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喫茶店に寄る
私はちょうど目の前にきたドアノブを掴んだ。
歩き続けるのがなんだか億劫になってしまったのだ。
ドアを開けると、カランカランと鈴が鳴り嫌味でないコーヒーの香りが漂ってきた。
店内に入ると客はまばらで、私はいつもの指定席に座る。
右手に持っているのは大学の講義で出たレポートを書くためのノートパソコン。
いつものコーヒーを注文し、さっそくパソコンを点ける。
何を言っているか解らない講義の内容だったけれど、レポートは書けるものだ。
それらしく体裁を整えてやれば、おのずと文章は続いていく。
しばらくキーボードを打っていると、雨の音がした。
小雨とは言えないけれど、大雨とも言えない六月らしい霧のような雨。
明日は大学も休みで、どこか遊びに行こうかと思っていると友人からメールが来る。
友人も暇していたようで、遊びの誘いだった。
私はOKの返事をし、振り続ける雨を見ながらコーヒーを飲んだ。
(エンド:追憶の雨)