お嬢さまとクマチャン
ポッカポッカ、馬車馬は歩く。あと四半刻ほどで屋敷に着く頃。
「お嬢さま、その右手に抱えているかわいらしい物は何と言うのですか?」
「う、うそッ! ミネリダったらクマチャンを知らないの!」
お嬢さまが馬車に乗り込んでから肌身離さず抱えている物について聞いてみたら、なんと驚愕されてしまった。
そこまで有名な物なのだろうか、そのクマチャンという物は……。
「ごめんなさいお嬢さま。わたし、どうも世情に疎くて……。そのクマチャンという物は流行しているのですか?」
「うーんそうねぇ……たしかに流行しているわね。私も友達が持っているの見て、これかわいいって思ったの」
「確かにかわいらしいですね」
「肌触りも最高なのよ~、ほら、触ってみなさいな」
差し出されたクマチャンを手に取る。触った瞬間に、まず布の手触りの良さに驚いた。どのような布を使えばこの様な肌触りになるのだろう。
そしてクマチャンを掴むと、その柔らかさに再度驚かされた。中には何が入っているのだろう。
「ふふ~、お嬢さまっ! お嬢さまっ! 触り心地揉み心地最高ですね!」
「どこのスケベなおじさんよ」
大きさはお嬢さまが抱えるのにちょうど良い大きさ。この柔らかさと弾力のふんわり感は、とても癒やされるではないか!
名残惜しいもののクマチャンを返すと、お嬢さまはすぐさま抱きかかえて頬ずりしはじめた。
「確かに素晴らしいものですね……これほどの物は、さては私の居ない間に商人を呼びましたね!」
「ふふ、そう思うでしょ~。思うでしょ~。ぶっぶ~、違うのよ」
「え、まさか……市民商店街で?」
「そうなのよ。しかもなんと500イェンよ! プリン5個我慢すれば買えちゃうのよっ!」
「し、信じられません! なんてことっ!?」
後日、500イェン片手に市民商店街で話題の人形店を懸命に探す私が居たとか居ないとか。
おわり。