裏も表も
人には二面性があるという。
いわゆる裏と表ということだ。
俺には、表の顔としての会社重役と、裏の顔としてのヤクザの組長という、二つの顔がある。
会社重役としては、年商190億にのぼる大企業を支えている。
一方のヤクザの組長としては、たまに警察から依頼を受けて囚人の護送の手伝いをしたり、街中での抗争の仲介役をしている。
どっちも、社会貢献として必要な職種だ。
たまには、賭博場を摘発するのを邪魔したり、敵対的買収を防ぐためにあらゆる手段を使ったりするが、それは会社と組を守るために必要なことだ。
会社の役員会に出席している人たちのうち、半分はどこかの任侠団体に属している。
だが、それらを束ねているのは、会社の会長であるお方だ。
ヤクザの組長をしておられるそのお方は、全国のヤクザ組織の代表として、長年君臨されておられる。
跡目争いが起きないように、すでに次世代を決めておられるらしいのだが、そのことが外に漏れることはない。
無論、俺も知らない。
そんな会社ではあるが、今まで順調に過ぎてきた。
きっと、これからも、警察たちとはなあなあの関係で、ヤクザ同士の抗争は減少し、会社は繁栄するだろう。
それを、今の俺は願っている。