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乗らない
乗りたいと思ったが、手はそれが見えていないのか、一向に歩みを緩めることなく歩き続けていた。
そうこうしているうちにバスは発車してしまった。
懐かしい排気ガスの匂いを吐き出しながら、闇の中へ進んでいく。
右手から伝わる温もりが、私を迷わせない道標のように思えてきた。
どれくらい歩いただろう。
疲労を覚えてきた足が動き続けるのを拒否し始める。
それでも手は構わず進んでいく。女性をエスコートすることに慣れていないなと思った。
歩いていく先に喫茶店が見えた。
どこか古臭い、喫茶店といえばこれだろうと誰もが思い浮かべそうな店構え。
私は少し休んでいこうと声をかけてみたが、聞こえていないのか、聞く気がないのか手は喫茶店が目の前にきても通過しようとする。
(選択肢)
・喫茶店に寄る
・寄らない