表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蜘蛛の糸  作者: 針山
3/9

手を取る


 希望に見えた。


 手以外何も見えないその存在は、普段なら畏怖となる対象のはずなのに、なぜか今この時、私には救いの糸に見える。

「……誰?」

 返事がないと解っていながらも、私は問いかけてしまう。

 返事を聞きたいのではなく、返事を期待する自分を確認しているようだった。

 予想通り返事はなく、私が手を取ると解っているかのように、ただただ手を差し伸べ待ち続けていた。

 躊躇は一瞬、私は恐る恐る手を伸ばし、掴む。

 差し伸べられた手は私が手を掴むのを確認すると、ゆっくり、優しく手を包むように握り返してきた。

 そのまま、優しくはあるけれど、誘導するように私を引っ張る。


 街灯が照らす明かりから外に出る。


 一寸先も見えない不安があったけれど、右手に感じる暖かい感触が私の足を動かしていた。

 一歩一歩、確認しながら歩いていく。

 さくさくと葉を踏みしめる音を響かせながら歩いていると、視界の端に人影が見えた。

 その人影を私は知っている。

 中学の頃、友達だった彼女の姿だ。

 記憶に残る面影と一致したその人影は、私を呼んでいるように見えた。

 あれは入道雲が空を覆った夏の日、彼女は私を置いて駆けていく。

 そんなことするはずないと、信じていた自分がいたのに驚いたのと、そんなことをするなんてと、悲しんだ自分がいたのを思い出した。彼女の姿が段々とおぼろげになっていく。

 焦っている自分がいる。

 今すぐ駆けつけて、追いかけなくてはと思えてくる。


(選択肢)

・追いかける

・追いかけない


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ