。サジは内面、高揚しながらも、そっけない態度で頷いた。

「わかった。じゃあ、私が先行するわ」

 ミレーナはガトリングを引きずりながら走る。

 サジとフランカは彼女の護衛のように後ろからついていく。

 彼女らは奥の部屋に近づいて、HUWEとシャルラッハートの2人を目撃した。

「ミレーナ。此処は一直線だからガトリングの射程に入ったらそのまま撃ち込むぞ!」

「わかったよ!」

 サジはミレーナに指示をして扉から約50メートルまで近づき、ガトリングの引き鉄を引く。

 火花を散らし、6本の筒が回転し、鉛弾を飛び出した。

 敵のHUWEはシャルラッハートをかばい、銃弾を防いだ。

「化け物だな。あのサイボーグ」

 ミレーナは笑いながら、曲がり角に退避した。サジとフランカも続く。

「誰だ!もしや、カリヒの仲間か?」

 シャルラッハートの声は彼ら3人に圧迫感を与えるほど異常なものだった。

「何だよ。一気に緊張感が増してきたな。ラスボス臭って言うのか?」

 ミレーナは呼吸を整えながらサジに八つ当たりでもするかのように耳元で呟く。

「うるさい。耳が痛い。はぁ。どっちにしろシャルラッハートよりもサイボーグから先に殺さないと、俺たちが死ぬぞ」

「サイボーグって殺すって表現であってますかね?」

 フランカはサジに細かい指摘を求めた。サジ自体、細かいことにはうるさい人間なので、フランカの言葉には否定できずにいた。

「はぁ。サイボーグを倒す。それでいいねシャルラッハートは殺さないで捕獲だ。どうして此処にカリヒが来ていないのか疑問だな」

 曲がり角からHUWEが出てきて左手の銃口を向けた。

『お前たちはGod Program に否定されている人間だ。ここで死んでもらう』

 HUWEの懐にサジがは取り付き、左手の銃口を掴み、合気道の技で叩き落とした。回転するチェーンソーが右肩に掠め、血が溢れ出る。サジは固めを閉じ、痛みを我慢し、サイボーグの上に乗る。

「あのサイボーグの残骸を見る限り、投技で地面に叩きつけられていた。カリヒほど力は無いが、身動きは取れなくすることは出来る」

 達成感を出しながらも、痛みを我慢し、精一杯の力でHUWEを抑えこむサジ。彼は自慢をせずにはいられなかった。

「ミレーナ。右手の回転ノコギリから壊してくれ。これが在ると俺は動きづらい」

 ミレーナは了承の声と共にゼロ距離でガトリングを連射するが、回転銃の怒声でミレーナの声はかき消された。

「砕いた!」

 腕付近の装甲を破壊し、弾が回路を傷つけ、チェーンソーの動きを止めた。

 サジは一息吐き、力を少し緩めながら、

「今度は左の機銃だ」

 と、言う。

 ミレーナは声を上げてガトリングを持ち上げ、銃口を左に向け引き鉄に指をかけるが、サジはHUWEに吹き飛ばされる。続いてHUWEはミレーナに銃口を向ける。すかさずフランカはミレーナを庇うようにHUWEにショルダータックルを放ち、バランスを崩させ、空に弾道を向けた。

「ありがと、フランカ。さて避けな。最後の弾丸だ!」

 ミレーナは微量の重みでもう弾が残り少ないことはわかっていた。HUWEの重量と反動でフランカは転がり落ちる。ミレーナは銃口をHUWEに押し当て、撃ちだした。これも又装甲を貫通し、回路を破壊し、HUWEの動きを止めた。

「さすがだな。君達は」

 シャルラッハートは堂々と3人に近づいた。サジは倒れた状態で更に言葉の重みを物理的に感じて、呼吸を荒げていた。フランカは壁に寄り掛かるのが精一杯な様子。ミレーナは鈍感なため、ラスボス臭がする。くらいのリアクションで済ませ、ガトリングを捨て、シャルラッハートの服を掴み、地面にねじ伏せ、拘束した。

「おい。言葉如きでビビるなよ。私だって怖いって感じたけど、そこまででも無いだろ。サジ、男なんだからシャキッとしろ」

 背中を強打したサジは痩せ我慢をして壁を伝って立ち上がるが、ふらついて地面にそのまま倒れた。フランカは今回の戦闘で一切負傷していないおかげで、サジをそっと背負った。

「痛い時に我慢したら駄目ですよサジさん。痛みは体の危険信号なんですから」

 この声にサジは確信した。フランカに持っている感情は恋心なのだと…



 Got Program のある部屋に、僕は1人で口論をしていたのだが、メリラ、ミカエル、アーシャの3人がその部屋に入ってきていた。

「カリヒさん!無事ですか?」

 アーシャは僕の腕に張り付いてきていた。肘にはパワードスーツの一部がつけられて居た為、僕は彼女から少し見を引いた。

「カリヒさん。大統領になるつもりですか?シャルラッハートのような暴君を働くことは許しませんよ」

 ミカエルは攻撃的な顔で僕を見つめる。彼女は恐らく、リーナが死んだことを攻め立てるつもりでいたのだろう。

「そうだね。僕は暴君は働けないよ。それに関しては元第三部隊の皆が把握していると思うよ。でも僕は正直大統領には向いていないと思うね」

 僕は精一杯自分を圧し殺す。もし僕が大統領になるなら、又人格が別れてしまう。別に誰に害を与えるわけではない。しかし、害ではなく損得を考えると、損が大きいだろう。

「それに、君がいる限り、奴隷制度はなくならないんだろ?God Program」

『いいや。もしもそれを上回る人類の進化を促し、尚且争いを無くせるのであれば、奴隷制度はなくていい。むしろ、このやり方では反感買うだけだ』

 段々。機械の声は僕にとって心地良い物に聞こえてきた。

「どうして君は機械なのに人間の…人類の事を考えられる?」

『私は人間によって作られたプログラムの一部に過ぎない。しかし、私を作った科学者は私を本当の子供のように、人の型を作って育ててくれた。でも彼女は戦争で命を亡くした。今まで彼女の言葉は世界に多大な影響を与えるほどすごいものだったのにかかわらず、音速程度の鉛を腹部に食らっただけで絶命したのだ。人間が死にづらい体になり、戦争がこの世から無くなれば、彼女は死ぬことはないと私は機械ながら子供の理屈を駄々をこねるように唱えていた』

 心を持った機械は人間を滅ぼすと考えられている。でもGod Program は真逆だった。

 僕の予想を遥に超え、彼は人間の事をしっかり考えていた。趣旨は違うが、SRAと考えは同じなのかもしれない。



 その後、僕はサジ、フランカ、ミレーナと再開した。そしてシャルラッハート・ワシントンも捕獲されていたようで、僕達の完全勝利だった。

「カリヒ。君は大統領になるか、それとも此処で私とGot Program を殺して殺人犯となるか。選べ」

 重くのしかかるシャルラッハートの言動。僕は彼に言い返す。

「勝てば官軍負ければ賊軍だ。あんたを生かしても殺しても、僕は世界の英雄という形になる。それと、God Program は殺さない」

「そうか。では私を殺し、大統領になれ!命令だ。君は世界を統率し、人類の進化に貢献しろ!」

 僕は二つ返事で了解した。それを聞いた6人は僕にブーイングを唱える。

「カリヒさん!暴君は許しませんよ!」

「見損ないました!」

「まさかとは思いますけど、裏切りとかやめてくださいよ?」

「カリヒ。君は正真正銘の馬鹿か?」

「いやいや!カリヒ。それはないでしょ?なんであんたが敵の大将になるの!?」

「情が移ったんですか!?」

 ミカエル、アーシャ、メリラ、サジ、ミレーナ、フランカ。彼らは口をそろえて反対する。

「落ち着いてくれ!SRAのモットーは何だ?」

 僕は手を叩いて音をだし、彼らを宥める。

「政治権の略奪だろ?僕が大統領になれば願ったり叶ったりだ」

 こんな時、リーナがいてくれたら6人をうまく纏めてくれるのだろう。

「もう。皆さん少しは落ち着いてカリヒさんの話を聞いてあげてください」

 リーナの声が僕の耳に届き、僕は後ろを振り返る。

「リ、リーナ?」

 彼女は車椅子に乗ってこちらにやってきた。その車椅子を押していたのはサイボーグだった。

『やあ。カリヒ。彼女は君の恋人だろ?駄目じゃないか、車のトランクに放置するのは』

 僕はあの時、気が動転していたらしい。でもどうして助かったのだろう。僕は彼女の声を聞いた。死んでいるものだと思い込んでいただけなのか?

「カリヒさん?リーナさんは亡くなったと聞きましたが?」

 アーシャは涙でボロボロになりながら僕に聞く。

「僕も聞きたい。どうして心臓が止まったリーナが生きて話しているんだ?」

『一時的にショックで心臓が止まることがある。でも時間が経っていなかった為、すぐに蘇生術をしたよ。でも君は死んだと思った恋人に治療するほどクレイジーなんだね?』

 サイボーグはまるでケタケタと笑うように答えた。

「God Program どうして君が此処に居る?」

 シャルラッハートは地面に身を伏せながら言う。彼はGod Program なのか。

『実は。カリヒに謝りたいことがある。君が聞いていた“声”は私が君の記憶を辿って作り出したものだ。残念ながら彼女の霊体ではない』

 クロノスがしたせめてもの弔いがまさか彼女を蘇生させるなんてな。皮肉な話だ。彼女の死がクロノスを仲間に引き入れ、そのクロノスを犬死させた。でも、彼のおかげでシャルラッハートの戦闘兵のサイボーグが全滅したのだ。犬死…ではないかな?

 リーナがいただけでこの場は一気に静まった。彼女の存在は皆に良い影響を与えてくれる。



 6ヶ月後。僕は大統領となり、世界をまとめている。名前はカリヒではなく、シャルラッハートとして、顔出しはせずに、元大統領のふりをして。

「カリヒさ…お父さん」

 リーナのぎこちない声が僕を呼ぶ。僕は机仕事を手っ取り早く切り上ながら彼女のもとに近づく。幸い、クロノスがリーナを臨死状態にさせた時の弾丸は子宮に触れることはなく、お腹の中の子供は無事だった。まさか、あの1回で妊娠するとは思ってもいなかったよ。

「今行くよ」

 お腹を膨らませたリーナは朝食の支度を終え、リビングに待ちかまえていた。

「リーナ。食べ終わったら僕寝るよ」

「また徹夜したの?」

 彼女のタメ口は新鮮だ。僕はリーナとの2人きりの新婚生活を楽しむため、あの6人には予算を使って追い出した。

 SRAは僕達が大統領になった時に解散した。

 奴隷制度が廃止され、学校を大量に作る計画を建てた。

 その学校を作る仕事に元SRAのメンバーの一部を借りだしたのだ。

「まぁね。こうでもしないと、肉体労働をやっている彼らに示しが付かないからね」

 僕は椅子に座り、彼女の作る朝ごはんを食べる。

『生まれ変わったら、平和に、カリヒさんと出会って、結婚して子供を産んで、死ぬまで隣に寄り添いたいです』

 確かあの時、リーナはそんなことを言っていたかな?食べ終わり、僕はリーナの膨らんだお腹を擦る。

「君は。どんな子供に成長するんだろうな?」

 僕はそういいながら、リーナの頬にキスをし、お腹に耳を当てる。

 恐怖は未知に依って助長させられる。

 好奇心とはわからないものを探求する精神の事を指す。

 どちらもわからないものに対する感情なのにもかかわらず、考え方一つで言い回しが変わる。

 僕は幸せがわからない。SRAにいた頃、それに恐怖していたが、今では幸せを探求する好奇心に駆られる。

 今、僕は幸せなんだ。これが幸せなんだ。


                   …終わり

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