表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蜘蛛の糸  作者: 針山
6/9

乗る


 引っ張られ続けていた私は、ここで初めて逆に引っ張り返した。

 あれに乗ろう、誰に告げたのか解らないけれど、口を開こうとした。

 すると、右手の感触がするりと抜け落ちる。

 拒むように、拒んだ。

 私は慌てて手を探すが、闇に溶けてしまった右手はもうどこにも見えない。

 プューと音がして、バスが発車してしまうと焦った私は慌てて乗り込む。

 間一髪で、私が乗り込んだ瞬間バスは発車した。

 前席の開いている一人席に座る。

 バスに乗るなんて何年ぶりだろう。

 昔はよく乗っていた。高校がバス通学だったのだ。

 あの頃、一緒の時間帯に乗る一人の男子学生に私は恋心を抱いていた。

 ちょうどこの隣の席、そこで彼はよく小説を読んでいた。

 横を見るとちょうどその男子学生が乗っていた。

 やはり同じ時間、いつも決まった指定席。

 彼の線が細い横顔を見ると、柄にもなく頬が熱くなった。

 話しかけるべきだろうか、でも突然見も知らぬ人に話しかけられるのはどうだろうか。

 そんなことをいつも悩み、そして実行できぬままバスは目的地についてしまう。

 今日こそは、今度こそ、何度思っただろう。

 今日もバスは車体を揺らしながら走る。

 私は過ぎていく街並みと学生の姿を見ながら、彼の横顔を見続けていた。



(エンド:届かさない想い)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ