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開店前

 忙しそうに駆けていく人。所々開店している店達。この時間は騒がしい。

 通勤通学で道を急ぐ人たちが多く、元気な声が聞こえてくる。学校が近くにあるため昼でも、元気な声は聞こえるが桁違いの賑やかさ。

 店などは開いていない所もある。あと二時間くらいは開かないだろう。でも、もしかしたらお店の人たちも朝の準備で追われて声を上げながら頑張っているのかも知れない。

 中央通りと呼ばれているこの道は学生が多く通り、夕方が一番賑わう。その通りは店が多く立ち並ぶ。

 その通りに雑貨屋がある。茶色い建物で窓はショーウインドーのつもりか一般的な窓に飾りつけられている。

 その雑貨屋は開店がこの通りでは遅い方だ。朝はゆっくりとしていて11時に開店する。今の時間はもちろん開いていない。むしろ店主は夢の中であろう。


 扉にはcloseと書かれたプレートがかかっている。

 そのプレートの前に一人の男性が立っていた帽子をかぶっているため顔は見えないが、髪色は赤い。パーカーにフードがついているにも関わらず、何故か帽子をかぶっているのが、よく分からないところではあるけれど、何か意図しての事なのかと初対面の人は考えてしまうだろう。

 その男はcloseとプレートが、かかっているにも関わらず扉を開けて中に入った。扉にカギはかかっていないが、この穏やかな街で空き巣などが起こることはないため、カギをかけずとも良い。

 ちりんちりんと扉につけられた小さな鐘が来客を知らせる。

 内装は綺麗に整頓されていて店主が綺麗好きなのがうかがえる。陳列された種類多量な小物。街の雰囲気に合った雑貨屋。

 男性は小物たちを見ずに奥に入っていく、レジの奥のスタッフオンリーと書かれた所に入っていく。

 そこには生活感がある空間が広がってる。テーブルがあり、その上にはパンがおいてある。

 しかし、そこに人影はなかった。


「あれぇー、だれもいねーな。サイラちゃーーん!!」


 いきなり大声を出して人を呼んでいるようだ。帽子をとってテーブルに置いた。少しくすんだ赤色に髪に青と黄の瞳、瞳が左右違うのが光に当たるとよくわかる。


 どたどたと階段を駆ける音が聞こえてきて、階段の方から少女来た。

 長い青髪をなびかせて、青い瞳を男性に向けている。髪は毛先に向かって色素が薄くなっていて旋毛の周辺は艶やかな夜色、毛先は空色。

 彼女の名前は先ほどの男性の呼んだ人名で間違いないだろう。


「コレクターさん…早いですね……マスターは、多分まだ寝てます……よ?」


 言葉の所々がたどたどしい。自信をもって喋れていない。急いで階段を駆け下りてきたせいか、息が切れている。

 男性が呼んだ人名が彼女の名前であろう。それにしても寝間着だろうかとてもラフな格好である。女性らしい身体つきがよくわかる。

 コレクターと呼ばれた男は仕方ないなーと笑っている。いつも通りの事なのだろう。


「あいつ全く朝起きないからなー仕方ない。今回はオレが早く来てしまったのもあったから、少し寝かせておいてやろう。」

「コーヒーでも入れますか?」

「うん。お願いしてもいいかな。あっインスタントでいいからね。」


 サイラは頷き、部屋の隅に位置する横に長いキッチンスペースに向かった。そこに置いてあるポットに水を入れて火にかける。棚に向かい『いんすたんと』と書かれた缶からコーヒーを探して取り出す。

 コレクターは椅子に腰かけ、テーブルに置いてあるパンに手を付けた。クロワッサンを手に取り、口に運ぶ。


 サイラはコーヒーを入れる準備が済んだようで、椅子にすわる。

 上からゴトッと何かが落ちる音が聞こえて、上を見上げるサイラ。コレクターは笑いながら、起きた起きたと呟く。


 しばらくしてインスタントコーヒーが出来るころにはテーブルには一人と一匹が加わり、三人と一匹がテーブルにつき、朝食を食べている。

 二十代前半ぐらいの容姿の男は旋毛から毛先にかけて茶色から金色のグラデーションの髪がぐしゃぐしゃになっている。それを気にせず、ただパンを口に運ぶ。寝起きだからだろうか、機嫌がよさそうではない。ワイシャツにジャケットという無難な服装をしている。

 サイラが言っていたマスターとはこの人の事であろう。


「でなんでさらっとお前がいるんだよ?」

「朝ごはん食べにさー、いいじゃん。」

「金払えよ。」


 平然とパンを食べながらそんなことを言う。

 いいじゃん、いいじゃんとニコニコと払う気のないコレクター。

 サイラはドックフードを用意して、マスターの足元でうろちょろしている犬にあげる。

 ちっちゃい足で寄ってくる犬にほほ笑むサイラ。犬はマルチーズとシーズの雑種の様で、白い毛がふさふさしている。


「シアンは……今日も元気だね……。」


 シアンという名のこの犬をわしゃわしゃして笑顔で餌をあげるサイラを見るコレクター。

 これがいつもの雑貨屋さんの中の光景。

 いろんな人たちが訪れる雑貨屋の開店時間より早い時の様子。

 朝食をとり終わったマスターは二人に向けて嬉々とした表情でこう言う。


「今日も元気に稼ごうか!」

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