1話。
「おはようございます、初めまして。今日からここでお世話になる、市川柚季です。お世話になる身として、お手伝いできることがありましたら何でも言ってください。不束者ですが、これからよろしくお願いします」
30度ピッタリにお辞儀をし、顔を上げてにこり。
頭の中にしっかりと埋め込まれているマニュアル通りの言葉を発っし、当たり障りない、好感の持てるだろう笑顔を顔に張り付ける。
「こちらこそ初めまして、柚季ちゃん。遠いところから一人で来て大変だったでしょ?さあさあ立ち話もなんだから、お家に入りましょう」
「お邪魔します」
「そんなに畏まらなくてもいいよ。今日から家族なんだから、もっと気楽にしていいよ」
(あぁ、人の良さそうな人たちだな。これなら、あまり無理に好感を得ようとしなくてもいいかも)
今日から“家族”になる、初めて顔を見た人の良さそうなおばさんとおじさんを見てそう思った。
だからって、心を許す気は毛頭無いのだが。
「……はい、ありがとうございます。私、この家に来れて幸せです」
(前の家から体よく追い出されて、この家に回されただけだけど)
そう思ったが、もちろん口には出さない。
代わりにもう一度、作り物の笑みを張り付けてみた。
そんな私の心情を知らず、二人は嬉しそうに顔を綻ばせた。
こうして、私の新しい家での生活が始まったのだった。
つらつらと書いてる内に、主人公が結構毒吐くキャラになってしまってる……。